11.やりたいこと
早々に戻って来たルマが採ってきた果物を食べて少し休憩した後、再び町を目指して進み出した。
「ミリシャ様は何かやりたいことはありますか?」
「やりたいこと?」
「はい! これから目標にしていることなど」
不意にルマにそう問われて、思わず考え込んでしまう。
――元々、ミリシャは貴族の家柄で軍属魔導師。
当時は国内の争いをどうにか収めることに精一杯で、自由というには程遠い人生だった。
そもそも、生まれた時から貴族として――ある種、役割の決まっていたようなもので。
「何だろう、聞かれてもパッと思い浮かばないかな……」
そう答えるしかなかった。
「では、これから見つけていきましょう!」
ルマは明るい声で言った。
彼女は全面的に協力してくれるのだろう。
――もしも、当時の王国で争いの中でルマがいてくれたら、簡単に終わらせることができたのだろうか、なんて。
こんなことは考えてはいけない。
ルマは、純粋にミリシャのやりたいことを聞いてくれているのだから。
「ありがとう。一先ず、色々見て回りたいな。何せ五百年も経っているわけだし」
五百年――決して短い期間ではない。
魔法にかかわらず、技術が発展していてもおかしくないのだ。
「そう言えば、ここの森を出て少し外れたところに村がありますけど、そちらには寄って行きますか?」
「村もあるんだ。でも、ここって『ウェルダ霊峰』だよね……?」
「そう呼ばれていますね」
「魔物も強力なはずなのに、人が住めるんだ……」
ミリシャにとって一番の驚きだった。
ルマと一緒にいるからか、ずっと魔物の姿は見ていない。
けれど、ルマ自身がフェンリル――魔物の頂点に位置する存在が暮らしている場所なのだ。
「霊峰も全ての魔物が強いわけではありませんから。基本的に、魔物は人里を嫌いますよ」
「え、そうなの?」
「はい。もちろん、食料を求めて村や町を襲う物もいますし、一概に全ての魔物が――とは言いませんが、わたしのように身体の大きい魔物なんかは身を隠せないですし。何より、豊富な食糧が霊峰の中にあるわけですから」
――つまり、わざわざ外に出なくても、霊峰の中の生活の方が充実している、ということなのだろう。
村も霊峰に隣接しているわけではないらしく、そこで生活する分には問題ないのだとか。
「ルマはその村に行ったことあるの?」
「はい! 何度か足を運んだことがありますよ。知り合いがいるわけではありませんが」
「じゃあ、せっかくだし見て行こうかな」
町にこだわっているわけではない――でも、一先ずは人のいるところに行ってみたいという気持ちが強かった。
「では、そちらに向かいましょう!」
改めて目的地を決めて、森の中を進む――日が暮れる前には、森を抜けて人のいる場所に出られそうだった。




