ルシファールートの為なら、何でもしますっ!
しかし、よくあることだ。
唯一の特技であり、自身に満ち溢れていたものが、一瞬で地に落とされる。上には上がいるのだと。アリサ自身から励ました声をかけようが、それでは彼の心の内を満たすことはできないだろう。代わりに、熱い何かがもっと必要なのだ。
こういったキャラクターが己の未熟さを痛感するシーンでは、これからの自信への成長する糧へと受け止めなければいけない。次に繰り広げられる困難に向けて、立ち直り頑張らねばっ!
(そういう展開を、アリサ、いや現世の私はいくらでも知っている! というか、読んだ漫画でっ!)
「アレックス様、あなたなら絶対勝てる。私が保証してあげるからっ」
「お、おう」
「なんなら私が鍛えてあげるから、知ってるから。特訓や修行する術を」
「あ、そ、そうなのか」
アレックスは、思わずテンパった。
今まで誰にも期待されていなかった。ただでさえ、チェンバレン家の中でも厄介者扱いなのだ。跡継ぎ以外では、誰もアレックスに将来性を求めていない。
だが、今のアリサはどうだ。アレックスに向けられる瞳には、純粋で混じりけのないものだった。ただ真っすぐ、自分を信じてくれるその瞳。ルシファーに勝てるのだと、しかもそんな期待の眼差しで見つめられると――。
(くそっ、よく見るといい女じゃねぇかっ! なんなんだ、この感情はよぉっ!)
アレックスは咄嗟に、ぶっきらぼうに顔を逸らした。恥ずかしさを隠すため、口角を無理やり釣り上げた。そんな様子も知らずに、アリサは自信満々に話を続けた。
「私が鍛えてあげる、アレックス。きっとルシファー様に勝てるから」
「分かった、なら騙されてみたと思って、やってみるか。今の俺、全然らしくねぇしな」
「そうよ、その勢いよ、アレックス」
(確かに、女の前でくよくよしてんのも、カッコ悪いしよ……でも、この胸の高鳴りはなんなんだっ!)
「どうしたの? 胸なんか抑えて」
「ちげぇよ、ただその、オメェのそばかす、何だかいいってなって」
「ん? 私に喧嘩売ってんの?」
それは、アリサというか、私のコンプレックスだった。
急に顔を赤らめて胸を抑え始めたから、どうしたのかと心配したら、すぐに嫌みが跳んできた。
(やはり、ルシファー様がいい。ルシファー様もこれのことをいいと言ってくれたけど、不良でガキっぽいコイツがいうと嫌みでしかない。やはり私はコイツのことを利用してやるだけ、利用しよう)
「みっちり鍛えてあげる」
そう、にっこり微笑むアリサ。
アレックスはあくまでも、ルシファールートの布石なのだから。
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