俺様系がナヨナヨしているのもいいと思います
「ちっ、余計なことしやがって」
夕陽が空に沈む中、アレックスは地面に手を付きながら悪態を付いた。彼の眉間には皴が寄り、汗が頬を伝っている。前髪が汗で張り付いて鬱陶しいのか、髪を掻き揚げてからアリサを睨んだ。
(うん、いいっ! 夕陽に照らされて、彼の汗が頬をつたって光ってるとか、物凄くそそられるっ!)
そんなに見つめられては、アリサの頭がくらくらしてしまう。しかも今は真正面で、しかも髪を掻き揚げオールバックにしているから、彼の整った鼻筋や、息遣い、そして鋭い目つきなんかが……こう胸がキュンキュンして爆発してしまう気持ちを抑えられ――。
「どうした、お前っ! どっか胸でもおかしいのかっ!」
「いえ、大丈夫です。その、申し訳ございませんが、顔をその少し横に向けてはいただけませんでしょうか? そんなに見つめられては、心臓が破裂しそうなので」
「あぁ、そういうことか。俺、目つき悪いもんな。悪かったよ」
そうやって、アレックスはバツが悪そうに顔を逸らした。普段は荒っぽい印象だが、なんだがその表情が子供っぽく今は愛おしい。こういう母性本能をくすぐるような顔をするのは、とてもズルい。
アリサは咄嗟に、ぎこちなく顔を逸らした。顔のニヤケを抑えきれず、口角を無理やり下げた。その姿が拒絶の意味に取られたのか、落ち込んだ様子でアレックスは話を続ける。
「いつもこうなんだな、俺って。やっぱり無理かって、皆が思うもんな」
「……」
「何の才能もない。偶々運がよくチェンバレン家に引き取られたが、学もなければ秀でた才もねぇ。俺にあるのは、これだけだと思ったんだけどな」
アレックスは腕捲りをし、拳を夕陽に向けた。何かを求めているのか、それとも探しているのか、彼の瞳からは哀愁が漂っていた。おそらく、手を伸ばして届かない存在に触れたからだろう。
「学園に転校してきて、あのルシファーに挑んだが、コテンパンにされたよ。今まで勝負してきたが、負けなしだった。それがあっさりと一瞬で」
「……」
「アイツなんて言ったと思う、負けた俺に」
「……」
「信じられないよな。また挑んで来いって、そう言ったんだぜアイツ」
「……」
「そしたら、また瞬殺された。もういい、俺は二度とアイツに勝てることはねぇよ」
(アレックス、恐るべし。オレオレ系がナヨナヨするの、私大好物なんだよななぁ。ヤバいっ、ニヤけそうだし、何か言おうとしたら唾液が落ちるっ! 顔を逸らして黙っていたけど、こっちも擬態するの苦労してるんだからねっ!)
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