転生したと思ったら、私のままでした
前世で日本人だった私は、どうやら通勤途中に交差点で車に跳ねられ、プレイしていた乙女ゲームの使用人『アリサ』に転生した。
まだほとんどやったことない乙女ゲーに、だ。
通学する道中だったから、20分程度しかプレイしていない。ゲームのタイトルすらも覚えていないのだから、こちらの世界観など分かるはずもなかった。
「けど、完全に私は私だなぁ」
他人事のように、呟いた。
現在、使用人部屋の個室。
等身大の鏡に映った映った自分は、まさしく生きていたときと瓜二つというか、そのままだった。
(何となく薄い印象で、顔立ちも普通とか、言われたことあったなぁ)
一重のタレ目で、まつ毛は長くて黒い、髪型はセミロングのストレート。体型はやせ型。身長は160センチくらい。
乙女ゲーの主人公の顔は、前髪が隠れて分からなかったり、後姿しか映っていなかったりする。
だからそのまま『私』の顔ををそのままはめ込んだのだろう。西洋が舞台になっているゲームなのに、ザ日本人って感じになっているのだが、それは仕方がない。新しい自分になりたかったと言えばウソではないのだが……。
けど、これだけは納得していない部分があって……。
「これは引き継いでほしくなかったなぁ」
それはそばかすだ。
あろうことか、鼻の下に、黒いゴマに散りばめられている。
「そりゃないよ、神様」
そばかすは消してほしかった。
小学生からこのそばかすのことでからかわれ、病んでいた時期もあるくらいだ。大抵のことはどうでもいいと割り切れる自分でも、このそばかすだけは許せなかった。
「化粧ってそもそもあるのかなぁ。隠せないかなぁ、このそばかす」
「別にいいじゃないか。私は好きだぞ、それ」
「そうは言ってもですねぇ、昔からのコンプレックスで……って、ルシファー様いたのですかっ!」
「何回もノックしたのだぞ。全く、鏡の前でぶつぶつ独り言を」
まるで天候すらも味方に付けたかと……。
彼の顔に、窓から程よい陽光が差し込み、柔らかく照らしている。鼻筋は整然と通り、顔の輪郭はしっかりとした男らしさを漂わせていた。
(いい感じに陽光が差し込んでますわっ!)
いついかなるときでも、キュン死させてくる。
「心配したぞ。君が苦しそうに胸を抑えていたから、一旦自室にして休んでもらっていたが……というか、また胸が痛むのか、アリサっ!」
「何も心配ありませんっ! 私は元気ですっ!」
「そ、そうか」
私のテンションに押され気味に、ルシファーはとりあえず頷いた。
もう前世の私なんかどうでもよくなってきた。
今からは、使用人のアリサとして生きよう。そうしよう。
「ほら、呆けてないで来客が来る。私と一緒に来てほしい」
「誰ですか?」
「誰って、決まっているだろう」
「アレックス・ベルナルドーネ。私のライバルにして、仇敵だ」
仇敵と読ませて、友と呼ばせるのは、漫画やアニメの世界あるあるだよなぁとは、そのときに私ことアリサは思いましたとさ。
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