表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10年前の乙女ゲーライバルから、溺愛されてしまうのだがっ⁉  作者: レイチェル
第一章「私はルシファールートをプレイしたいのにッ!」
2/14

こんな展開、現実ではありえない

「きゃあぁぁぁぁ……っ!」


 女性の声が頭に響く。

 応接間では、男女が二人向かい合っており、私はティーカップに紅茶を注いでいるところだった。

 

 が、溢れているっ!

 カップから紅茶が溢れ、テーブルがびしょびしょに濡れている。


「アリサ、大丈夫?」


 向かいの女性が、アリサ()に声を掛ける。


 思わず、その容姿をマジマジと見つめてしまった。

 ご令嬢からは、品のある立ち居振る舞いが感じられ、一目見るだけで彼女の上品さが伝わってくきた。

 

 眼とかキラキラしているし、全体的に完璧な容姿すぎる。まるで絵画から、というより少女漫画から出てきたような……そんなご令嬢だった。


「全く、昔からの付き合いだけど、そういうところよ。ほんとドジね。零したところ、すぐに拭きなさい、()()()

「……ご、ごめんなさい」


 アリサ()に向かって、ご令嬢は深いため息を吐いた。

 

 言われた通りに、アリサ()はフキンでテーブルを拭いたが、ふと気になった()()()があった。


「ん? アリサ?」


 咄嗟に、答えてしまったが、私の名前はアリサではない。


 アリサは、先ほどまでプレイしていた乙女ゲーの主人公だ。

 彼女は17歳くらいの女性で、ルシファーの専属の使用人で……。


(あれ、でも今私が着ているのって、給仕服じゃん。学校の制服じゃないっ!)


 その事実に驚いていると、


「アリサ、大丈夫かい? ぼぉっとして」

 

 横から顔を覗かれて、心臓がキュンキュン締め付けられた。


(ありえない……っ!)

 

 不思議そうな顔をしつつも、微笑を浮かべている銀髪の男性。


 彼の銀髪は煌めき、透き通るような肌に、瞳は深い青色。

 その瞳の奥には少し儚げなで表情で、深い神秘が秘められているようだ。佇まいは品のある美しさを持ち、まるで絵画から抜け出したような存在感。


 いや、絵画というか、これって――。


「さっきの乙女ゲーじゃんっ!」


 思わず、大声で叫んでしまった。

 

 先ほどのご令嬢もそうだ。

 この男性は、先ほどプレイしていたゲームの――。


(ルシファー様だっ……!)


 ルシファーはこちらを心配そうに、顔を覗いている。

 唇は微笑みを浮かべているが、蒼瞳にはどこか哀愁を帯びている。その瞳の奥には、深い想いがにじんでいるようで、たとえ言葉がなくても、こちらを心配してくれているのが凄く分かってしまう。

 

 そんな目で見つめられては、動悸が激しくなるのも無理はない。


(はぁ、はぁ……落ち着け私。ちょっと心配してくれる表情するだけで、この威力っ! ルシファー様、恐るべしっ)

 

 心臓の鼓動を収めるために、深く深く深呼吸をする。


 そうしてアリサ()に対して、ルシファーは顔を近づけてきて……。


 そっと顎をくいっと持ち上げられてる。


(えっ、これって……⁉)


 ルシファーの眼差しは深く、熱を帯びていた。そして、距離を少しずつ縮めて、彼の唇がゆっくりと近づいてくる。その瞬間、アリサ()の心臓は激しく脈打ち、緊張と興奮が入り混じる。一瞬一瞬が永遠に思えた。彼の吐息が感じられる距離に、思わず目を閉じた。


 アリサ()とルシファーの距離がゼロになったそのとき――。


 お互いの額同士が、ぴったりとくっついた。


 眼を開け、頬が熱くなってしまった。彼の体温の暖かさが、胸の内まで届き、体中の血液が沸騰していくのを感じた。ルシファーが息を吐く度に、彼の存在を真近くに感じる。


「う~ん、熱はやっぱりあるみたいね。どんどんアリサの体温が上がってくる」

「そうね、アリサ。仕事で疲れてるんじゃない?」

「そうだね、休ませた方がいいか」

「……キュゥン」

「どうしたアリサっ!」

「なんか胸を抑えてるけど、苦しいのっ!」


 胸を抑えて、絨毯のマットに突っ伏しているアリサ()


 あぁ、ここは現実ではない。


 体温計がないから、お互いの額同士で測るとか、もうこれはフィクション世界でしか存在しない。それに、この胸キュンは、現実では起こりえない。


 どうやら私は、乙女ゲーの世界へ転生してしまったみたいです。


面白いと思って頂けた方は、ブックマークと評価をして頂けると幸いです!

何卒よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
①向かいの女性を先に出す ②アリサって呼ばれてることに気づく ③男性がルシファーと気づく この方がルシファー登場が盛り上がるのでは
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ