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10年前の乙女ゲーライバルから、溺愛されてしまうのだがっ⁉  作者: レイチェル
第一章「私はルシファールートをプレイしたいのにッ!」
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私は、乙女ゲーのルシファーに会いたい

「ルシファー様。なんて美して凛々しいの」

「私たちとは住む世界が違うわ」

「……ルシファー様」


 使用人たちが各々に呟いた。


 ただ屋敷の廊下を歩く姿だけでも、使用人をうっとりさせるだけの魅力が、ルシファー・アンデルセンにはあった。彼の隣には、専属の使用人であるアリサが、周りの目線を気にしながら縮こまって歩いていた。


 アリサ自身、こんなに周囲の注目を集めたことはない。もちろん使用人のアリサではなく、好奇の目を向けられるのはルシファーだと分かっている。だけどあまり目立ちたくないアリサにとっては、周囲の目線がどうしても気になった。 


 ルシファーにとって、アリサでは不釣り合いだと分かっていたから。


 そして、屋敷の長い廊下を抜け、応接間に通された先で待つのはのは、スカーレット・ヨハンソン公爵令嬢だ。


 このご令嬢は、ルシファーと婚姻関係を結んでおり、子供の時からの顔なじみだった。両親同士の関係も良好で、誰がどうも見てもお似合いの二人だった。


 ――幼少からの専属使用人アリサが、この二人に割って入る隙間すらない。


 そこには、圧倒的な身分差があった。アリサは庶民の出で、ルシファーは貴族のご子息。どんだけ使用人として長い付き合いがあったとしても、使用人では婚姻を結べるわけでもない。

 そこには越えられない壁があった。それを幼少のときは分からなかったが、自分が成長していくにつれて、徐々にはっきりと現実を思い知らされた。


 だかこそアリサは、専属の使用人としていると、胸がぎゅっと苦しくなるときがある。

 

 あぁ、私ではダメなのだ、と。


 その度に、暗い気持ちになる。


「——。」


 アリサは何かを呟いた。

 

 そのセリフは、画面上では「——。」なだけで、言葉はなかった。


 きっと続きのセリフがあるのだろうと、通学中の()がゲームのボタンを押したところで――。


「あれ、押せないっ!」


 画面がフリーズしている。


(えっ、アリサは何て言ったの⁉ この後、どうやって恋愛に発展するの! ここで終わるなんて、生殺しだっ!)


 何度もボタンを押したところで、うんともすんとも言わない。PSPの全てのボタンをぎゅっと押し込んでみるも、全く反応しなかった。


 それどころか、プツンッ――。


 と画面が真っ暗になった。


「えっ、故障っ⁉」


 押し入れから取り出したPSP。昔のハードだからか、ディスクの音はうるさかっただけに、急に静かになる。

 トントンとPSPを軽く叩く中、通学している学生が、スマホを見ながら横断歩道を渡っていた。


 スマホいいなと思いつつも、自分の手元には、この真っ暗なPSPゲームしかない。


 高校の期末テストが近づいているからと、母親に携帯をとりあげられた。その腹いせに、倉庫からわざわざ母親が昔使っていたと思われる、このPSPを持ってきたのだ。通学中に出来ればなと思い、寝ている間に充電をしておいたのに。

 

 カセットに入っていたモノを、通学中にプレイしていたら――。


「続きが読めないんだがっ!」


 真っ暗な画面のPSPを、天に掲げた。


 ざわり。音響式信号機がとおりゃんせのメロディーを煩わしく思いつつも、横断歩道にいる私を、通学中の生徒たちが色眼鏡で見ては通り過ぎる。私は元来人の目というものをあまり気にしたことはないが、不審な眼で見られている自覚はあった。でもそれでも、真っ暗な画面に思いを馳せた。


(――ルシファー様、ビジュアル的に好きなのにっ)


 そんな言葉は、喉元で留める。


 彼の銀髪は煌めき、まるで天の川のようだ。透き通るような肌に、瞳は深い青色で、どこまでも澄んでいる。見つめられると心が奪われそうになった。その瞳の奥には少し寂しげな表情も見せることがあり、彼の内面には深い神秘が秘められているようだ。17歳にしては大人びていて、佇まいは品のある美しさを持ち、周囲を引き付けた。


 そして、笑顔が一番魅力的だった。整った顔立ちにはどこか儚さを感じるが、笑顔が人懐っこくて優しく、誰にでも親しみやすい。まるで絵画から抜け出したような存在感。彼の魅力は容姿だけではなく、内面にもあるのだろう。彼自身が優しくて、思いやりのある人柄だから。


「あぁ、ルシファー様に会いたいな」


 我慢できずに、そう呟いたそのとき。


 ――ドンッ。

 自分の身体が何か大きい物体に、飛ばされた。

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― 新着の感想 ―
・最初の3行が使用人のセリフと分かりづらい ・アリサは庶民の出で、主のルシファーと不釣り合いだと思っていたのだ。 →縮こまってたのは身分差のせいじゃないのでは ・幼少からの専属使用人アリサ →そこで身…
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