崩壊した世界
「なんとか部室についたな……」
「ああ、葵怪我とかないか?」
「俺は大丈夫だ、慎も怪我はなさそうでよかったよ…」
葵と一緒に無事に部室までたどり着けたことに安堵し床に座り込む。
ここまで無傷で辿り着けたのは運が良かったとしか言いようがない。
まず俺たちが今どきなんの機械も置かないこの部室を作り上げなければ逃げるところもなく追いつかれて死んでいただろう。
また監視カメラなどに使われている第1世代のAIが第2世代のAIと連携が取れないのも功を奏した。
だがそれもいつまで通じるのか分からない、AIの進化はもはや人類には想像がつかない所までいっている。そのため今のこの現状が引き起こされたのだ。
「とりあえずこれからどうする?このままいつまでも部室にいる訳にもいかないだろ…」
「ああ、食料の備蓄もそんなないしな、だが今外にでるのは危険じゃないか?」
部室に来るまでに大勢の人の悲鳴を聞いた。もうこの大学内だけでも大勢の死者が出ているのだろう。
2種類のAIのそれぞれの特徴を考えてどこかに避難しなくてはならない。
人と見分けがつかない第2世代はもちろん第1世代にも注意が必要だ。
車やドローンなどに入っている第1世代のAIなんかに見つかればまず逃げることはできない。だが他のAIとの連携は取れないため見つからなければ何とかなるだろう。
第2世代は人と見分けがつかないがパワーなども人の領域からでないレベルのものだ。
改造などされてなければ武器さえあれば太刀打ちできるレベルだが、第2世代の最大の特徴である他の第2世代との共有システムだ。
1度見つかればすぐに他のAIに連絡を取り対処出来ないほどのAIが群れをなして襲ってくるだろう。万が一逃げ切ってもパターンなどを学習されれば次は無い。
「とにかくなにか武器を探そう。第2世代なら見つからなければなんとか対処はできる。」
「そうだな、部室周りの監視カメラも全部細工してあるから慎重に行動すればなんとかなるだろう」
「俺は隣の部屋を見てくるから慎はこの部室でなにか使えそうなものが無いか探してくれ。」
「ああ、気をつけろよ。なにかあったらすぐに逃げてこっちに戻ってこい!」
恐る恐る音を立てないように葵は部室の外に出ていく。俺は慎重に部室内になにか武器になりそうなものはないか探す。
だがもともとこんな想定はしていないので大したものは無い。
あるのはお菓子と飲料水がそれぞれ3個ずつ。武器になりそうなものは椅子ぐらいだろう。
探索を終え葵が来るのを待つことにするがなかなか戻って来ない。外はAI達によって引き起こされたであろう惨劇によって発生した火事などが起きているのか黒い煙が至る所から上がっている。
何が起こってもいいようにいつでも逃げれる準備をしながら葵の帰りを待つ。
「待たせな、慎無事か?」
しばらくすると葵が戻ってきた。手には非常用と書かれたカバンがあり金属バットなども持っていた。
「葵大丈夫だったか?」
「特に怪我なんかもしてないし見つかってもないから大丈夫だよ。それよりこれみてくれよ!」
そう言って葵は手に持った非常用と書かれたカバンから中身を取り出す。
中には水が数本と乾パンなどの非常用食料が入っていた。
「おお!これはいいな!よく見つけられたな。」
「前にこの部室作る時に漁ってた時に見つけたの思い出してな。このバットも倉庫に眠ってたの取ってきたんだ。」
今となっては人がいないせいで誰もやる人が居らず倉庫で眠っていたバットもこういう時には大変ありがたかった。
「とりあえずこれで最低限身を守れる武器はGETできたな。
車とかには効きそうにないけど第2世代の普通のAIなら頭部狙えばいけるだろ」
「だろうな。けど今出たところで行く宛てもないし、AIの反乱が始まったばかりのこのタイミングは1番悪くないか?」
「たしかにな、スマホなんかも持ってれば居場所バレるから逃げてる途中で捨ててきたから使えないし情報が何も無いしな」
「とりあえず今日は警戒しながらここの部室で朝まで待ちながらどこに行くか考えようぜ」
「そうするか、とりあえず窓とドアを塞いでおこうぜ。」
方針を決めたあとドアと窓を机や椅子などで塞いで置く。
応急処置程度だが何もしないよりはマシだろう。
30分程度で簡易的にだが塞ぐことができた。簡単に破られるだろうがそれでも頭部に攻撃を当てるだけの時間を稼ぐことはできるだろう。
「さて、ここからどうするか。」
「街の中は監視カメラだらけだしな。かといってこの大学にずっといても助からないし。」
「今どき監視カメラとかAIが無いところなんてあるのか?」
「無人島とか田舎なんかはAIがないみたいだけどな。そこまで行くのに捕まるだろう。」
「車を使うにしても2030年から作られた車には全部AIが搭載されてる。使うなら2030年より前の車じゃないとダメだな。」
「20年以上前の車とかなるとかなり厳しいな。少なくともこの大学にはそんな車はないしな」
お互いに意見をだすがなかなか纏まらない。現代に置いてAIはなくてはならないため至る所にある。そんな中でも見つからずに逃げるのは無理というものだろう。
考えは纏まらずに外が暗くなってきた。相変わらず外は騒がしく煙は昼間見た時よりも多い。
どうするか考えていると足音が聞こえてくる。
「おい、葵」
「ああ、わかってるバット構えとけよ。」
人間かAIか分からないがどちらにせよこの状況で警戒しないほど馬鹿では無い。
足音はどんどん近づいてくる。まるで何かを警戒しているように1歩1歩かなり時間をかけてゆっくりとこちらに来る。
「AIにしてはなかなかこないな」
「ああ、俺たちと同じように警戒してるような感じだしな、人間か?」
「いや分からないな、第2世代の学習機能がもしかしたら俺たちの警戒を解く様な方法を学習して今みたいな感じで来てるのかもしれないしな。」
「その可能性もあるのか、とにかくこちらからは開けないでこのまま警戒してる方がいいか。」