「恩返し」
「どうしてアナタは私に会って下さらないのですか?
信じられないかも知れませんが、私はアナタが小さい頃、よく遊びに来てくれた木の精です
アナタはよく私に登って、親に叱られていましたね
―――私にとってはとても微笑ましいものでした
アナタは毎日私の下へ来ては、私で爪を研ごうとする猫達を追い払ってくれましたね
―――私にとってはとても嬉しいものでした
アナタが私の世話をしてくれたおかげで、私は毎日が幸せでした
・・・でも、なぜあなたは急に私の下へ来なくなったのですか?
私が嫌いになったのですか?
だから、このドアを開けて下さらないのですか?
人の姿になってアナタに会いに来た私に、その姿を一目たりとも見せては下さらないのですか?」
―――その時ゆっくりとドアが内側から開けられた。そして、中から出てきた青年は瞳を潤ませてこう言った
「・・・花粉症になったんだ」