表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/14

デート?

僕は今駅前に来ている。


なぜ死にたい願望の僕が駅前に来ているのかというと、ある人を待っているからである。

それは佐藤凪沙、僕と心中を約束した人だ。


でもなぜ死にたい願望の人達が駅前にいるのかそれは少し前の日まで遡る。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


アルバイトの日、


「後藤さん、お疲れ様でした」


僕は後藤さんに挨拶をして帰ろうとしていた。


「ねぇ、そろそろ連絡先教えてよ」


佐藤さんが帰る準備をしているとき、同じアルバイトの人に絡まれていた。

佐藤さんはいつも通り無視している。


この光景も今となっては日常の一部になっている。


「せめて今度の土日どっちかでもいいから遊ばない?」


彼はなかなか諦めない。


「お断りします」


彼女はきっぱりと断る。


僕は相変わらずな佐藤さんを見て微笑んでいた。


しかし、男の人は諦めない。


「映画のチケット2人分もらったからさ、これ上げるよ」

「だから...」


彼が次の言葉を発すると同時に佐藤さんはチケットを受取り、


「これはありがたく貰います」

「ですが、あなたとは行きません」


そう言って佐藤さんは速歩きで帰っていった。



その夜、


『ねぇ、今度の土日どっちか空いてない?』


佐藤さんから連絡が来た。


『特に予定は無いけど』


『そしたら映画一緒にいこ』

『実は映画のチケットをもらったんだけど、一緒に行く人がいなくて困ってたの』


あの現場を見ていた僕は事実とは少し違うような気がした。


『僕が行ってもいいの?』


僕は佐藤さんから許可を貰うことにした。


『いいよ』

『私も一緒に行く人なんか居ないから』


『わかった、そしたお言葉に甘えさせてもらいます』


そうして僕は佐藤さんと映画に行くことになった。


僕はきちんと佐藤さんからの許可がもらえたので胸をはって映画に行くことができる!


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


そして今、僕は佐藤さんを駅前で待っていた。

佐藤さんを誘った人には「悪い」と思いつつ僕は少し楽しみだった。なぜなら友達(心中仲間)と映画に行くことは人生で初めてだったからだ。


「おまたせ」

「待った?」


佐藤さんが来た。


顔を上げた瞬間僕はつばを飲んだ。

なぜなら彼女がとても綺麗だったからだ。僕は見惚れてしまい、すぐには返事ができなかった。


「あ、うん」

「いや、待ってないよ、うん」


僕は上手く返事ができなかった。それほど僕の目には彼女が美しく写っていたから。


周りの人の反応も、

「綺麗」だとか「モデルさん?」など、とても良い反応だった。


「いこっか」


そう言われて僕たちは映画館に歩き出した。


「約束の時間の15分前だったから私の方が早く着いたと思ってた」


歩きながら佐藤さんは言った。


「あー、それは今日が楽しみすぎて早起きしたから早めに着いたんだよ」


小さな子供みたいな理由だったけれど実際にそうだった。


「そ、そうなんだ」

「楽しみだったんだね」


彼女は嬉しそうだった。



「今更だけどなんの映画を見るの?」


僕は気になっていたことを聞く。


「えっと、『残りの時間』て映画」


「へぇー」


「なんか、男の子と女の子の青春?みたいな感じらしい」


彼女が説明?みたいなことをしてくれたがよくわからなかった。



〜上映中〜



映画が終わり僕たちは近くの喫茶店に来ていた。


「まさかあの女の人がねぇ〜」


「それもそうだけどあの男の子もやる時はやるね」

「かっこよかった」


僕と佐藤さんは感想を言い合った。


「あの2人って最後は幸せになれたんだろうか」


僕は不意に思ったことが口にでた。

それは僕たち2人が求める物でもあり同時に諦めたものでもあった。


「なれてたらいいね」

「私達と違って友達もちゃんとした家族も近くにいるみたいだし」


僕たちは少し気まずくなった。


「こんな感動系だとは思わなかったね」

「今の私たちからしたら出来すぎた作品って感じ」


「そうだな、僕等のこの人生も作品の一部なら幸せになれたんだろうか?」


僕たちは今の自分と重ね合わせて考えてた。


『僕等も作品の中の一部なら』、『作り物のように結末やその途中を操作できたら』

佐藤さんも僕も同じ事を思っていたと思う。


「まぁ、私たちなら作品だろうとなんだろうと今とは変わらなかったかもね」


佐藤さんが笑いながらそう言ったが無理していっているように思えた。

だから僕も笑顔で、


「それもそうか」


と返した。


「もう少ししか時間は無いけど、映画みたいにはいかないかもだけど、楽しい思い出ができるといいね」


「うん、お互いにね」


僕等はこの言葉で締めくくて喫茶店をあとにした。



帰り道、


「そう言えば今度の球技大会、峰田はどうするの?」


佐藤さんに聞かれる。

佐藤さんはうちの学校の球技大会ははじめてだった。


「僕は一番下の補欠に名前かいて応援することにするかな」


去年と同じように、僕は球技大会には出ない方向で考えていた。

下手に目立つのも危険だと思うので。


「私もそうするかな」


佐藤さんも出ない方針らしい。


「そっか」


この時僕は去年と同じように球技大会は難なく終わるのだと思っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ