夢の背中
あなたの後姿を追いかける。
あなたを目指して走り続ける。
もうとっくに見えなくなったその後姿を。
あなたの姿が見えなくても、あなたの夢は覚えているから。
今もあなたが走っている道はきっと分かるから。
何度も転んだ。何度も泣いた。
流れる涙はしょっぱかった。
この道は本当に人が通れる道だろうか。
この先に本当にあなたがいるのだろうか。
どれだけ追い続けても、あなたの後姿は見えない。
もしかすると、この道の先にあなたはいないのかもしれない。
それでも私は走り続けた。
その背中に追いつきたい思いだけが、私の背中を押した。
ついに夢が叶った。
でも、あなたに追いついたわけじゃない。
これはあなたの夢。
あなたが叶えたいと語ってくれた夢。
そこに、あなたはいなかった。
あなたのいない場所で、あなたの姿を探す。
でも、あなたのいないその場所に、やっぱりあなたはいなかった。
いっぱい泣いた。いっぱい叫んだ。
流れる涙は冷たかった。
憧れていたその人はいなかった。
もうどこにもいなかった。
あなたがいないなら、もう走る意味はない。
あなただけが目標だった私に、生きる意味はない。
家に帰るために、後ろを振り返る。
そこには、私が今まで走ってきた道が広がっている。
そして、その先に、あなたの顔が見えた気がした。
わたしを笑顔で祝福する、あなたの顔が見えた気がした。
そうか。
私はいつの間にか、あなたを追い越していたんだ。
あなたは言った。
僕の背中を追いかける人生はここで終わりだと。
僕の代わりに僕の夢をかなえてくれてありがとうと。
私は泣いた。声を出して泣いた。
流れる涙はしょっぱかった。
でも、その涙は、温かかった。