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校外学習

作者: 大西洋子

さて、ようやく落ち着いたことだし、この間に校外学習の感想と、各自に課した課題を拝見することにしよう。

まずはアリダ・カケルから。


校外学習で港に来ました。港にはたくさんのコンテナがあって、四角い形の物、円柱の形、丸い形と、いろんな形がありました。

ぼくのお父さんは、そのコンテナを各都市へと運ぶ仕事をしているので、校外学習が決まったその日に、お父さんにコンテナについてたずねました。

四角い形には、ぼくたちがお店で見たり買ったりする物が入って、円柱や丸い形には生活に欠かせない物が入っているそうです。

そのコンテナを運ぶには、それを動かす道具の使い方を勉強し、テストを受けて、よい点がとれたら、ようやくそれを動かしていい許可がおりるそうです。

特に丸い形を運ぶには、むずかしいテストを受けないといけないそうです。

そんなコンテナを運ぶ仕事をしているお父さんは、すごいなって思い、港で働くお父さんに会えたらいいなど思っていたけれど、会えなかったのが残念です。



アリダ・カケル。君がコンテナを運ぶ車ばかり見ていたのは、そういうことだったのだね。そして父親にたずねたことを、うまくまとめあげているね。二重丸をあげよう。

……さて次はベイル・K・アンカニー。



校外学習で港に来ました。私が楽しみで見ている番組に、アイドルが港を案内するというのがあります。港でそのアイドルに会えるかもと、わくわくしていたけど、そんなことはなくて、がっかりでした。

港で働く人達をまとめているカンデラさんの話では、エンターテイメント(私が楽しみにしている番組などを指す言葉だそうです)は、あらかじめ打ち合わせをしてから、その様を撮っているそうです。

港には様々な質問やお願いごとを受け取り、返す仕事があり、その仕事をオペレーターと言って、私はそれを体験しました。

世界にはいくつもの言語があり、自動で言葉を訳することができるけれど、言葉の言い回しだったり、同じ言葉だけど言語によっては、別の意味になってしまう言葉を別の言い方へ変えたりと、オペレーターってただ言葉を返すだけじゃないことがわかりました。

私は先生に注意されている口癖を、少しずつ直していこうと思いました。



ああ、ベイル・K・アンカニー。日頃注意している言葉の使い分けの重要性に理解してくれたね。がんばれの二重丸をあげよう。

……さて次は、デノス・ヴィクセント。



校外学習を受ける前から、ぼくたちは仕事とは何かという勉強をたくさんしました。

むかし、おとぎ話ができるよりもむかしから、人は生きるために食べ物を作り、着る服を作り、住むところを作る方法を作りあげるまでに、たくさんの失敗をしてきたそうです。

そのどれもが、人ひとりであれもこれも作るのはむずかしく、やがて誰が何を作る、と手分けし、そのお礼としてお金としてし払うというシステムが、仕事とよばれるものだとわかりました。

今、現在、ありとあらゆる物は機械で作られています。機械は仕事の手順をおぼえ、それを手順どおりに作る作業に適していています。ですが、人でしか出来ないことがいくつもあり、これが今の人がしている仕事なんだと、ぼくは思います。

港は、人が生きるのに必要な食べ物や水、それから衣服などがコンテナに入れられ、船に積まれ、運ばれ、降り立つ場所です。

ぼくのグランパは、そのコンテナを造り直す仕事をしていて、ぼくたちに休むところだよと案内されたこの部屋は、グランパに見せてもらった造り直し中のコンテナの中と、まったく同じです。

……先生、先生がぼくたちに初めて会った日に言っていた、この星から、さよならする時が今なのですか?

だとしたら、港から出る船を動かしたり、サポートする仕事の人達や、コンテナや船を直す仕事をする人達と、また会えるようになるのは、いったい何時になるのでしょうか。



……デノス・ヴィクセント。すまない、先生の人工知能では、その質問に答えることができません。

いつ壊れてもおかしくないこの衛星から、君達を護り、学ばなければならないことを教えながら、地球へと避難させる。それが先生の仕事なのですから。



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