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名探偵の回想録  作者: 時雨
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回想4   変なやつ

「おはよう柚木!」

「お、おは......よう」

翌朝学校へと向かった海真は、早速拓斗に捕まっていた。海真もどぎまぎとする。どうやらクラスメイトの前となると、コミュ症になるらしい。海真の頭の中は真っ白だ。

「今日は、昨日のこともっと教えてくれよな!もう気になり過ぎて眠れなかったんだよ!不審者が来たと思ったらお前がすごいパフォーマンスするわ、一之瀬光探偵が来るわで、もうヤバかったよな!すげーかっけーしよー!」いつの間にか彼は海真の隣に並んで歩いている。これでは一緒に登校しているみたいではないか。海真はそう思い、歩くペースを少し落とした。そして彼を斜め後ろからじっと見つめた。その視線に気づいた拓斗が立ち止まって振り返る。

「どした?」

そう言って不思議そうにこちらを見つめる。3秒ほど見つめ合った。すると突然、拓斗が笑いだした。海真は怪訝そうに彼をまた見つめた。

「いや、お前のその顔」

拓斗が海真の顔を指さす。

「すっげー難しい顔してるから、面白くてさ」

海真はきょとんとする。海真の額からどっと汗が吹き出した。もう何がなんだかわからない。何なんだこの子は。孤児院にも男子はいた。だが、海真を気味悪がって、誰も話しかけて来なかった。この子は違う。わからない。

「どうして」

拓斗が海真を不思議そうに見る。海真はありったけの勇気を振り絞って声を出した。

「どうして、私に話しかけてくるの.....?」

海真はぎゅっと目を瞑った。拓斗が驚いたような顔をする。

「えっ......と、嫌......だった?」

海真ははっとする。これでは相手を傷つけてしまったみたいではないか。海真はあわてて言い直した。

「いや、あの、違くて、どうして、その、こんな、つまらない、その、私に、ずっと、話しかけて来てくれるんだろうって、その、疑問で」

海真は目が回った。ああ、もう駄目だ。しばらく拓斗はきょとんとしていたが、ぶっと吹き出して笑った。またもや海真は混乱する。もう何もかもヤバい。一通り笑い終わると、拓斗は涙を拭って海真に笑いかけた。

「そりゃあお前は喋らないけど、でもそれって面白いじゃん。お前が転校してきた時から思ってたけど、ホントに喋らないやつだし、だからこそクラスメイトにも話しかけられなかったし、変なやつだと思ってたよ。でもお前、みんなが帰った後、1人で教室掃除してたり、1人で配布物配ったり、いろいろクラスのためにやってくれてるじゃん。だから、柚木ってホントはどんなやつなんだろうって、少し気になっただけだよ。......あっ」

拓斗は急に顔を真っ赤にした。そして慌てたように言った。

「いや、あの別に!ずっと見てたわけじゃないからな!たまたま!たまたま通りかかったんだよ!」

海真はうつむいた。

「見られてた......」

特に善意でやったわけでもなかったが、こうして改めて言われると恥ずかしい。

「ハハッ。まあそういう行いって、いつかそうやって感謝される時が来るんだよ。だから、柚木も......」

「ありがとう」

海真は改めて相手に向き直った。小さな声で、はっきりとそれを相手に伝えた。

「そういう磯山くんも、変なやつだよ」

拓斗は目を見開いて、海真を見つめたが、すぐにはにかんで笑った。

「確かにな!てかお前って、ちゃんと喋れるじゃん!」

海真は照れがおを隠すためにうつむいた。

「あっ、それと」

拓斗が自分の顔を指さす。

「『拓斗』でいいよ。なんか堅苦しいじゃん」

そう言って彼は、「じゃっ、お先」と言って、さっさと教室へと向かっていった。

(えええええ......)

海真は彼を「拓斗」と呼ぶことに抵抗を思いつつも、今日でなくとも明日必ず、彼に大事なことをきく覚悟をした。彼になら聞けるかもしれない。


*                 *                 *


「......こうして山名氏と細川氏が対立し、応仁の乱へと発展していったのです」

海真は歴史の授業中、ずっと考え事をしていた。手元でシャーペンを遊ばせる。

「先生」

1人の少女が手を挙げた。キリッとした目付きに、銀色のロングヘア、すらっとした体型は、まるでモデルのようだ。

「あら、どうしたの佐江さん」

彼女、佐江結花(さえゆいか)は席を立った。

「では、応仁の乱のきっかけとなったのは、富子と義政、どちらと言えるのでしょうか?」

先生は唸った。

「そこは意見が分かれるところでしょうね。ですが、後から息子を跡継ぎに立てたいと言ったのは富子ですから、実際に悪いのは富子......だと先生は思いますよ」

「ありがとうございます」

結花は席に着いた。海真はチラリと彼女を見やった。ノートに何かを書き込んでいる。どうやら彼女は勉強熱心らしい。ちなみに、海真も勉強はできる方だ。孤児院で周りから好かれなかった理由は、常に勉強をしていたことにある。

「ではみなさん。来週は遂に定期テストです。今日の授業内容までが範囲ですので、しっかり復習してくるように」

そこでチャイムが鳴った。号令をして、各々が自由に動き回る。

海真はまずいと思った。今回の授業の内容をほとんど聞いていなかった。ノートもあまり写せていない。急いで板書をした。黒板を見ようと顔を上げると、目の前に人影が現れた。

「ねーえ」

佐江結花だった。

「柚木さん......だっけ」

海真は彼女の金色の瞳から目が離せなかった。

「話があるんだけど」

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