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こんにちは、世界の夜側さん  作者: 浅木宗太
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怪人と休日

 三人はきっちりと食器の後片付けまでこなしてから、アジトへ戻っていった。一人残された私はと言うと、洗濯機のスイッチを入れ、終わるまでの間に、興味本位程度ではあるが、ネット検索をしてみる。調べた結果、ヒーローも怪人も実はそこかしこに存在しており、一部コアなファンも存在しているらしい。日本各地に点在するヒーローと悪の組織、そりゃあ好きな人はたまらなく好きだろうなぁ、と携帯画面を見ながらぼんやりと思う。そういえば、小さい頃、どうしても見に行きたいと言う兄と二人、おじいちゃんにヒーローショーに連れて行ってもらったっけ、確か、三歳か四歳くらいの頃で、仕事で来られない両親のかわりにおじいちゃんが連れて行ってくれたのだ。あの時観たショーに出ていたヒーローの名前は何だったか、いくら考えても思い出せない。兄と一緒になって呼んだ覚えはあるのに。思い出せそうで、思い出せない記憶にモヤモヤしている間に洗濯が終わったようで、洗濯機が呼んでいる。また後で考えるなり、検索をかけるなりすればいいか。そう判断した私はまだ何も入っていないカゴを片手に洗濯機へ向かった。

 洗濯物はベランダに干すことにした。空は晴れ渡っており、気持ちだが、過ごしやすい。肌寒い事を差し引いても、申し分無い天気だ。これなら夕方に取り込むのさえ忘れなければよく乾くだろう。洗濯物を干していると兄から一件のメッセージが届いていた。洗濯物を干し終わってから気がついたので、五分ほど経っていた。内容としては、上司の計らいにより、半休がもらえたので今から帰る、と言うものだった。へぇ、今から帰ってくるんだ。と言う思いとともに「わかった」と返信を返す。そして返信をした後にふと思い出した。クロゼットが悪の秘密結社のアジトにつながっている事を。彼らが出てこなければ特に何も言わずとも乗り切れるだろう。だが、今朝の様子を見る限り、否、この一週間の様子を見る限り、割と自由に来そうだ。

 兄とは元々仲が悪かったわけでは無いし、小さい頃はよくお人形遊びにも付き合ってくれた優しい兄だ。だが、兄の高校受験の頃から遊ばなくなった。それも何かあったと言うわけではなく、母や父の「お兄ちゃんは大事な時期だから邪魔しちゃダメよ。」と言う言葉からだ。兄が悪いわけでも、母や父が悪いわけでも無い。それ以来何となく、そう、何となくあの「邪魔しちゃダメ。」が引っかかっているのだ。事実、兄は高校の間も、警察学校に行ってからも、ずっと忙しそうだった。元々明るい性格で誰とでも仲良くなれる兄、夜遅くまで勉強をしているその背中を見て、邪魔をしてはいけない、と幼心に思った。それ以来兄との間に一線を引いているのも私だ。そんなわけで、兄に対しても両親に対しても「大丈夫だよ。」が口癖のようになっている私にとってこの現状の説明をしなければならないと言うのは、大問題だったのだ。メッセージには「二十分ほどで着く」とあったので、見たときには既に後十五分といったところか。どう模索しても、悪の秘密結社のアジトに繋がったクロゼットの説明など思いつかないし、そんなものはない。説明して納得されたらそれはそれで困る。こうなったらガムテープでぐるぐる巻きにでもしてしまおうか、などと言う血迷った案も浮かんだがどう見ても不自然すぎるためやめた。ああでもない、こうでもないと考えているうちにガチャリと鍵が開く音がして、兄の「ただいまー。」と言う声が聞こえてきたのだった。

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