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素早さ特化でVRMMOを始める。──そしてあの日、死神と呼ばれた。  作者: 霜月りんね
序章 素早さ特化の始まり
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素早さ特化──そして影竜



「・・・つまり()()と一人でやり合わないといけないといけないと言うことですか」



アイリスはそう諦めかけながら呟き、前を向く。

そこには小さな屋敷ぐらいの大きさのドラゴンがいた。身体中に、壁に刺さっていたものと同じものがあちこちに付いており、黒いオーラを纏っていた。その姿はその名にとても相応しい。



「さて・・・どうしましょうかね」



ここまで来てしまったので、逃げる訳にもいかない。しかしこれを一人で倒せなど奇跡が起こらない限り無理な話である。だがアイリスの頭の中には勝てるかもしれない『考え』が浮かんでいた。


 そう。アイリスは【暗殺ノ刃】というスキルを所持しているのだ。ボス相手で確立がさらに下がっているとはいえ、瀕死の状態異常付与の効果は健在。あわよくば即死の状態異常を与えることができるかもしれない。


 不意打ちという条件に関しては見た目からして動きが遅そうなので、スキルと移動速度で相手を撹乱(かくらん)し背後を取ることができそうなので問題ないだろう。


だがそれは運だよりの作戦であり、無謀であることには変わりはないのだ。

 失敗が許されないということを考えると余計に緊張してくる。アイリスは額に流れる冷汗をぬぐい深呼吸をする。


 緊張は戦いにおいて力にもなるが、足かせにもなる。少なくとも私にとっては実力を発揮するのに必要はなく、ただただ邪魔なだけである。



 「ふぅー・・・」



 殺すべき相手はただ一人。一対一の殺し合いなのだ。そう考えるだけで自然と緊張がほぐれてくる。

 ――これならいける。

 そう思った時だった。



 「ッ・・・!」



 体にかかっていた無駄な力が抜けたのを見計らってなのか、万全を期した状態になった瞬間に襲ってきた。

 私の方向に一直線に影竜の尾が襲い掛かってくる。尾は風を切り、暗殺者のように的確に急所を狙う。 私はそれをスキルの力を借り難なく避ける。



 「ッ・・・一層のボスでこの硬さ・・・どうなているのでしょうか・・・」




 避ける際に、尾に攻撃したのだが自分の攻撃力が低いからなのか、ボスの防御力が高いのか、それともその両方なのか。アイリスが放った攻撃は虚しくもキンッと乾いた音を響かせ弾かれる。それなら――



 「【二角電撃大車輪】!」



 私は態勢を整えると、作戦を実行するべくスキルを放つ。

 放たれたスキルは斬撃を纏いながら、ボスに襲い掛かる・・・が。


 斬撃はむなしくもボスに当たった瞬間弾かれ消滅する。

 周りから見ればこの状況はピンチでしかないのだが、私にとってはピンチではない。作戦の一つなのだ。スキルがボスを囲むような形になったのを見計らい。



 「【隠密】【加速】!」



アイリスは相手から捕捉にくくするため、スキル隠密を発動させ【加速】を使い、一気に影竜の背後へと回り込む。そして壁の出っ張りを足場にし、【跳躍】で飛び上がると。



「【暗殺ノ刃】【超火力】【防御力比例攻撃】【四天豪斬大風車】ッ!」



最初から持てる全ての力を使い、攻撃を叩き込む。

岩石も粉々に砕く、斬撃の嵐はスキルの力でその威力を倍増させ、影竜に襲いかかる。アイリスは攻撃力にちょい振りしているとはいえ、通常の攻撃では刃は通る気配はない。しかし相手の防御力が高いほどそれに比例して攻撃力が高くなるスキル【防御力比例攻撃力】の力を得ている。


 

 ダメージバーが少し減る。この流れを続けれることができれば、いずれは勝てるのだろう。しかし、【防御力比例攻撃】には回数制限があり、使い切ってもとどめを刺すことはできない。それどころかダメージを与えられる手段がなくなってしまう。そうなると、もはや状態異常を与えるしか手がないのだが、先程述べたように運任せであり、確実ではない。――これに一つ付け加えるとするならば。



 「・・・今回は麻痺ですか・・・見た感じ効果も薄そうですね」




 そもそも影竜には状態異常がほとんど意味をなさないのである。詳しく言うと、アイリスの与える状態異常が弱いか、影竜の状態異常に対する抵抗が強いかのどちらかなのだろうが、おそらくはそのどちらもであろう。とはいえ、()()()()という事なので聞いていないわけではない。しかしそれは時速五十キロが時速四十九キロに変わったぐらいのことで、結局効いていないといってもいいのだ。こうなると即死の状態異常が効くのかも怪しい。


 影竜の動きを読み、工芸を避けながら反撃するアイリスは、今後の戦況について考えていると少し不安になってくる。――アイリスの頭の中に雑念が混じり始める。



 先程述べたことも含まれるのだが、ナツメたちは大丈夫なのだろうか。そんな思いが頭の中を何度もよぎる。ナツメたちなら大丈夫。――そうわかっていても心配になってくるのだ。


 だが戦闘の際にそんな雑念は大きな隙でしかない。影竜は雑念が混じり動きが鈍っているアイリスに向け大量の鉱石を打ち出す。穿たれた鉱石は空気を突き破りながら弾丸のように一直線に飛んでいく。おそらくこれが当たれば勝負は決着。つまり――アイリスの()である。



 「ッ!【加速】【二角電撃大車輪】【四天豪斬大風車】【斬撃ノ流レ】!」



 そんなアイリスは再度集中しなおし、持てる力を振り絞り、ことごとく攻撃を――避け、――遮り、――切り落としていく。しかし運命はそんなアイリスをあざ笑うかのように。



 「ッ―――――――――――――!」




 攻撃の一つがアイリスの腹に直撃する。それと同時にアイリスの軽そうな体は、突風に吹かれた落ち葉のように吹き飛んでいく。そしてそれを壁が受け止める。ここはゲームの世界。痛いと感じることはないのだが、内臓が絞られ、押しつぶされ、腹からこみ上げてきそうな感覚に襲われる。


 そして体力ゲージが一気に危険な状態を表す赤色に変化する。残された体力は後――1。

 アイリスの意識が遠のいていきそうになる。そんなアイリスの視界に、()()の通知が表示される。それは体力が少なくなっていることを知らせるものでもなく、ナツメ達からのものでもなく――







 『スキル【影ノ支配者】を使用しますか?  Yes or No』





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