惹かれる想い 【月夜譚No.12】
その切り絵はとても繊細で、ほんの少し触っただけで壊れてしまいそうな儚さがあった。それを作り上げる彼女の指もまた細く、乾いた小枝のようにパキンと折れてしまうのではないかと、内心冷や冷やすることも多々あった。
けれどその実、彼女は芯が強い。困っている人がいれば真っ先に助けにいくし、誰かが間違ったことをすれば赤の他人であろうが注意をする。決して目立つようなタイプではないが、いつも笑顔で周囲の皆を明るくさせるのが得意だ。
臆病で怖がりで、無愛想な僕とは大違い。寧ろ、彼女の方がよっぽど男らしいとさえ思える。
だが――いや、だから、なのだろう。
「あの」
勇気を振り絞って声をかけると、彼女は作業中の手を止めてこちらを振り返った。小首を傾げて長い髪が前後に揺れる。
僕は背に隠した白い封筒を持つ手に、僅かに力を入れた。