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第0話 エピローグ①

冷たく、乾いた風が吹き抜ける大通りの歩道。風を遮る物がないこの歩道を俺はとぼとぼと歩いていた。


「はぁー。今日も疲れたなー」


今日は残業で夜遅くまで会社に残り仕事をしていた。急なトラブルで社員総出での対応。身も心もボロボロだ。うちの企業は全然ホワイトなんだけどああいう急なトラブルが多々ある。その時は本当に大変だからもうあんなトラブルは起きないでほしいな。


「もう22時か。家につく頃には23時過ぎぐらいかな。明日からは休みだしテキトーに飯食って風呂いったらだらだらしよーかな。うん。そーしよ。」


帰った後のことを考えつつ目線を下にさげ、駅へとも向かう。

しばらくすると俺の隣を何組のカップルがすれ違ってく。

......いいなぁ。俺も彼女がほしい。


俺は今年で27歳だ。

もう結婚していてもおかしくない年である。家に帰ったら嫁が料理を作っていて温かい飯と共に俺を向かえてくれる。何度そんな妄想をしただろう。

......そして現実に戻る度に虚しくなる。


こういう時は部屋でのんびりラノベでも読みながらまったり、だらだら過ごして気分をリフレッシュするにかぎるな。最近買った異世界転生もののラノベでも読むか。あれは良い。

自分もその異世界にいった気分になれるからね。

神から貰ったチート能力をもって美少女を襲っている敵を倒す。そしてそこから始まる恋。やがてはハーレムなんかを築いて、世界を脅かす魔王を倒しみんなから慕われる英雄になる。んで、主人公は自分の力を大したことないと思っていたり、自分なんかがモテるはずないとか思っているところがまたいい。あんな鈍感系チート主人公に俺もなりたいな。どれだけ人生が良いことだろう。毎日刺激的で楽しく、幸せなんだろうな。

別にいままでの自分の人生が悪いものって訳でない。でもなにか足りないんだよなー。なんか学生卒業してからなくなった輝き?みたいなものがほしいなー。


やがて交差点へとたどり着いた。もう夜も深くなりつつある今の時間。行き交う車は朝と比べると大分少なくなっていた。

朝は人が通る隙間が無いくらい車がぎゅうぎゅに行き交っているが、今はたまに1,2台行き交う程度だ。


俺の目の前の信号は赤になったばかりだ。あと数分は赤のままだろう。冷える街中で俺は一人信号が青になるのを待っていた。


「今夜は一段と寒いな。早く帰って暖かい風呂に浸かりたいな。」


そんなことをぼやいていたその時だった。


突然俺の横から視界を潰すような光と共に車が突っ込んで来た。

次の瞬間俺の体に強烈な衝撃が来た。3~4mほどぶっ飛んだと思う。内臓がぐちゃぐちゃになり、全身の骨が粉々になっていく感覚が来た。視界は赤に染まった。肺が潰れたせいか、うまく呼吸ができなかった。


「や......やべぇ...。やっちまった.....」


痛みで道路に這いつくばっている中、視界には、俺を轢いた車の中では20代ぐらいの金髪の青年が喚いていた。


「お、俺は何もやってねえ。誰が先に轢いたやつをお、俺がたまたま轢いただけだ.....。そ、そうだ! 絶対にそうだ! 俺は悪くない!!」


青年はそう言い出すと車を急発進させ逃げていった。

まじかよ。轢いたのどうこうよりまず助けを呼べよ。

やばい。やばい。やばい。

全身が痛い。悲鳴を上げている。

このままじゃ死ぬ。まだ嫁さんもらってないのに。こんなかたちで死にたくない。

痛い。痛い。痛い。

死にたくない。死にたくない。



「がはぁっ!......だ、だずげで......!」


誰れもいない夜の街中でただ必死に助けを求めた。必死に。

だがいくら叫んでも誰にも届くことは無かった。


やがて俺の体は徐々に温度が失くなっていき、肌の色も蒼白へと変わった。遠のいていく意識と共に。


そして今日、俺は、桜田幸人は死んのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「...........い......おー......い...おーい。」


誰かの声がする。誰なのだろうか。

......というか俺は生きているのか? 確か俺が最後に意識があった時は車に轢かれ、全身激痛が走っていて徐々に意識が遠のいていき死んだと思ったのだが。

だが今は特に痛みはなく、どこもおかしなところはなさそうだ。


「ん.....? 誰だ?」


気になって目を覚ますと俺は淡い桜色の空間で寝転がっていたようだった。とりあえず上半身を起こし、声がした方を見ると横には中腰状態の不思議な風貌の人物がいた。

薄く虹色に輝く髪に、少年とも青年とも見れる整った顔立ち、服装は全身真っ白の男物の和服とかなり謎な人物だ。


「お、やっと起きたね。おはよ。」


「えーっと、あんた......誰? てか、ここ何処? 俺、車に轢かれてなかったけ? 」


「はっは。当然の疑問だよね。まぁ、まだ時間はたっぷりあるし一つずつ答えて上げるよ。」


「......」


なにがなんだかわからず混乱している俺にその人物はそう話しかけてきた。


「まず、僕は誰かだね。僕は君達の世界でいう神様的な存在かな。君達の世界とは違う世界のね。」


「.....は? え、は?」


唖然としている俺に神的な存在の人物が続けて話す。


「それで次にここは何処かと君のことについてだよね。ここは次元の間だよ。君たちが住んでいた現世と死んだ人の魂が行くあの世の間にある所だよ。そして今の君は魂だけの存在。つまり君は死んだからここにいるんだよ。」


「........」


情報量が多すぎる。神様? 次元の間? 俺やっぱり死んでるの?実は俺は夢を見ているのではないだりうかと思い頬を強く捻る。

痛い。

しっかりと痛みを感じる。

どうやら夢ではないみたいだ。え? なら俺の今の状況は車に轢かれて死んで魂だけの存在になってこの次元の間? っていう所に来てるってことか? この神的な存在の人が言うには。


「おーい。大丈夫かい? フリーズしてるみたいだけど。 まぁ、いきなりあんなこと言われたら誰でもそうなるか。」


「......えーっと、まぁ、今どういう状況なのかはなんとなくわかった。理解できてないけど。」


「そお? まぁいいや。それじゃぁ次の説明いくね。本来なら死んだ人の魂はあの世へいって生前の記憶とか消したり、罪を清算したりしてまた輪廻の輪に加わって生まれ変わる為の準備をするんだけど、君には少し別のことをしてもらうよ」


「......違うこと? なんで俺だけ? 」


「君にはこの世界、君が生前いた世界とはまったく別の世界に

転生してもらうことにしたんだ。」


「.......えーっと、違う世界? なんで?」


次々とくる神からの言葉にフリーズ仕掛かるもなんとか持ちこたえ、必死に言葉を絞り出していく。


「それはね、これから君が転生する世界は少し特殊でね。星が活動するためのエネルギーリソースが色々あって度々、枯渇するんだよ。

んでその枯渇したエネルギーリソースを補給するために色々な世界からリソースを分けてもらうんだ。だがリソースを分けて貰おうにも、各世界ごとに次元の壁があるんだ。」


「.......」


「壁を越えてリソースを届けようにも僕達神はこの世界管理しとかなくちゃいけない。少しでも目を離すと世界が滅びる可能性があるからね。でもエネルギーリソースを分けてあげたい。そこで君みたいな人達に配達人になってもらおうってわけ。君がリソースを持ってその枯渇している世界にいってリソースを渡して、君はその世界に残って輪廻転生する。そしたら君を送り届ける分だけの最小限の力を使うだけで済むからね。」


混乱が収まり、だんたんと冷静になっていき、神が話していることをなんとなく理解してきた。ようは死んだ俺にリソースもってあっちの世界に行ってリソース渡したら後はその世界で暮らせってことね。


「なんとなく話はわかってくれたかな?」


「まぁ、大体わな。一人気になるんだがなんで俺なんだ?死んだ人間なんて毎日何万といるだろう。なんで俺になったんだ?」


「あーそれね、今日死んだ人間の中で君の魂が次元の壁を越えるのに適した善良な魂で、この世界に未練が少なかったからだよ。他の魂は壁を越えるのに適してなかったり、邪悪な魂だったからね。」


「そーなのか。なら俺はたまたま選ばれたって訳か。」


「そーだよ。リソースの補給要請が来た今日にたまたま君が死んだからちょーどいいから選らばさせてもらったよ。」


「そーなんか。」


たまたまか。まぁ別にいいけど。

未練か。嫁さん欲しかったな。もっと親孝行したかったな。友達にも会えないのは寂しいな。でも、死んじゃったものはしょーがない。諦めてあっちの世界でやってくか。うん。切り替えよう。


「さて、そろそろ君をあっちの世界に送るよ。いいよね?」


「おう。」


「それじゃあ、はいこれ。リソースね。」


渡されたのは、サッカーボールが入るほどの大きさのキューブ状のものだ。薄く青白い光を放っていた。


「あっちの世界へ続くゲートを開くからそこ通ったらたぶんあっちの世界の神様がいるからこれ渡して、その後どーするかはその神から聞いてね。」


「わかった。」


神が何もない空間に手をかざすと一人が通れる位の円状のものが発生した。これがたぶん世界を繋ぐゲートだろう。


「じゃあ、どーぞ。これ通ればあっちの世界へ行けるよ。」


「ああ。わかった。」


「君のあっちで幸せな人生を送ることを願ってるよ!がんばってね。」


「ありがとう。それじゃあ行ってきます。」


「いってらっしゃーい。」


俺はゲートをくぐり、異世界へと行った。



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