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7話 妹だった女の子

ツキコは高校に入学してしばらくしてから、学園に怪しい雰囲気が漂っていることに気がついた。

そして、日に日にその思いは強くなっていた。

原因についてはわからなかったが、学内の雰囲気が変わるに伴い、

エリコの雰囲気も同じように変わっていくことは感じていた。


ツキコとエリコは小さい頃はよく一緒にいた。

エリコはその頃から少し無愛想だったが、ツキコのことを妹のように可愛がっていた。

ツキコのほうも「ねえねえ」と呼んでエリコに懐いていた。

しかし、ときが過ぎ、二人の間の関係は徐々に希薄になっていった。


ツキコの家系は代々この土地を守ることを司っていた。

ツキコ自身も家を継ぐ必要があり、毎日修行をしていた。

周りの友達が楽しそうに遊んでいる時にツキコは厳しい修行が課されていたのだった。

そして、この学園に入学し、エリコに再び会ったのは偶然だった。

高校に入って出会った時のエリコは、ツキコの知る以前のエリコと変わらなかったから、ツキコはホッとした。

しかし、しばらくするとエリコは徐々に変わっていた。


ツキコは土地を守るものとしてこの学園から魑魅魍魎取り締まらなければならなかった。

特に神と称する悪霊たちが悪さしないか見張っていた。

入学後からツキコは学校近辺と学内を監視していた。

そこには屋上が含まれていたはずだが、ツキコは屋上が怪しいと思うことができなかった。

しかし、明らかに違和感があった。そんな折、エリコと学内で会った。

エリコは怪しい笑みを浮かべ屋上の階段から降りてきたのだ。


エリコと久しぶり話して、自己主張の強さや周りに対しての影響が

以前のエリコと違うとツキコは思った。ツキコはエリコの様子が気になり、エリコを見る機会が増えた。

すると、同じクラスのサクラ、シイナ、テルミと仲良く度々どこかに行くことがあることがわかった。

しかし、どこに行くかまでは追うことはできなかった。

まるでそれは行き先が覆い隠されているようであった。


そして、シイナとテルミがいなくなった。

周りは驚いているようだったが、エリコはいつも通りに見えた。

以前のエリコなら、知り合いがいなくなると探しに行ってもおかしくなかったが、

二人がいないことを気にしていないようだった。

ツキコはエリコが関与していると推測した。

しかし、消えた人の行方や証拠はなく、確信までは持てなかった。

ツキコはエリコが事件に関与する現場を押さえることが必要だった。

そして、考えた末にツキコは自らをおとりに使った。

無防備を装い、エリコの前に積極的に現れるようにしたのだ。


エリコはそんなことつゆ知らず、ツキコの意図通りに偶然の出会いを装ったエリコを屋上に誘い出した。

お茶会ではエリコがツキコの背後に立ち、怪しいそぶりを見せた。

そのとき、ツキコは周りに糸が張り巡らせられていることを感知した。

ツキコはエリコが悪神の力を持つことを察し、力を放出した。


ツキコの最初の攻撃でエリコはすでに戦意喪失していた。

エリコは自身の授けられた力は破られないと盲信していた。

しかし、ツキコの一族の力は古くからそれを押さえることが可能だったのだ。


「こんなことなら、さっさと処分すべきでした。」ツキコは淡々と言う。

「……。処分?」

「ええ。あなたは悪神に取り憑かれ、生贄の儀式を進めましたね。

私はそれを止め、あなたを邪神ごと跡形もなく消去することが必要なんです。」

ツキコは手を開き、エリコに向けた。


するとエリコ背中からから黒い影が現れた。エリコ自身は人形のように力なく崩れた。

「私はこの土地を治める神だ。」

「あなたの時代は終わったんです。今はただの悪神です。」ツキコは攻撃の構えのまま、微動だにしなかった。

「待て、私を消しとばすなら、この女も道連れだ」

「ええ、それが私の仕事。もう離れられないくらい取り憑かれていることはわかっています。」

「助けたくないか。」

ツキコは答えられなかった。

「ふふふ、助けたいんだな。」

「何が望み?」


「完全に復活するためには10人必要だが、8人集まった。後二人は貴様とこの娘にするつもりだった。」

悪神が言った。エリコの顔は苦悩の表情が浮かんでいるようだ。意識はうっすらと残っているようだった。

「八人でいい。捧げよ」

「……。八名はどうなるの?」

「魂を奪う。」

「魂を奪われた人間はどうなるの?」

「さあな。死んだようにただの抜け殻となるだけだ。」


エリコの頭が動き、顔を挙げる。

「……。そんな命までは取らないっていったのに。私を騙したの?」エリコが意識が戻ってきたようだった。

「私は嘘はついていない。」

「エリコさん、このものの言葉を真に受けてはいけないのです。」

エリコとツキコは向かい合った。

「ツキコさん、私ごと吹き飛ばして。」

「何を言う。お前も消えてなくなるぞ。」

「消えるのは怖いわ。でも私の誤りです。私が私利私欲のために、行ってしまった過ちで犠牲を出すわけにはいかない。」

エリコは懇願するようにツキコを見た。

ツキコは手を構え、手には光が差した。

「やめて!」すると帰途についたはずのサクラがエリコの前に立ちはだかった。

ツキコは驚いた顔をし、手から光が消えていった。

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