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転生しても山あり谷あり!  作者: 月城 紅
18歳になったよ!
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波乱の夜会 1

 

「え…っと?もう一回、聞いてもいい?」


「ハイラントの貴族が来る。しかも…ルーチェの実父が」


 その言葉に絶句した。

 もう二度と会うことはないと思っていた父親。

 しかも本人から会いに来る?

 なにそれ?そこそこまで育てられたことに、はありがたいと思っている。でも、私の記憶が蘇る前に捨てられてたらどうなっていた?断言しよう、絶対に生きてはいない。

 しかも私の記憶が蘇ってから捨てた時にも、二度と関わるなと言われているし、生き残ることが難しい森に捨てられた。

 十中八九、死んでいる…と思っているはず。

 なのに会ったら、私が生きていることがバレる。

 そしたら…


「そうだ。ルーチェが生きていることを分かったら、取り戻そうとするだろう。なんせ愛し子だ。しかも既に精霊と契約している。そして、捨てたと言っても自国の…自分の娘だ。連れ戻そうとするだろう」


 そこで、不安が募る。


「ねぇ、シリウスはなんて?招待状を出したんでしょ?てか、人間至上主義の国がなんでエルタニンに来るの?」


「招待状は出していない。ルーチェが言ったように、人間至上主義を貫いている国だ。争いの火種になる。だが、今回は向こうから申し出があったんだ。『愛し子様が人間と聞き、この機会にハイラントとエルタニンで手を取り合いませんか?』って。シリウスはルーチェの事情を知っている。明らかに向こうからの思惑が見えている。で、こっちもいきなりはちょっと無理では?って今までの事もあるので…って言ったんだよ。でも、押し切って来た。てか一昨日、城下に入っていて昨日謁見の申し込みをして来た。既に他の国の者もエルタニンに入国している。ここでハイラントを追い返したら…」


「他国への評判が落ちる…」


「そうだ。しかも、こっち側にバレないように、少人数で入国していたんだ。最初から歓迎されていないことは向こうも分かっていたからな。そして追い返したら何をしでかすかわからん」


 その言葉に、ため息しか出ない。


「すまん、ルーチェ。防ぐことが出来なくて…予定では夜会では使用しないつもりだったんだが、ヴェールを使おう。これなら顔は分からないから」


 そう言ってジルは手に持っていた箱を開けた。

 中には繊細な刺繍とレースが織りなす綺麗なヴェールが。

 持ち上げると、確かに向こう側が見えずらい。


「コレどうしたの?」


「ルーチェの花嫁衣裳の一環で作った」


「……相手は決まってませんが?」


「……練習だ」


 ……オカン。貴方はなにをしてるんですか?練習でこんな大層な物を作ってるんですか?


「……いや、費用はどこから出てる?」


「あー」


「どこから?」


「……シリウスのポケットマネーだ」


 ……いや、何を考えているんだ?この二人は。

 私は恋愛結婚を望んでいる。

 そして相手はまだ、居ない。

 よって、いつ結婚するかわからないのに、既に結婚式のヴェール作ってるとか可笑しくない?

 私の希望は?てか、練習ってなに?


「色々ツッコミどころ満載だが、今回は二人に感謝します」


「そうしてくれると助かる。で、だな。ヴェールに合わせて衣装をちょっと弄るから協力してくれ。その前に、シリウスがこっちに来てるから一緒に食事にしろ。俺も食べるから」


 そう言って、ジルはメイドさんを呼び止めて、食事の支度をさせた。



 *  *  *



「今回はすまなかった」


 部屋に入るなり、綺麗な土下座を繰り広げたシリウスとジル。

 なんですか?示し合わせたんですか?

 ここで許しません!なんて我儘言えないよ!


「うん……今回は不可抗力だもんね。仕方がないよ。もしかして、シリウスがパレードの時にピリピリしてたのはこのせい?」


 シリウスとジルを立たせながらも、疑問を言う。


「まぁ、そうだな……」


「パレードの時って?俺なんも聞いてないんだけど?」


 言葉を濁すシリウスに、警戒を露わにするジル。


「いや、警備上では問題は何もなかった。ただ、私の気持ちの問題で…」


 その言葉を聞くや否や、ジルは納得したのか頷いてる。

 え?なに?私全く話についていけないんですけど?


「とにかく、食事にしよう。この後の夜会では満足に食べられないだろうから」


「そうだな。あぁ、ルーチェはあんまり食べるなよ?付けなくても問題がないんだが、一応コルセットを着用するからな」


 おぉう……食べる楽しみも奪われた。


「付けなくて問題ないならいいだろう?」


「いや、満腹に食べたら胃の部分が出るだろ?ドレスのラインが崩れる」


 こんな時でもドレスが優先ですか…まぁ、ジルが頑張って作ってたから仕方がない。


「それからルーチェフルール。夜会での食べ物、飲み物に簡易しては私が手渡す物以外を、口にしないでくれ」


「なんで?」


「一応なのだが、何かが混入されていたら困る。竜人の自分たちは体が丈夫だし、毒や薬等は効きにくい。普段ならあまり気にはしないのだが、今回はハイラントのこともある。人であるルーチェフルールは用心してのことだ。それに私もずっとは付いて居られない。他国の賓客をほっておくことは出来ないからな…」


「わかった」


「あぁ、自分の安全を一番に考えて欲しい」


「大丈夫ですよ、ルーチェ。私達も今回は傍に居ます」


「そうだね!僕たちが居たらよっぽどのことは起きないよ!」


「どうせなら、細切れにする?」


「それは会場が血に染まってしまうじゃろ。妾が水攻めにしてやる」


「それはそれで、会場が水浸しになるじゃろうが…」


「なら俺様とロートで消し炭にするか?高温で一気に焼いて、灰にすればいい」


「そうですね…最大出力で、一瞬で終わらせば会場も汚れないですし」


「「「……」」」


 可愛いにゃんこ達は、中身が凶悪すぎる…。

 どちらかと言えば常識人だと思ってたリシェスとロートが、何気に一番ひどくない?


「なぁ、ルーチェ。こんなに心臓に悪い夜会なんて俺、初めて」


「無事に終わることを祈るよ」


「何かあった時は、止めに入ってくれ」


 なんか実父が来るとかよりも、精霊が暴れないかのが気になるなんて…。

 無事に終わりますよーに!!!


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