成人式だ! 1
差し出した頭に、シリウスがそっとティアラを乗せてくれた。
・・・・乗せてくれた。ここまではいい。
でもさぁ・・・これ落ちない?
ちょっとでもふら付いたら、落下してカシャーンって音を立てて、床に転がりそう。
ん?想像力豊かだな・・・って?
いいぞ!もっと褒めるのだ!!
「ルーチェ・・・・またくだらないこと考えてるな?何時までたっても成長しないなぁ」
そうため息を付きつつも、シリウスが乗せてくれたティアラをピンで留めていく。
「乗せただけではダメだったか?」
「あのな、シリウス。ポンって乗ってるだけだと落ちるだろうが!傷でも付いたら大変だろ」
「そうか・・・だが問題ない。他にも作ってある」
「・・・・・ん?お前、今、なんっつった?」
「だから他にもある、と言ったんだ」
「「・・・・・」」
これにはジルと一緒に無言になる。
え?この、今、頭の上にあるティアラ意外に、他にもある?
「ねぇ、シリウス・・・他にもあるって、幾つ作ったの?」
「うむ。ルーチェフルールに似合いそうな図案が幾つも思いついてな、絞るのに苦労した。そのティアラを入れて五つだ」
ちらっとジルを見ると絶句している。
たぶん・・・いや、絶対的にこのティアラ一つでも相当な金額だろう。
それが後、四つもある。
「お、お前、バカかーーーーー!!!!!!!」
ジルの絶叫が部屋に木霊した。
耳がキーーーーンってなる。
すごい肺活量だ。
「お前、これ一つでも、幾ら金が掛かってると思ってる?!」
「問題ない。現在付けているティアラも含めた全部のティアラの代金は、私が払った」
「・・・・・ってことはなんだ?予算使ってないのか?」
「あぁ、勿論だ。普段使う物ならいざ知れず、こんな大事な時に使用する物だ、私が払って当たり前だろう。寧ろ誰か知らない者の物を、ルーチェフルールが付けていることが問題だろう」
ドヤ顔で言われました。
てか、このシリウスの貢ぎたがりはどうにかならんのか?
「まぁ、それならいいわ」
そしてジルさん?あっさり受け入れ過ぎじゃないですかね?
予算があることにも問題だと思っているのに、例え予算が組まれているのに、貢がれるなんて・・・。
考えように、国庫に負担がない・・・と思えば良いのか?
どうもジルはそこを気にしているようだし・・・。
「それよりも、支度が出来たのなら行こう」
そう言ってシリウスが私に向けて手を差し出した。
これにももう慣れた。
最初はエスコートなんて恥ずかしかったのだが、これからはそう言った機会が増えるから・・・と言われて頑張っている。
が、シリウスの手を握ったら、流れるようにお姫様抱っこされた・・・。
うん。これも慣れた。
いや、毎回抱っこする訳じゃないよ?ちゃんとエスコートの時もある。
でも、どっちかって言うと抱っこのが多いかも・・・。
「よし、んじゃ行くか」
そう言ってジルが扉を開く。
ジルもこの光景に慣れており、もう当たり前とさえ思っているみたいだ。
てか、私の行動範囲に居る人達は、もう慣れている。
最初は物珍しく見られていたのだが、何度も続けばそりゃ慣れる。
私はもう色々諦めた。
* * * *
向かうのは、神殿・・・ではなく、ホールだ。
城での催し物でよく使う場所だ。
よくあるのが、夜会・・・とかかな?
他にも音楽会とかもやるそうだが、基本的にはイスなどが常に置いてあるわけではなく、その時その時に合った様に準備するらしい。
因みに今日は、円形に椅子が並べてあり、中央の部分がぽっかりと空いている。
この中央の部分で儀式が行われる。
てか、儀式って言うよりも、宣誓的な感じだそうだ。
予行演習でも、え?こんだけ?って思った私は悪くない!
そして、何よりも・・・・この儀式に参加するのは私だけなんだよ。
いや、成人が私だけなんて可笑しいだろ!って言ったら、他の人は神殿で行うんだが、『今日は私だけ』なんだそうだ。
他の人は後日になった。
つまり、この儀式は愛し子の見世物だな。
勿論、私一人が見世物になるのは嫌なので、にゃんこ達も強制参加だ。
えぇ、渋りましたよ!!
でも私一人なんて嫌!!と駄々をこねて、更には新作料理を差し出すことを条件に、参加させたのだ!
偉い、私!
因みに、にゃんこでは示しが付かないとのことで、人型での参加になります。
この人型での衣装も苦労した・・・。
最初はローブで~と言いだして、私もまぁいいか!とか思っていたら、納得できない人が一人。
えぇ、言わずもがなジルさんです。
ここからは怒涛の勢いで、全員の衣装を作成しておりました。
それぞれのカラーに合った、それぞれのイメージを表した衣装。
ちゃんと本人達の意見も取り入れてますよ!
そうして出来上がった衣装に身を包んだ、にゃんこ達は私とシリウスを待っていた。
既に椅子には、招待された方々が静かに私を見ている。
中央に続く道をゆっくり歩きながら・・・・てかゆっくり歩く必要あるの?って聞いたら、見世物なんだから我慢しなさい!ってジルに言われた。
オカンは今日も厳しいです。
私が中央に付くと、鐘が鳴った。
それを合図に、儀式が始まった。
ねぇ、成人式って皆でワイワイする感じじゃなかったっけ?