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転生しても山あり谷あり!  作者: 月城 紅
ばんざーい!
133/152

ある兵士の一日 6

 

 俺達三人は一斉に息を飲んだ。

 ここにはいないはずの、アルの首。

 それに他の皿を見ると、同期の首や体が乗っている・・・。

 何故だ?アルは非常口から出た!

 そこからは安全なはずだ!なのに、何故モンスターの食事になっている!

 訳が分からない・・・。


 ふと、振り返り他の二人を見ると、二人共顔面蒼白だ。

 当たり前だ同僚がモンスターに食われる瞬間を見ているのだから。

 欠く言う俺も同じ顔をしているだろう。


 カタンッ


 小さな音が響いた。

 アンだ。

 あまりの惨状に杖を落としたのだ。


 その音に、今までわいわいがやがや言いながら食べていた、モンスター達が一斉にこちらを見た。


(まずいっ!!非常にまずい!!)


 そう思っても後の祭り。

 俺達の姿を確認したモンスター達が、各々の武器を手に取り一斉にこちらへと向かって来た。


「二人共走れ!!」


 そう言うなり、扉を閉めた俺は落ちたアンの杖で、扉を塞いだ。

 少しばかりの時間稼ぎにはなるだろう。


 走り出した二人と一緒に手近な扉へと入る。

 何故先に逃げないかと?

 それは興奮したモンスターは、最初の一匹の先導で先に進む。

 その場合、何も考えてはいないのだ。

 動くものを追いかける。

 いちいち扉を開けて中を確認・・・などするわけがないのだ。

 ただし、この戦法などは知恵の低いモンスターに限るが・・・。

 まぁそれを裏付ける様に、モンスター達は廊下を走り去っていく。


「ねぇ・・・アルは安全なのじゃなかったの?!私達もあそこで外に出ていたら、食われてたの?!」


 取り乱したアンが言う。


「アンさん落ち着くっす。また幻かもしれないっすよ?それに耳を澄ませて欲しいっす。さっきの軍勢の二階に行ったとしても、足音がしなくないっすか?」


「・・・確かに、そうだな」


「取り敢えず、アンさん深呼吸して下さいっす」


 その言葉に、何回か深呼吸したアンは落ち着きを取り戻したようだ。

 それから、自分達が慌てて入った部屋を見回した。

 まぁ、見回すも何も、トイレの看板が出ていたので、トイレなのだが・・・。

 ここは女子トイレのようだ。


「落ち着いたようだし、トイレに花がないか確認しよう」


 そう言って、一つずつ確認をする。

 そう、忘れてはいけない。

 俺達は花を集めて、少年に渡すのがミッションなのだ。


「ねぇ、この張り紙見て」


 そうアンが言うのでギドと二人、アンの元へと行く。

 張り紙には

 “扉を三回ノックして「花子さん遊びましょう」と声を掛けて下さい”

 と書いてある・・・。


 花子って誰だ?

 しかもトイレで三回ノックをするのか?

 この場合だと二回が常識ではないのか?

 いろいろと疑問が過るが、花が関係しているのかもしれない。


 横を見ると少し涙目のアンが見える。

 先程のことでショックが大きいのだろう。

 そこへこの張り紙だ。不安が大きいだろう。


「アン下がっていろ。ギド、俺が声を掛ける」


 その言葉に素直にアンは下がり、ギドは頷いた。


 コンコンコン

 ノックを三回。


「花子さん遊びましょ」


 声を掛ける。


「はぁい」


 個室から返事がくる・・・と同時に扉が静かに開く。

 小さな女の子の口が笑みを模った瞬間、白い手に顔をわしずかみされて個室の中に引き込まれた。

 引き込まれた俺の体を、二人が懸命に引っ張る感触が服越しに伝わる。

 だが俺には手の隙間から、少女がくすくすと笑うさましか見てとれず、身体が動かない。

 暫く俺の綱引きが続いたが、いきなり後方に引っ張られてあっけなく終わった。


「あ~あ、残念。負けちゃった・・・。じゃあこれあげる」


 そう言って少女は、手を振り消えた。


「先輩!!少しは抵抗してくださいよ!!!」


「いや・・・すまん。捕まられている間、身体が動かなくてな・・・」


「もう!ホントに、しっかりしてよ!また・・・アルみたいになるかと思った・・・」


 アンは涙目で訴えてくる。

 今まで気丈に振舞っていたアンだが、こうやって見ると儚い女性だ。

 守らなければ・・・と思ってしまう。

 それ程に、この数十分の時間が大変だったと言うことだ。


「先輩!花っすよ!今度は紫っすね」


 振り向くと笑顔で、ギドが花を掴んでいた。



 その後、隣の男性用のトイレを確認したが、花は無く。

 一回の探索を終えた俺達は、二階へと階段を上り始めた。

 その途中、踊り場に嫌でも目に付く大きな鏡がある。


「こんな所に鏡?」


「ん?よく見ると、花が花瓶に飾られてるっすよ!後ろっす!」


 そのギドの言葉に後ろを振り返る。

 だが・・・花はない。花瓶すら見当たらない。


「え?なんで?」


 何度も鏡の中と、後ろを振り返るが花はない。


「もしかして・・・鏡の中に入れるとか?」


「そんなことがあるのか?」


「まぁ、あると言えばあるわ。一部の魔法道具に、鏡と鏡を繋げて行き来が出来る物があるの。でも・・・その場合は、鏡の先が映し出されるから私達の姿は映らないはず・・・」


「これはどう見ても俺達が映り込んでるな・・・と言うことはその鏡の条件には当てはまらないと言うことか・・・・」


「でも、入れるかもしれないっすよ?試してみましょうよ!」


 なんとも気軽に言うギドだ。

 だが、ギドの言うことも一理ある。

 鏡の中の花を手に入れるには、鏡に触るしか方法がないのだから・・・。


「分かった。鏡に触ってみよう」


「ちょっと待つっす!さっきから先輩ばかり危ない事を率先してるっす!ここは俺が!」


 言うなりギドは鏡に触れた。


ある兵士の一日が一日以上の長さを保っていますね・・・・。

そしてまだ半分と言う・・・。

もうしばらく、ある兵士の一日が続きます!

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