小さな二歩! 1
「ジル~そんな大声でどうしたの?」
私は敢えて、何も知りませんよ~、たいしたお願いなんてしませんよ~、と言った雰囲気を醸しつつ、ジルを迎え撃った。
そう、何事も最初の一手が今後の戦力を大きく動かすのだ!・・・・たぶん。
「え?あ・・・いや、ルーチェが倒れたって聞いたから急いでやって来たんだ」
「ふむ。ジル、心配で急ぐのは仕方が無いとしても、病人が寝ている寝室を、騒がしく開けるのはどうかと思うぞ。もう少し落ち着いたらどうだ?大体、ルーチェフルールの容体は大まかにだが、連絡をしていたはずだが?あそこまで焦る理由にはならないだろ?」
へっへーーん!怒られてやんの~。
ジルの死角になる位置で、ほくそ笑む。
ちょっと、そこのにゃんこ達?ため息つかないの!ジルには今後、大いに役に立って貰わねばならないのだから、今のうちにこちらへの攻撃力を削ぐ必要があるのだよ!
「悪かったよ、シリウス。だからそんなに怒るなよ。それよりもちょっと聞き捨てならない話をしていただろ?そっちのが気になる」
「ん?・・・・あぁ、お願いがあると言っていたなルーチェフルール。それはなんだ?」
OH!いきなり話がこっちに来たぜ!
だがしかし、落ち着けルーチェフルール。
ここで焦ってミスる訳にはいかない!
「さっき、『美味しいご飯をみんなに食べて貰いたい』って話をしていたでしょ?」
その言葉に、二人が頷き目で先を催促された。
「でね、私の言う『みんな』って言うのは、シリウスやジル、それににゃんこ達に・・・・と、とにかくお世話になっている人達も勿論、含まれているんだけれど・・・・もっと沢山の人に食べてもらいたいの。なんでか?って言うとね、この前の屋台を皆で見て回って思ったんだ。確かに美味しい物も沢山あったけど、いろんな人達が気軽に食べれて、経済効果を上げたい!って!!だから、豊穣祭で屋台を出したいの!!責任者兼監督はジルに!ってにゃんこ達も含めて一同、意見が一致しているんだけど・・・・ダメ?」
「そうか、それは良い案だ、それならば」
「ちょっと待った!!!いやいや、シリウス。ちゃんとルーチェの話を聞いてたか?途中に変な言葉が入っていたし、責任者兼監督が俺ってなんだよ?!いつ決まったの?!てか、経済効果を上げるってなに?!」
ちっ!流石、おかん。被せてきたし、細かい。
後ちょっとで、シリウスに許可を貰えるのに・・・・。黙って頷いてればいいんだよ!
「ジル、大声を出すな。ルーチェフルールの話は良いと思うが?民にも振舞いたいと言うも勿論だが、食べ物ならレシピと言った形で、地方の領地まで届く。愛し子と同じ物、愛し子が絡んでいる物を販売している王都ならいざ知れず、地方では王都までなかなか来れない者が多い。そう言った者達には嬉しいものだ」
OH!そこまでシリウスこの短時間で考えたの?凄いね!統治者!
私は純粋に自分が勝手に売り物になる位なら・・・・とか、お金儲けの事しか考えてなかったよ!
え?俗物過ぎるって?・・・・甘い!甘々の御汁粉だ!!世の中、お金が大切なの!愛だけじゃ生きていけないの!お金がないと、豊かな人生は歩めないんだよ!
「いや、うん。シリウスが考えているのは良い事だよ。ルーチェに関しては未だに愛し子って発表もされていないし、大々的に表には出たくないだろうし・・・・ただな?そんな崇高な話でも無いと思うぞ?」
「それでも、民に何か・・・・と言った志は良い事だろう。それに『大掃除』の片付けも終わる。お前が抜けても問題はないだろう」
・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・
「・・・・・分かった」
すんごっく不服そうだが、私の勝ちだ!!
よーし、これで豊穣祭までに美味しい食べ物いっぱい作るぞ!!
愛し子云々は、シリウス達に任せよう。うん。
レシピは用意はするよ!