聖獣 III 尻尾で釣りをする
居間よりも奥の雪ちゃんが嫁ぐ前に使っていた部屋に案内された。先に両親が入り、後に続いた。
部屋は真っ暗だった。
たぶん、いきなり他人に入られると警戒されるだろうから、顔だけ聖獣化した。尻尾は面倒なので出さない。というより女性の部屋に入っていきなりズボンのベルトを緩めてずり下げるなんてことはできないし。
電気をつけてもらうと、部屋の片隅に毛布をかぶった生き物が蹲っている。
毛布の端から赤毛の立派な尻尾が出ている。
触ってみたい...
そんな衝動を抑えつつ、そばに寄って毛布の上から背中に手を置いた。
さてなんて声をかけたものかな。
俺「こんばんは、もう大丈夫だよ」
「うぅー」といううなり声しか聞こえない。
困ったな。
少し立ち上がってズボンのベルトを緩めてお尻のほうだけ少しずり下げて、今度は尻尾を作り出した。銀色のりっぱな狐の尻尾だ。
まぁいっそ完全に聖獣化したほうが、違和感なくできるのだろうけど、後々の説明とかさらに面倒なので、少し変わった形になるけど我慢してもらおう。
聖獣化した彼女のちょうど頭の辺り、毛布をかぶっているけど少し隙間のあるあたりにお尻を向けて尻尾を差し出した。
中学の時の憧れの雪ちゃんに尻を向けて尻尾を振るなんて、めちゃくちゃ恥ずかしいが、こんなことしか思いつかなかった。神の記憶を使っても、思いつく方法は僕の思いとは違うものばかり、少し神の力に逆らう気がしたが、その反骨心で羞恥心を覆い隠した感じだ(^^;
少しすると尻尾が押さえつけられた。
釣れた!!
聖獣化した彼女の前足が毛布から少し出て尻尾を捉えるのが見える。
彼女は少し顔を上げて俺の尻尾を眺めているようだ。
やがて、少しずつ顔を上げてくれたが、やはりほぼ聖獣化しているようだった。
「うぅ、うぅー」
彼女は何かを訴えるかのようにうなり声をあげたが、言葉にならないそれを知り、また顔を下げようとした。
俺「大丈夫ですよ。また話したり普通に生活できるようになりますよ」
動きはぴたりと止まった。
まだ、人の言葉が通じるのであれば十分大丈夫。
それを告げると彼女は恐る恐るこちらを見た。
やっぱり聖獣化していても美人は美人、それに付け加えてもふもふのかわいらしさが何ともいえない。顔がにやけそうになったが、ぐっとこらえて。
彼女は狐の姿に聖獣化していた。赤毛のものすごく毛並みのいい狐。尻尾がとてもすてきだ。抱きつきもふもふしたい衝動を抑えるのがほんと困難だ。
まぁ彼女含めてご両親も気が気ではない様子なのでとにかくここは堪えて。
俺「いくつか、まぁ大別すると3つの方法で人の姿に戻る方法はありますが...」
俺「たぶん、そのくらい聖獣化が進むと言葉も発するのが難しいと思いますので、少し魔法のような力を使います。話そうと思うだけで伝わるようにしますので。」
俺は思わせぶりに彼女に手をかざした。
雪「翔君なの?」
俺「そうですよ。Diosマートの翔です。」
雪「戻れるの?」
俺「人の姿に戻るだけであれば、いくつか方法はあります。ただ聖獣化が消えてなくなるわけではないけど」
俺「俺も聖獣化できるけど、普段は人の姿ですからね」
雪「ところで聖獣化って?」
あっ!そうか、普通この現象がどういったものか知らないんだよな。
俺「ではまず、これから聖獣について説明するので」




