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神になった商店主  作者: 雪蓮花
不老不死
26/31

パーティー

海龍城内のドラゴンパレスホテルは高さ1000メートルにある水族館に併設されたホテルだ。海龍城のホテルとしては下層のほうに位置しているが、普段は不老不死者専用の超高級ホテル。海龍城のほぼ中心部にあり安全性ではトップレベルのアリアでリチャードなど会社の重役の居住スペースもこのエリアにある。神崎商店2号店もこのエリアの管理職が多く住む場所に出店することになっている。

さて晩餐会は夫人同伴だ。

店のほうは短期で雇ったものに任せてある。短期なので任せるのには不安があるがしょうがない。

会議が終わってホテルの部屋に戻ると雪が着替えていた。青いドレスで雪の赤毛の大きなキツネの尻尾と耳がなんともかわいらしい。リチャードが用意してくれたドレスだ。

さて俺の着替えだが、事前に伯爵領に連絡して薄い青のコートドレスを送ってもらっていた。が、パンツはリチャードに頼んで半聖獣用のものを用意してもらった。後ろにもジップがあり尻尾を出せるようになっているものだ。この衣装なんだか某夢の国の何とかランドの美女と〇獣のコスプレのようにも見えるし好みではないんだけど。今回の晩餐会は半聖獣で出ることにした。雪が半聖獣で寂しい思いをさせたくないというのではなくて、まぁそれも多少はあるかもしれないが、会議の場で3つの力があると言っている以上、その姿も見せたほうがいいのかと思い、ルドルフにも了承をもらい宮中伯エルバルト フォン ホーエンベルクとして半聖獣の姿で晩餐会へ出ることにした。かっこよく白虎?それとも白獅子?とも思ったが、聖獣国の代表ハシムもいるし、雪のこともあるのでいつも通り銀色のキツネの半聖獣になることにした。コートドレスには3人の貴族を助けたときの勲章と肩には宮中伯を賜ったときの大綬サッシュがかけられている。半聖獣になり着替えていく。雪にパンツの後ろの尻尾のジップを上げてもらう。欧州の貴族で毛色が銀色とはいえキツネなので何となく和のテイストがある。和服のほうがよかったかな。

公式の会議ではないとはいえ、各国の要人とその夫人の集まる晩餐会。晩餐会といっても正式のものではない。正式だと席次を決めなければいけないので、円卓会議であった今回では難しいのだ。立食パーティーを少し豪華にした感じだ。とても華やかな雰囲気だった。料理も最高のものが供されている。

会議とは違いみな和やかな雰囲気だ。俺が半聖獣で現れたことも、妻の雪も半聖獣であることもほとんど気に留めていないかのような雰囲気でそれぞれとの挨拶が済んでいく。

晩餐会会場の端のほうでアメリカ共和国首相顧問のジェイコブとローガンが何か話をしている。2人のそばにはパートナーの姿は見えないが、少しするとかわいらしい少女がジェイコブのそばに駆け寄っていった。それまでの険しい表情と違いにこやかな顔になった。おそらく娘さんだろう。

しばらく見ていると、こちらに気が付いて、娘と思われる少女の手を引いてこちらにやってきた。

ジェイコブ「会議ではいろいろ白熱してしまいましたが...私の娘でソフィアといいます。」

俺「こちらこそ。妻の雪です。会議で聖獣にもなれるといいましたので、妻と同じ狐の半聖獣の姿で参加させていただきました。」

ジェイコブ「奥様は本当にお美しいですね」

ジェイコブ「ところで、少し内密なお話をしてもよろしいでしょうか?」

俺「ここは少し騒がしいですが?」

ジェイコブ「ここにいるものに知れても、人類至上主義の方々以外なら問題ありませんが、本国に知れてはまずいので、できれば和やかな雰囲気でお願いしたいので」

俺「では、妻もいてもかまいませんね。」

ジェイコブ「はい、こちらも娘がいますし、その娘のことでもありますので」

話を聞くと娘さんは聖獣化してしまったらしい。今の状態は魔法具で聖獣化を強制的に抑え込んでいる状態で、長くは持たないといわれている。実際、聖獣化を強制的に魔法で止めるのは良くないことで、最近はそのことも知られるようになってきている。ジェイコブはそのことを知り何とかしたいと思い、首相に早期停戦と聖獣や魔法師の国々との国交正常化を提言したのだそうだが受け入れてもらえなかったという。今回の会議も首相側は軍事力を誇示してでも、また多少荒っぽい方法やそれこそ敵としているものの力を使ってでもぶち壊せとの命令があったのだそうだが、気が気ではなかったらしい。会議の成否にかかわらず聖獣に詳しい誰かに娘を預けて何とかしてもらいたかったいう。

俺「魔道具のほうはどちらから?」

ジェイコブ「我が国はまは公然の秘密ですがデバイアス社と裏で繋がっていますので。ただ、先ほどの会議でもそうですが、実はデバイアス社はすでに我が国に見切りをつけています。まぁ私の聖獣化を抑える魔道具をお願いした件もあるのですが、すでに我が国内の状況もかなり切迫しているのです。」

首相顧問の娘さんが聖獣化してきたのもそうだろうが、おそらく国内でも多くの人が聖獣化、不老不死化、魔法使い化しているのだろう。そのたびに投獄、処刑が繰り返されていているが、身近な人が急に変化するものだから、皆が疑心暗鬼で自分がいつなるかで不安におののいているのだそうだ。そんななかで人類至上主義がまるで宗教のように蔓延って、次々に人々を捕らえて実験に使っているのだという。それを首相も追認し奨励しているという。人類至上主義の過激派は、不老不死、聖獣、魔法使いは3大魔人として人類の敵であるとの教えを広めているというが、密告による投獄、処刑でその魔人とされる存在意外にも敵意をむき出しているという。

ジェイコブ「ホーエンベルク卿には会議では大変失礼なことを申しましたが、娘をお願いしたいのです。我が国は長く持ちません。それでも、娘が問題なければ手元に置きたいのですが、娘の状態もですし、わが国状態が予断を許さないのです。当初、聖獣国にお願いしようかとも思いましたが、卿のお力を見て、頼ることができるのはあなた様以外にないとお願いした次第です。」

俺「短期間お預かりするのは構いませんが、私も確かに肩書は貴族ではありますが、おそらく諜報部で調べてご存知かと思いますが、ただの商店主です。」

ジェイコブ「存じております。こちらのビルにも支店を出し店員も募集されているとか、できればこちらで雇っていただきながら聖獣の力についてコントロールできるようにお願いできないでしょうか?」

俺「妻と相談しますが、こちらとしては問題ないと思います。」

雪「ええ、問題ありませんよ。聖獣は何でしょうか?」

ジェイコブ「ネコ科動物と思います。早期に魔道具を使いましたので正確にはわかりませんが、家猫の可能性が80%で山猫などが15%でその他ネコ科動物が5%ぐらいの確立とデバイアス社の魔法技師が申しておりました。」

俺「では聖獣化を抑えている魔法具はネコ科共通の汎用デバイスということですね。それで、これくらい抑え込んでいる状態なら大丈夫ですよ。専用デバイスで抑え込んでいると、聖獣化コントロールができない獣化に陥ってしまう可能性が高くなりますから。」

雪「私の時ぐらいでしょうか?」

俺「いやもっと簡単だと思う。まぁきちんと診断しないといけないけど。雪ほど重篤じゃなかったら、コントロールの教授は雪にお願いしてもいいかな?」

雪「いいですよ。ソフィアちゃんよろしくね」

ジェイコブ「ありがとうございます。これで安心して私も国に帰り仕事ができます。近いうちに、わが国とっては最悪な事態ですが、あなたを含め新しい人類には最良の結果がもたらされると思います。どうか娘をよろしくお願いします。」

ジェイコブ「ソフィアもホーエンベルク卿と雪様の言うことをよく聞いて新しい世界のために働いておくれ」

ソフィア「お父様もどうか元気で」

少し悲しそうな顔をしている。

ジェイコブ「ここには目がありますので、後程、娘一人で行かせます。では」

にこやかにジェイコブは去っていった。

やはり彼の国も状況は思ったより酷いのかもしれない。

彼らにしてみたら純然たる旧人類だけの国。しかし、その内部でも、外部と同じ率で不老不死、聖獣、魔法使いが生まれ出る。疑心暗鬼で家族内で密告されたり、家族が殺されたり、外部との戦争が唯一国としての体裁を留める方法になっているのだろう。

次に挨拶を交わしたのは聖獣評議国の代表ハシムと族長代理の女性のアイシャ。

ハシムは白いライオンの聖獣で、族長代理のアイシャは一瞬黒猫?と思ったけどおそらく黒豹の聖獣だ。

アイシャ「猫と思いましたね?」

俺「いえ、猫どころではない殺気を感じましたので」

ハシム「奥方も大変美しいが、貴殿がキツネの聖獣とは珍しい。東洋ではキツネは人を化かすと聞くが」

俺「同じ聖獣からそのような指摘を受けるとは思いもよりませんでした」と笑う。

ハシム「大変失礼した」

俺「私はどのような聖獣にもなれますが、妻の姿を大変気に入っておりますのでキツネです。それに、妻がいない場でも与えらえた力の都合上銀や白にしかなれませんので、日本では神の使いといわれる白狐になることが多いのです」

ハシム「やはり神の使いであったか?」

俺「いや、彼らにそのような気はありませんから。それに、あなたの姿から察するに、あなたが2つ目の力を得るのはそう遠くないと思いますよ。」

ハシム「これは白髪と思っていたのだがな」大笑いしている。

俺「大変すばらしいお姿です。2つ目の力何が得られるかとても楽しみにしています。早く私のようなものが増えないと、変な二つ名がついてしまいますからね」

ハシム「なるほど、たくさん増えれば御使いなどと言われずに済むということだな」会場内に聞こえるように会話してまた大きく笑っている。

その後、一通り挨拶を済ませたが、人類評議会の議長スコットとデューク議員は近寄りもしなかった。彼らは人類至上主義の過激派の表の顔の部分の担当で、特にデューク議員のほうは魔法に目覚めた息子を公開処刑するほどの異常な信仰心があるとジェイコブから聞かされた。

晩餐会、おいしい料理が出たはずだが、ほとんど口にせず終わった。

雪とホテルの部屋に戻った。

雪「やっぱりすごくかっこいい。やっぱりご主人様とかだんな様と呼ばなきゃいけない感じ」

俺「では雪はお姫様だね。雪姫様って呼ばなきゃいけないかな」

翌日は海龍城の神崎商店2号店の開店準備に向かった。

店の前にはソフィアちゃんが1人で立っていた。

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