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神になった商店主  作者: 雪蓮花
不老不死
24/31

交渉会議 III

俺「ルドルフ様より発言の機会をいただきました エルバルト フォン ホーエンベルクと申します。見た目の通り日本人でもありますが、ルドルフ様のもとで宮中伯の大役を賜りこの度従者、補佐役として同行してまいりました。この度の会議の準備にも携わっております。」

たぶん俺自身もらった貴族名での自己紹介はじめてだ。

ルドルフたちがクマに襲われているときに助けたことで俺が得た爵位は伯爵で、正確には伯爵位のある所領を拝領したに過ぎなかったが、欧州の小国の独立再編の流れとルドルフの国の独立があったり、前回の三者会談で、現在は所領はそのままに宮中伯という国王の補佐官的な位をもらっていた。なのでこれらの影響で最初にもらった名前から少し変化していて極力貴族名は告げないようにしていた。よほどのことがない限り神崎翔なのだ。

俺「先ほどの襲撃に関して、我々不老不死派は事前に知ることができ、且つ襲撃者の背後関係含めて全て精査済みで証拠も揃っています。しかしながら、皆様もご存知の通り不老不死派は命を大切にすることが第一なので、このことを問題にして紛争の拡大につながることを望んではいません。」「一方で、我々がこの襲撃を察知したうえで、あえて未然に防ぐのではなくて、会場にまで侵入させて撃退したことは、一種のデモンストレーションだと思っていただいても結構です」

「我々不老不死者を害することはできないという絶対的な力の差としてです」

人類評議会の議長スコット「やはり脅しのように聞こえるが?」

俺「力の保有を脅しととらえられる懸念はありますが、我々不老不死者としては、そのように他人を不安に陥れること自体も生への不安となり、自分自身を苛める要因となります。ですから圧倒的な力といっても、楯として自分の守りだけにの防御技術に特化しています。これを脅しととらえられるのは不本意でありますし、何より言掛りととらえることもできるかと」

陸軍中将のローガン「先ほどの騎士たちや獣と思しき者は、魔法師や聖獣では?」

リチャード「彼らはロボットです。しかし、その操作は魔法師や聖獣が行っています。直接的な戦闘は行わないのは彼らの身の安全を守ることが第一であり、また魔法の精神攻撃などもフィルターで除去できるためです。」

俺「さて、ここまではルドルフ様の従者、不老不死を認めてくださる国での宮中伯としての見解ですが、ここからは別の存在として話をさせていただきます。まず先に申し上げておきたいことは私という存在は、従者や貴族、はたまた不老不死派、日本人、皆様が見た目や耳で得た情報から判断される存在としてではない、まったく別次元からのメッセージと考えていただきたい。」

...「神にでもなったつもりなのか」

どこからかそんな声が聞こえた。

俺「ご安心ください、神という存在はありません。」

聖獣評議国の代表ハシム「神という存在を明確に否定できるというのは、あなたが神?か神同等の存在だと言っているようにも聞こえるが?」

俺「まぁ実際には神同等の存在はあるわけですが、その存在は今後は何もしません。」

人類評議会の議長スコット「今後はということは今までは何かしたのか?」

俺「たったの2回だけかかわりを持ちました。1回目が地球を作ったとき。十分な知性あるものが育った段階で2回目の地球の制限解除。つまり、不老不死が現れたり、魔法が使えるようになったり、聖獣化したり、一部の物理法則が変わったりの大変化です。」

スコット「彼らは何を望んで?」

俺「何も望んでいません。まぁ同じレベルの知性体が生まれるかな?仲間が増えたらいいな。といった程度で、そもそも明確な意思や欲望を持っていません。」

俺「私はたまたま彼らのそんな明確な意思ではないけど、おおよそこうなったらいいなという程度の意識に触れる機会がありましたので、この度この会議を利用させていただきました」

俺「先ほどはメッセージをと言いましたが、囁き程度にとっていただいても結構です。」

アメリカ共和国の首相顧問ジェイコブ「神の御使いということですか?」

俺「いえ。神からはなんの命令も望みも聞いておりません。困ったことに。それがあるとむしろ私自身も助かるのですが...ですから、まぁ話だけ聞いて、戦争をやめれとまではいいませんが、人類が停滞、もしくは後退するのだけは防いでいただきたいというのが本音です。」

聖獣評議国の代表ハシム「ではたまたまあなたが神の独り言を聞いてしまい、それをこっそり我らに知らせてくれるということで聞けばよろしいのかな?」

俺「そうとらえていただいたほうが気が楽かもしれませんね。」

リチャード「神崎殿、あ失礼、ホーエンベルク卿の存在自体が、我々への啓示と考えている。不老不死派の多くはすでにホーエンベルク卿の示された方向に向かい動くことを決めている。」

俺「リチャード様はそう述べておりますが、実は方向性さえ間違わなければ、私と同じ存在になるのは難しいことではないのです。多少時間はかかりますが」

人類評議会の議長スコット「それはどういったことでしょうか?」

俺「まずは私という存在の説明からしましょう。私は不老不死でありますが、今現在の不老不死と違い意識体でも存在することが可能です。つまり肉の体を捨てることも可能です。さらに魔法も何の制約もなしに使えます。むろんどのような聖獣にでもなることが可能です。」

会議場は静まり返った。

人類評議会の議長スコット「それは神というのは?」

俺「皆様も、まぁ長生きできれば、いずれは全ての人類が地球の制限解除がなされた今、否応なしに同じようになります。50億も同じ存在がいて神と言えますか?」

俺「ただし、方向性が間違うと地球そのものが破滅します。これを彼ら、私に先行して力を授けてくれた意識体は『死産』と呼んでいました。」

俺「方向性が間違っていなければ、死産はないわけで、いずれ人類はこの力を得て地球から生まれ出でます」

デバイスアス社最高経営責任者スティーブン

「なるほど、急に不老不死者どもの会社や組織が軌道エレベーター建設に躍起になり始めたのは、このことと関係あるということだな」

俺「その通りです」

デバイスアス社最高経営責任者スティーブン

「で、具体的にどの部分の方向修正が必要なのかな?」

俺「さほど、大きくありませんが、とりあえず大幅に人口を減らす、経済を停滞させる戦争は早期に集結させて、少なくとも基礎的な足掛かりを建設し、3つの力の融合がはじまるころまでは平和的経済活動に傾注いただきたい」

デバイスアス社最高経営責任者スティーブン

「つまり軌道エレベーター建設に協力しろと?」

俺「いえ、我々同様の軌道エレベーター事業での競争相手が欲しいところです。人類として宇宙空間への足掛かり固めるための競争が必要です」

俺「先行している不老不死派がかなり有利であることは確かですが、皆様方の組織でも戦争さえなければ十分可能な事業のはずですが?」

デバイスアス社最高経営責任者スティーブン

「しかし、2社、またはそれ以上で軌道エレベーターを建設しても需要がないのでは?」

俺「リチャード様に今後の事業展開を説明していただきます」


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