世界の変化 II
さて、不老不死のお話は聖獣や魔法のような派手さがなくてつまらない。
本当は神の3つの力の中で最も重要なんだけど、その役割についてはまた後程。
不老不死者の家族の受け入れや、その後の仕事の斡旋や地域に馴染んでもらうイベントとかで雪にも手伝ってもらって、けっこうばたばた忙しくやってました。
様々な連絡や情報収集で欧州にも3か月に1回ぐらいは行かないといけなくなった。両親も不老不死になったとはいえ、地元で若返らせて働かせるわけにもいかないから、店のほうは雪にも頑張ってもらって続けている。今後向こうで報酬をもらえそうな雰囲気だから、店のほうは人を雇ってもいいかな?とも考えている。
2022年の年始、世界に大きな動きがあった。
アメリカで大規模な暴動が発生。人類至上主義と聖獣と魔法師の融和派の対立激化のせいだ。聖獣はともかく、魔法師は今まで隠れて活動して、大企業や富豪となったものが多く、聖獣もその身辺警護や労働力としてともに活動していた。魔動機構の開発で、隠れていた魔法師が表に出てくると、彼らのエリート意識と、いまだ力の現れない旧人類との軋轢は増すばかり。掲げる理念は融和派が高く、正義があるように見えたが、実際は遥かに多くの人が、人類至上主義に傾倒していた。便利な魔動機器や力の強い聖獣に仕事を奪われたと感じる人々が増加していたのだ。当初は融和派が有利だったが、魔法を暴動鎮圧に使ってしまったあたりから批判が大きくなりはじめ、人類至上主義派も対抗するために重火器を使い始めた。特に聖獣は頑健なので、一気に蒸発するぐらいの高温で焼き尽くさなければいけないのでナパームなども使用された。魔法師は詠唱が必要なので、人知れず細菌兵器や毒ガス兵器も局所的に使用されるようになったが、魔法の戦闘への使用が、これらBC兵器に使用にお墨付きを与えてしまったような形になった。
大量の移民が発生した。難民という表現をしなかったのは、それなりの財をもって計画的に国を捨てた人たちだからだ。欧州に移民した人々の多くは不老不死者たちだった。欧州はEU崩壊後、細切れの小国に分かれたが、そのかわりお互い無血で分離独立に至ったものだから、相互不可侵条約が早期に実現、緩やかな連邦国家のような状況になっていたため、移民の受け入れも受け入れ数や条件は厳しいものの比較的スムーズに行われていた。そのうち、2,3の小国が正式に不老不死者の国家を公に宣言した。
2023年アメリカ大陸では紛争というより、あきらかな戦争状態に突入していた。もはや、融和派、人類至上主義派という枠組みではなく、東西の地理的対立になっていた。人類至上主義派だった陣営もBC兵器に魔動機構を搭載し、融和派側も魔法発動に魔素半導体による増幅技術を用い強力化した魔法を使用するようになっていた。
アメリカ大陸で紛争の嵐が吹き荒れている中で、欧州は比較的安定していたが、アジアのいくつかの小国や地域、とりわけ香港は異様な景気に沸いていた。
年末、欧州で新たに独立した小国の皇太子となったルドルフと香港のとある新進の企業経営者とコンタクトをとることになった。




