胎動の時代のはじまり
子 神の子はようやく形になってきた。
父 そろそろ生まれるための準備をはじめなくては。
精霊 今度は母体も子も無事に済んでくれるといいが。
子 今度の期間設定はどのくらいに?
父 今回は期間設定しない、早くて100年、あるいは1000年とみている。緩やかに時の流れの中で神として生まれるよう神化を促す。
子 それでは、今の人類では崩壊するのでは?
精霊 すでに慢心している人類を時の流れだけに委ねるのは...
父 いや、今回は一部の人間に神への進化を与えて、徐々に神化させる方法をとる。
子 では、いよいよ我々の力を人に与えるのだな。
父 そうだ、母体である地球の求めである人類の神化のスタートに合わせて、我々の力を与えた神も同時に生まれさせる。その者に、人類を緩やかな神化へいざなう波紋を広げさせるのだ。
精霊 で、そのものの人数と資質というのは?
父 まずは一人からはじめるが、地球が人類に与える神化のほかに、そのものにも先行して同様の力を与えて、全体のバランスをとらせようと思う。地球の力だけだと、前回のように慢心した人類が滅亡しかねない。ゆえに、力をもたない極めて普通の人間から選び出そうと考えている。
子 なるほど、権力者や富豪といわれる人間であれば、その力を行使したり広めることは簡単でも、逆にバランスを欠き自滅する可能性が高いからな。ごく普通の平凡な人間が神の力を得てもおいそれとは力を行使することもできないだろう。人類の神化のなかで、自分の立ち位置を変えることなく、力を良い具合に使ってくれるかもしれぬな。
父 今回はそれを狙っておる。一つの賭けだが、その一人に残りの神化の権限も与えようと思っている。
精霊 なるほど。しかし、その偉大な仕事をこなす、ごく平凡な普通の人間をどうやって選ぶのだ?
子 平凡こそ選ぶのが難しいのではないか?
父 いや、実はすでに私の一部の力を授けた者がいるのだ。もし、そなたたちも観察してよければその者に力を授けてほしい。
子、精霊 わかりました。
子 しかし、あなたは適当に選んだ最初のひとりに与えるだけですから簡単ですが、我々があなたの与えたごく平凡な一人の人間に会って力を授ける機会を作るのはなかなか難しいのではないでしょうか?
父 いや、意外に難くない。そのものはごく平凡であるが、我々の力に対して肯定的にとらえており、おそらくそなたたちと会える機会も自然とできるように思える。まぁ、1000km単位で位置の調整は多少必要かもしれないがな。
精霊 わかりました。では、地球の人類神化の封印を解く前までにそのものを先に神化させるという方針でよろしいですね。
父 いかにも。
子 では、先行する神化のほうはそれでよいとして、地球の封印を解くスケジュールの確認を...
人類は宇宙へ生まれ出る神の子種。地球という母体から離れるための最後の封印が解かれて人が神へと成長する胎動の時代がはじまった。