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同居人シリーズ

同居人シリーズ「空想通夜」

作者: なみのり

私はちょっとした罪滅ぼしのために練習中の曲を奏でる。ピアノの荘厳な響きとゆとりのある独特のメロディーが部屋に響く。暫く演奏を続けていると、彼が出てきた。

「こんな時間に演奏するとご近所迷惑になるよ。」

彼が珍しくまともなことを言う。私は軽く笑って

「こんな優しい音楽を聞いて、気を悪くする人のほうがおかしいのよ。」と、彼のようなことを言って返してやった。

「…分かった。でもとりあえず止めよう。「おかしい」人が来たら困るだろう?」

彼も調子を取り戻してきたようだ。

「ビール残ってたっけ?」

自分から酒とは珍しい。いつもは私に誘われてからはじめは嫌そうに、でもだんだん楽しそうに飲むのに。こう表現すると、まるで初めて聞く音楽に対する心みたいだ。それを告げたら彼は笑うだろうか?残ってるわよ、と告げる。私はそれとなく聞いてみる。

「…ねえ…まだ怒ってる?」

「…怒ってないよ。また代わりを手に入れればいいだけだ。」

また彼は彼らしくないことを言う。

彼が差し出した缶ビールを受け取りながら、私は少し不安になる。彼はあれと一緒に個性を無くしたのだろうか?

次第に彼の酒が廻ってきて、(彼はすぐに酔うのだ。)ぽつぽつと呟く。

「あれとは昔から一緒だったから…でも一緒に暮らしている人に大事ってことを伝えてなかった僕が悪いんだよ。」

始まった。彼はいつもすぐに僕が悪い、僕が悪い、と言うのだ。彼のそんなところが、私は大嫌いだ。

「だから、葬式をやろうと思うんだ。」

彼は大真面目な顔で宣言する。

「葬式?でもあれはもうごみ処理場で派手に燃やされてるわよ?灰でも貰ってくるの?」

「いいね、それ。じゃあ明日朝イチでごみ処理場の灰を貰ってきて、昼前に葬式を執り行う。場所は近所の空き地。」

「ふざけてるのよね?」

彼はゆっくりと首を振る。

「ちょっと灰を埋めて、黙祷するだけだよ。もちろん君にも出てもらうからね。加害者が葬式で罪を償うなんて素敵だろ?根暗な文学みたいだ。あれも喜ぶ。」

彼は楽しそうに笑った。

「嫌。私は嫌よ。私まで変人のレッテルを貼られるじゃない。」

「一緒に式に出てくれたら昼は奢るよ。高いところでもいい。今日は通夜だ。盛大に飲もう。」

結局私達は互いに酔い潰れるまで安い缶ビールを飲んだ。彼は悲しみと楽しみを同化した表情で眠っていた。私はそれを見て嬉しくなった。

やはりSF…か…?


他にも短編小説を掲載しています!

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お恥ずかしながら文章の仕事を目指しています。先はまだまだまだ遠いですが、一生懸命1歩ずつ頑張りたいと思います。アドバイス等をどしどし下さると助かります。

コメントも一言貰えるだけでモチベーションが凄く上がるので、お暇であればお気軽にお願いします。

毎日1話以上の投稿を目指していて、今日で12日目、今日2個目の投稿です。

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