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追憶のかけら  作者: 文月 葉生
2/2

別離

僕は、フランクを観察している

勢いで剣を請う形になったが、どういう人物なのかはよく解らない

僕に対しても決して好意的ではない

それはそうだろう、フランクにとっては、ある日突然お荷物が舞い込んできた状況なのだ

僕が子供だったので、仕方なく旅に同行させてもらって剣もお情けで教えて貰っている

ただし、僕が根をあげて逃げ出しても構わないと言ったぐらいに、強烈で厳しい、寧ろ逃げ出してほしいと

思っているかの様にも思われる程、過酷に思う事も屡々なのだ


移動の際は、フランクは馬で僕は、ランニングだ、当然遅くなったら容赦なく罵声が飛ぶ。

へこたれたら多分おいて行かれるだろう

そんな事を考えながら走っていたら

デコボコ道に蹴躓いてずっこけた。


「オラアー!何してんだよ!」


馬を降りてズンズンと近ずいてきたフランク。殴られる!思わず目を瞑ったら

僕のズボンをたくし上げ、膝の傷を水で流し、布を破ってきつく縛ってくれた

僕は、驚きで目を見張って、フランクを見ていた。


「何見てんだ、ほら行くぞ。」


「だって、大切な水を、馬鹿じゃないか。。」


僕はフランクの思いもかけない行動に戸惑い赤面してそう言ったきり、照れを隠して、また走りだした。

屋敷から追い出された以降は、他人からは理不尽な扱いを受けてきた、なのでこの状況に戸惑ってしまう


旅では水は貴重な物だって事位知っている。

いつ補給出来るか解らない。

其れを惜しげもなく、傷を洗い流してくれたんだ。

時々フランクが解らなくなる。


「よし!休憩だ火を起せ。」


僕は火を起す為、枯れ草を集めていた。

近くの草むらがガサガサと動く、フランクだと思っていた

ふと、異様な雰囲気に息を呑んだ

低い唸り声と共に黒い何かがいる、緊張が走った。

おそらく獣、下手に動けば勝負は一瞬にして僕に勝ち目は全く無い

フランクは何処に?  声を上げると恐らく飛び掛かって来るに違いない

周りの状況を把握し草むらを睨み後ずさりしながら頭は起死回生を想定しフル回転していた

草むらから僅かに姿が見えた!其れはまさに小ぶりではあるが肉食獣そのもの

獰猛に牙をむき、威嚇しながらまさに臨戦態勢の構えに入っている

手に持っているのは薪にしようと集めていた枝だった。

目を逸らせない、睨みながら動きやすい場所にと少しずつ移動する、嫌な汗が身体を伝う

獣は唸りながらジリジリと間合いを詰めて来る

僕は2本の枝を、構えた。。。「来る!」


飛びかかって来た瞬間、身体を捻って振り下ろした枝はビシッっと獣の頭部を叩いた

武器が枝なので致命傷には至らない

其のことが尚更恐怖を増す。

すかさず、もう1本で首元めがけ突き刺した、「ギャンッ!!」と一声泣いて其れは草むらに消えて行った

。。。助かった??

腰が砕けヘナヘナとその場に座り込んでしまった。

本当にヤバかった、冷汗を拭っていると

其処にフランクが笑みを浮べどうした?とやって来た。

何やらその態度が胡散臭い

何でもないと、埃を払いながら立上り、それ以上奥へは行かず手前で

枯草を集めて焚火を燃やした。



簡単な食事を済ませ、毎日の日課となっていた腕立て伏せ

100回、スクワット100回、素振り100回をこなす。


其れを1日3セット行う、ジョギングしながらふと思った、あれほど辛かったトレーニングが

今は難なく行えるようになっている。習うより慣れろと言ったところか等と思っていると


突然、フランクが 「おい!何かが起こっている、先に行くぞ。」


フランクは馬に鞭を打ち、あっと言う間に走り去った

前方には砂埃が立ち、数名が入り乱れて戦っている

僕は、必死に後を追った


商人風の馬車に群がる、10名程の馬に乗った盗賊とおぼしき男達と

4名の警護の男達は、圧倒的に不利な戦いに苦戦を強いられていた

フランクが馬上から剣を大上段に構え大声を上げながら突き進んでいく

怒号と金属音が激しくぶつかり合う



自分の足がもどかしいと思いながら走り、フランクの動きをを目で追っていた

初めて見るフランクの流れる様な剣捌き、強い! 強い! 強い!

見る見るうちにバッタバッタと盗賊をなぎ倒して行く

その数は直ぐに半数にも満く減ってしまう


「す、すげえ!!!!」


突然の援軍に、面食らった盗賊の頭は、撤退を決め込んだ

4名の警護の男には深手を負った者もいる

馬車からは2名の商人と1人の女の子がガタガタと震えながら降りてきて

フランクに深々とお礼を言っている処に、息を切らしやっとたどり着いた


僕とフランクは負傷した人の手当を行った後、商人の一行と別れ先を急いだ

野営を何日か繰り返し、やっと街に辿りつく

人の活気が満ちた街並みに安堵と笑みが零れる

先ずは宿を取って身体を休める事にした。

久しぶりの風呂が有りがたい、ゆっくり入って部屋に帰ると、見知らぬ人が。。。


「誰だ!! この部屋は僕達の。」と言いかけた


「俺だよ、フランクだ。」


「えええええええ????」


髭を剃って、髪を整え、清潔なシャツを纏ったその男は。。


あの髭モジャラなおじさんがフランクだったとは、

ブラウンの整えられた髪と明るいブルーの瞳、通った鼻筋、整った眉毛

何処からどう見ても別人と云うかギャップに驚愕の色を隠せなかった。



フランクは、お前こそ良い男、いや良いお子様だよ、と云いニヤリと笑った


「僕は、いや! 俺はお子様じゃない!もう立派な男だ!」と


口を尖らせて、抗議すれば、解った、解った、飯食いに行こうぜと

云われ口元が緩んでしまう

2人して酒場兼食事処に行くと、皆の視線が集中する

数人の女の人が、熱い視線を向けている。

僕、いや俺は、久方振りのご馳走に食らいついていた。

フランクは、酒を飲みながら、ご機嫌な様子


「お前、この後どうする気だ?」


其れは、二人の旅が終了を意味していた。


寂しさを隠しきれず「俺は、年を偽っで仕事を探す」と答えた


「そうか、ならまずその手の焼印を消さなくてはな。」


「どうしたら消えるの?」


「入墨を入れるかだな。」まぁ先でいいがな。


「フランクに一つ聞いておきたい事が有る。」


「何だい?」


「どうして俺と一緒に旅をしてくれて此処まで連れて来てくれたの?」


「そうだなぁ~、強いて言えばアンドリューお前の目だな。」


「目?」


「そうだ、お前の目だ、何か引きこむ様な、お前の目の引力だ。」そう言って俺の顔を

覗きこんだ。俺は反射的に身を引いたが、顔に熱が籠った。其れを誤魔化す様に尋ねた。


「フランクは、此れからどうするの?」


「俺は次の旅に出る。」


「フランクのラストネームを教えてまだ授業料も払ってないよ?」


「フランク・ボルドー・ミハンズだ。またそのうちに逢えるさ、それより今から娼館に行く

そうだ、アンドリューお前の門出に筆卸しをしよう。」


と俺の首根っこを掴んで、引っ張って行く


俺はあたふたしながら、「ちょっと待って、待って俺まだ子供!だし!」フランクはニヤリと悪戯っぽく

苦笑いをして


「おや?さっき、立派な男だと言ったのは、何処のどいつだ?」


「ぐう~~。。」


「安心しろ、いいお姉ちゃんを付けて貰ってやる。」


悲鳴を上げ、ジタバタする俺に有無を言わせず、引っ張って行かれた。

その後俺は、今まで味わったことのない妖艶な色香と手ほどきに朝までみっちり翻弄され

昼すぎまで、泥の様に眠りこけていて、フランクが旅発った事も知らなかった。





読んで頂き有難うございます。不定期投稿になりますが

どうか宜しくお願いします。

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