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追憶のかけら  作者: 文月 葉生
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追放

過酷な運命のアンドリュー

幼いながらも其れなりに学び処世術を身につけて行きます。

  ガチャン、ギー と重い鉄の扉が開いた

眼前に広がる荒野には、何処までも続く、二本の馬車の輪立ちの跡

普通なら、初めて見る荒野にワクワクするだろうが僕の心は不安で一杯だった。


ドン!と勢いよく背中を付き飛ばされ

体勢を崩し、つんのめって数歩よろけドサッと前に倒れて両手を付いた

「おぼっちゃま!おぼっちゃま!。」

ばあやが叫んでいる。

兵士が取り上げようとしたものを必死で取り返そうと尚も縋りつき懇願し泣き叫んでいる

「坊ちゃまに必要な物です、後生です、後生です、どうか、あの子の為にこれだけは許して下さい。」

僕は呆然と座り込んだまま、振り向く事も出来ず、大地に爪を立てていた。

そのやり取りを聞いた街の人達が、わらわらと集まって、まだ子供じゃないか、それ位許してやれよ。可哀想にと口々に言い始めた

其れを聞いた兵士が舌打ちをして、僕の後ろに其れを投げてよこした


直ぐに鉄の扉は、ギーと鈍い音を出しながら閉じられていく

「おぼっちゃま!おぼっちゃま!」ばあやの悲痛な泣き叫ぶ声を聞きながら

暫くの間動く事も出来なかった。


握りしめた手には砂が掴まれている。

サラサラと手から零れ落ちる砂を虚しく眺めた

その手の甲には、痛々しい焼印がまだ赤く腫れあがっていた

その手にポタリと雫が落ちた。

堪え切れなかった涙が幾筋も頬を伝い、嗚咽が止まらない。

今日だけ、今日だけだ・・・・・・

泣くのは、今日が最後だと強く自分に云い聞かせ歯を食いしばった。



ぐいっと腕で顔を拭いて空を見上げる

こんな日なのに空は、抜けるように青く澄み切っている



僕はのろのろと起き上がり、袋を手繰り寄せる、その横には大切に何重にも布で包まれた

父の剣があった。追放される僕に、ばあやが命がけで渡してくれたものだ。


僕の名はアンドリュー・ローラン・サラソハンズ 9歳


この王国には、もはや僕の居場所は何処にも無い。

父の剣・・・・・僕には大きすぎて、包んでいた布で背中に括り付けた


僕は歩きはじめる

ふらふらと、あてもない道を、1人だ・・・・・・

この輪立ちの道を歩いていけば、きっと何処かの街に着けるはず

でも、何処まで行ったら次の王都に行けるのだろうか

こんなに長い道のりを歩いた事などなかった。

振り返るともはや、サンライズ王国はとうに見えなくなっていた。

未練など是ぽっちもない、あるとすれば、フランばあや、執事やメイドのミレ達

思いだすとまたじわりと涙が滲みそうになるが、歯を食いしばって耐えた


道端の小動物や虫などが荒れた心を癒やしてくれ心が和んだ

足が痛くなって腰を下して

ばあやが用意してくれた袋の中をゴソゴソと探す

色んな物が入っていたが

まず目に飛び込んできたのは、パン4個だった。

口いっぱいに頬張り、水で流し込んだ。

ふと気が付くと、辺りは陽が落ち始めている

急に心細くなってきた

夜になれば真っ暗闇になると思うと急に怖くなってきた

どうしたらいいんだろう

街どころか、辺りはまだ平原で遠くには山や黒ぐろとした森が広がっているのが見える

怖い! 怖い! 怖い! 怖い!

夜の帳が下りはじめたのだ


どうしよう。 どうしよう。 どうしたらいいんだろう?

何処か安全な処を、木の上が安全なのか?必死で考える

でも道から外れたら、もはや迷子、野たれ死ぬしかない

泣きたくなる心を叱責し尚も安全な場所を求めて進む

と!!! 微か向こうに明かりが見えた!!!

人の気配だ、助かった、飛び上がらんばかりに歩を進める




人は見当たらないが、焚火にほっとした、串に刺した肉らしいものがジュウジュウと音を出して

肉汁が滴り落ちて美味しそうな匂いが鼻をくすぐりゴクリと生唾を飲み込んだ

と。その時


「動くな!何者だ!」と剣を向けられた

低い声に恐怖で身体が震え咄嗟のことに、目を剝いて固まった。

「他の者は何処だ!」


焚火に照らされた顔は、髭ずらで怖い、答えようとした声は喉の奥で掠れて詰ってしまい

フルフルと首を振ることしか出来なかった。

その男は訝しげに暫く僕を観察するように見ていたが剣を引く

緊張が緩みフーっと息を吐いてその場にへたりと座り込んだ


「ぼうず、1人か?名前は?」と聞かれ

「アンドリューです、街まで連れて行って下さい。」と、掠れた声で答えた

彼は呆れた様な顔をして

「俺は、子供は嫌いだ、我儘で直ぐに泣く。」


この人は面倒な事は嫌なのだろう、でも此処で突き放されたら

あの闇夜に放り出されてしまう。あの恐怖は口では言い表せない

思わず、立ち上がって両手をグッと握りしめ、絶叫していた


「僕は我儘は云いません! 泣かないと誓いました!」


唖然と見ていた男が、解った座れと、自分の横をポンポンと叩いたのでおずおずと横に行き

膝を抱えて焚火の前で並んで座った時は安堵のため息を漏らした


肉汁が滴る串を目の前に突き出され、食え!腹が減ってるんだろうと

僕の頭をクシャと撫ぜながら男が笑った。

その男の人懐っこい笑顔に、強張った心が和んでいく

はふはふしながら串にガッつく僕に

逃げねえから落ち着いて食えと笑った、腹が落ち着くと

チロチロと燃える焚火を見ていたら何時しか眠ってしまった様だった。





遮る物が無い朝日の中で目覚めた

周りを見ると男はいなかった

馬や荷物はあるので近くには居るのだろう

火が消えそうになっていたので近くにあった枝を加えた

炎の勢いを増そうとフーフーと吹く、煙が目に入って涙目に成っていたら


男が戻ってきた

僕を見ると誇らしそうに獲物を高く掲げ笑っている、うさぎだった。


ウゲー捌く処は見れない。。。。。

しかし焼いた肉は美味しかった。男は僕の手の焼印を見ただろうに何も言わなかった。

その優しさに今だけは甘えたい


「あのーおじさん。」

「おい! おじさんは無いだろう、フランクだ。フランクと呼べ。」


フランクは背が高く、引き絞まった筋肉質な身体で武人と言った処だろうか

髪はブラウンで瞳は明るいブルー眉毛は太く、鼻筋は通っている

髭はもっさりとしているが、きちんとすれば多分美男子だろう

腰には帯剣しており、飛ぶ鳥も落とすほど弓の腕前もいいとは本人の談だ。

僕を受け入れ一緒に旅をしてくれる様になったこの機会を無駄にはしない

そしていずれサンライズ王国に戻るんだ、その為には今は力を付ける事だ



「フランク、僕に剣を教えて下さい。」


「んあ?」

気のない返事に必死で拝み倒す

「僕は泣きません! へこたれません! どうかお願いします!」

「俺の授業料は高いのだぞ? お前に何が有るんだ?」

「今の僕には、何もありません、僕は変わります、将来必ずフランクの為になります。」

そう断言するとフランクに大笑いをされた

「呆れたなぁ、俺に出世払いと言ったのはお前が初めてだ。

よし!いいだろう、出世払いは10倍位で返して貰うぞ!

其れが出来なければ、一生俺の下で飼い殺しだ。」

あははははは、こりゃいいわ。と笑いながら物騒な事を言っている。






フランクの指導は厳しい

僕が「参った。」と言わない限り、容赦なく叩きつける剣だ。

フランク曰く、戦いならば悠長なことは言って居れず

極限状態からどう勝機を作っていくか考えろと常簀ね怒鳴られ続けた

へこたれない。泣かないと言った以上、身体がボロボロに成るまで喰らい付いてやる





喧嘩のように怒鳴りあっている声に驚き扉からそっと覗く

「まさかあのセバスが、くそ!」と、あの穏やかな父上が怒りで震えている

そこに兵士が雪崩込んできた、

「アンドリュー!! アンドリュー!!逃げて」母上の絶叫が響く。


「父上。!!! 母上。!!!」

気が付けば汗でびっしょりだった。


どうやら、無我夢中で戦い倒れた処を尚も打ち込んでくるフランクを交わしながら

剣を受けていて気絶したらしい。なんてこった。。。。


酷く魘されていたぞと、お茶を差し出しすフランクだが

彼は其れ以上は何も聞かないでくれているのでありがたい

まだ今は話す気にはなれない、

只管強くなる。強くなって追い詰めてやる。真相を明らかにして

必ず殺す!! 目は遥かかなたを見据えていた。


「セバス」と言っていたな、此の名は生涯忘れない






フランク、以外に良い人だったりします?



読んで頂き有難うございます。

誤字、脱字、指摘等 なんでもけっこうです

書いていただければ励みに勉強になります。


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