表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/90

4 麗華の部屋で

 赤沼家の次女、麗華は今年二十歳になる。東京の大学に通っているが、今は冬休みということで、このような辺鄙なところにある赤沼家の本邸に帰ってきているのである。

「それで、お父さん、どうなのよ」

「知りませんよ。具合悪いと言って、あれから部屋に閉じこもりっきりよ。変に神経質になっていて、稲山しか部屋に入れようとしないのよ。あの人、ついにどうかしたんじゃないかしら」

 早苗夫人は日頃、上品ぶっているが、感情的になると、すぐに化けの皮が剥がれる。非常に下品な口ぶりである。

「お医者さんは呼ばないの?」

「あの人が呼ぶなっていうのよ。もう、なにがなんだかわたしには分からないわ」

「稲山はなんて言ってるのよ」

「何も言ってませんよ。あの人も、変に押し黙っちゃって、一体、何が起こってるんだか、わたしには一切教えてくれないのよ」

「そうね。でも、お正月には、お兄さんたち帰ってくるでしょう。その時、お兄さんたちから、お父さんに事情を聞いてもらったら?」

「お正月まであんな調子だったら、あの人、その頃には死んでますよ」

 早苗夫人は、いかにも腹立たしそうに悪口を言った。

 麗華は少し考えて、やっぱり言わなければならないか、と思い切って、口を開いた。

「お姉ちゃんのことじゃない?」

「何?」

「琴音ちゃんのことじゃないの?」

 早苗夫人は、少しばかり躊躇した。 しかし、早苗夫人は、

「わたしの前であの子の名前を出さないでちょうだい。あの子はわたしとは関係のない人よ」

 早苗夫人は、途端に居心地が悪くなったらしく、用事があると言って、麗華の部屋を出て行った。

 麗華はその後ろ姿を見届けて、そっと呟いた。

「それでも、わたしにとってはやっぱりお姉ちゃんだったわ……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ