表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/90

1 稲山執事が手紙を見つける

 夢学無岳様、成宮りん様、深森様から頂いた羽黒祐介の挿絵になります。※「名探偵 羽黒祐介の推理」「紫雲学園の殺人」「五色村の悲劇」より


 挿絵(By みてみん)


 挿絵(By みてみん)


 挿絵(By みてみん)

 疑いを知らない無垢な眼差しが、わたしを見上げた。

「お城の地下室に眠っているのは誰なの?」

 そんな、あどけない問いかけにわたしは笑顔で答えた。

「あれはお人形だよ」


            *


 赤沼(あかぬま)家の邸宅は、古めかしいヨーロッパの城郭のようだった。少しばかり小高い丘の上にあって、時に夕日に照らされて、朦朧(もうろう)と光輝くその姿は格別に美しかった。だが、この邸宅のバルコニーの鉄柵から、令嬢の琴音(ことね)が首をくくって、(むくろ)(さら)したその日から、赤沼家には不穏な空気が立ちこめることとなった。

 琴音が首をくくった理由は、誰にもわからなかった。誰もが、彼女の運命は順風満帆だと思っていたのだから。琴音はその年、幸せな結婚をすることが決まっていた。誰もが羨む結婚であった。琴音の婚約者は、指折りの名家の御子息であった。

 赤沼家の令嬢の死をめぐって、さまざまな憶測が飛び交った。その結果、赤沼家の内部でさまざまな衝突が起こった。一族が長年繕ってきた気品も何もかもが、失われていくように思われた。


            *


 そんなある朝のこと。

 執事の稲山(いなやま)が、赤沼家の邸宅の門に現れた。特に理由らしい理由もなかった。稲山といったら、この頃、邸宅の裏山の散歩こそ、健康にもっとも良いものという確信を得るに至ったのである。

 稲山は、門から出た瞬間、妙な手紙が足下にあることに気がついた。

「なんじゃこれは……」

 稲山は、腰を気遣いながら、しゃがんで手紙を手にした。

「何が書いてあると言うのじゃ…….」

 独り言を言いながら、手紙をひっくり返すも、そこには差出人の名前はなかった。

 あきらかに怪しげな代物と感じながら、これを奥様やご主人様に見せるべきか迷った。むしろ、怪しげなものであれば、人目に触れず、自分で処理してしまった方がよいのではないか。

 稲山はそんなことを、小声で呪文のように唱えながら、もうすでに封を破いて、手紙を開き始めていた。

「おおっ……!」

 稲山は、手紙をひらいて、その内容を一目見て、思わず唸り声を上げた。

 なぜならば、そこに記されていたのものは……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ