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レグプール空襲 ④

 お待たせしました。広島方面へ出かけたり、有志企画架空戦記創作大会向け作品との兼ね合いなどで遅くなりました。久々の投稿ですが、楽しんでいただければ幸いです。

 先陣を切ってイアルト基地に突入してきたのは、日本海軍の95式艦上戦闘機の集団であった。彼らは基地突入直前に、2騎の翼竜を発見したが、高度面で優位だったこと、加えて数の暴力でたちまちそれらを撃破した。そして何ら妨害を受けることなく基地上空に到達すると、今度は滑走場周辺で立ち往生している翼竜目がけて銃撃を開始した。


「喰らえ!」


 一番槍を果たした空母「土佐」戦闘機隊所属(この時点では母艦と航空隊の空地分離がなされておらず、パイロットは母艦への直接配備)の守山敏夫一等空曹は、機銃の発射把抦を思いっきり引く。それとともに、機首に装備された7,7mm機銃が発射音を奏でて銃弾を吐き出す。


 弾道を示す曳光弾が地上で身動きが取れなくなっている翼竜に吸い込まれていく。


 厚い鱗に覆われた翼竜の上部にどこまで打撃を与えられるかはわからないが、それでも相手は地上の静止目標である以上、それなりに撃ち込んだ筈だ。撃破しにくいとはいえ、相手も生き物。れないことはない。


 とは言え、地面に衝突するわけにもいかないので、守山はある程度のところで機首を起こす。しかし、そこで掃射を止めず、上昇しつつも手近な建物にも銃撃を加え続ける。


 同じように、彼の部下である分隊の2機も地上の翼竜や施設目がけて激しい機銃掃射を加える。


「悪いが空には飛ばさせん!」


 空中に上がれば手強い戦闘機も、地面においては単なる射爆撃の目標としかならない。それは翼竜も同じである。空中では異世界の戦闘機とタメを貼れる翼竜も、地上にいる限りは鈍重な的となり、一方的に銃弾を浴びるしかない。


 7,7mm機銃程度では一撃で撃破するのはかなり難しいが、それでも無防備な御者を射殺すれば、それだけでその翼竜は戦闘能力を喪失する。さらに、驚いてバランスを崩して転んで骨折でもすれば、やはりもはや戦力としてカウントできなくなる。


 もちろん、それ以外の人員や基地施設への銃撃も爆撃ほどではないが、徐々にその戦力を削っていくこととなる。


「よし!こいつでも充分やれるぞ!」


 今まさに翼竜を1騎撃ち倒した守山は、この機体でも充分やれると確信した。


 95式艦上戦闘機は、1世代前の90式艦上戦闘機の改良型で、発動機の換装などの改良で速度は向上したが、それでもスタイルは古臭い複葉固定脚機だ。米海軍の方は複葉とは言え引き込み脚を採用しているなど、世界の戦闘機が次々と進化する中で、少しばかり遅れているのは否めなかった。


 しかし、戦闘機隊の機銃掃射は、派手な戦果は期待できないが、前座としての役目は十二分に果たせていた。それは95式艦戦が、戦場に於て使える機体であるという面目を保ったことを示していた。


 そうして一撃目を決めた戦闘機隊に引き続いて、艦爆と艦攻の編隊も突入してくる。「土佐」から発進した攻撃隊の内、半分は飛行場を、残る半分は近くの物資集積基地を攻撃する手筈になっていた。


「爆撃用意!」


 総隊長の辺見寛一郎少佐が乗り込んだ機を含めた92式艦上攻撃機の編隊は、高度1500mを綺麗なV字編隊を描きながら、飛行場上空へと進入する。


 出撃前の計画では、艦攻隊は敵の竜が使う滑走路を狙うこととなっていた。滑走路を破壊すれば、敵の基地は当分使用不能となるとの判断からだった。


 急降下の出来ない艦攻隊が行う爆撃法は、水平に飛行しながら爆弾を投下する水平爆撃だ。今回採る爆撃法は、先頭を飛ぶ指揮官機が照準をつけ、それを合図に他機も一斉に投下し、目標へ集中的に爆弾を降らせる。


 もちろん、指揮官機が目標を外せば他機の爆弾も全て外れてしまう。そのため、指揮官機には隊内でも随一の腕を誇る爆撃手が乗り込んでいた。


「頼むぞ!内原空曹長!」


 辺見はその隊内随一の腕を持つ爆撃手、内原卓実空曹長に全てを託す。彼は下向きに設置された照準器で、狙いをつける。


「わかっています・・・右3度!・・・チョイ左!・・・ヨーソロー・・・ヨーソロー・・・用意!」


 内原の用意の言葉とともに、辺見は旗を構える。


「撃て!」


 内原が投下レバーを引くとともに、辺見は投下を示す旗を振る。途端に、まず辺見機から。そして他の機も続々と胴体下の250kg爆弾を投下していく。


 投下が終わると、辺見は双眼鏡で戦果を確認する。


「・・・よし!命中!」


 滑走路に次々と爆弾の炸裂を示す閃光がピカピカと起きる。


「隊長!艦爆隊もやったようです!」


「おう!」


 操縦の橋立光輝一空曹の弾んだ声が伝声管越しに伝わる。


 見れば、今しも94式艦上爆撃機が急降下爆撃を敢行しているところであった。低空まで急降下するため、機体にも搭乗員にも負担が大きい急降下爆撃であるが、目標に向かって突っ込むため、水平爆撃よりも高い命中率を出せるメリットがあった。


 事実、突入した艦爆隊は格納庫をはじめとする基地の施設に次々とピンポイントで、爆弾の雨を降らせていた。


「作戦成功だな」


 壊滅とまではいかないが、少なくともしばらくは翼竜の運用が不可能な程度には打撃を与えたようだった。初の空母艦載機による大規模空襲が、戦史上成功した瞬間であった。


 辺見はその貴重な様子を少しでも記録するべく、機内に載せてきた航空カメラで撮影を開始した。




「滑走場に敵の飛行機械が投下した爆弾らしき物が命中!滑走場使用不能です!」


「第2竜舎と第1士官兵舎に火災発生!」


 最初の銃撃、さらにそれに続く爆撃によってイアルト基地の被害は時を追うごとに大きくなっていった。


 指揮所に基地内の被害情報が次々と入る中、司令のゲーク大佐は指揮を執り続けていた。


「施設の消火や復旧は後回しにしろ!それよりも、兵員の退避を急げ!」


 だがそんな彼に、ザーロが顔を蒼くしながら詰め寄る。


「司令官、ケガの手当てを!」


 ゲークは頭を切ったのか、そこから何か所も血が流れだし、顔中血だらけであった。その痛々しい姿を見て、通信士官のザーロは持っていたハンカチを押し当てて止血する。


 だがゲークは彼女からハンカチを取り上げて自分の手で当てると、言い放つ。


「私に構わず、今は君の仕事をやりたまえ。兵を退避させることの方が先だ!全員退避の命令を放ち続けろ!こちらには反撃の手段がほとんどないんだからな!」


 基本的に魔法に頼っているモラドア軍にとって、対空戦闘は至難の業だ。本来空から来た敵には、事前に迎撃騎を出して迎撃することになっている。地上からの対空砲火は対空用の火器がないため、あとは魔術師による攻撃魔法を空に撃ちあげる程度だ。それにしても、せいぜい数騎程度の相手をするのが前提となる戦術だ。


 現在のように、数十騎の敵を地上から迎撃する手段などほぼ無きに等しい。こうなると、できるのは地上を逃げ回って、ひたすら敵が立ち去るのを待つしかない。


 そして竜騎士出身であるゲーク自身が、そのことを良く弁えていた。


 その時、敵の飛行機械のエンジン音と風切り音が急速に接近してきた。


「伏せろ!」


 それが急降下音と察知した彼は、室内の人間に伏せるよう叫んだ。爆風が壊れた窓から吹き荒れ、室内の物が吹き飛び、ただでさえ損傷していた司令部の建物が悲鳴を上げる。天井から崩れた破片が落ち、柱や梁が軋む。


「ケホ!ケホ!・・・司令、御無事ですか?」


 舞い上がった埃に咳き込みながら、ザーロは司令官を探す。


「ああ、何とかな。中尉、司令部は壊滅だ。脱出したまえ」


 司令部は一瞬で惨憺たる有様になっていた。先ほどまでの銃撃や爆撃である程度被害を受けていたが、今度のは着弾が近かったのか、最悪の被害を被っていた。建物は辛うじて倒壊しなかったが、室内中一面吹き飛んだ破片や瓦礫だらけで、置かれていた備品も散乱している。


 そして伏せるのが遅れたのだろう、壁際に吹き飛ばされ絶命している兵士や、運悪く倒れた物の下敷きになっている兵士も見えた。いずれも即死だ。


 生き残っている者も、大なり小なりケガをしているようで、軽傷の者が重傷の者を外に連れ出していた。


 ザーロは奇跡的に埃まみれになりながらも、傷一つ負っていなかったが、司令部の機能が喪失したのは一目瞭然であった。


「司令も行きましょう!」


「ああ、そうするよ。焼け死ぬのはごめんだからね」


 火災が発生しているのか、焦げ臭いにおいが立ち込め始めていた。二人はボロボロになった司令部から何とか脱出する。


「手ひどくやられたな」


 安全な所まで来たところで、変わり果てた基地の様子を見回したゲークは悔し交じりの声で口にする。


「迎撃が間に合っていればこんなことには」


 傍らのザーロも悔しくて仕方がない。結果的にゲークの命令が正しかったことになる。もっと早く連絡が行き交えば、ここまでヒドイ結果にはならなかったかもしれない。


「今さら何を言っても遅い。後は味方の被害が少しでも少ないことを祈るところだが、この状況じゃ翼竜は全滅かもしれん」


「空襲前に上がった竜騎士が何騎かいたようですけど」


 事故により滑走路が塞がる前、定時哨戒グループとその予備と後備、さらに2~3騎程度は離陸したようにザーロは記憶していた。


「空へ上がっても、滑走場が使用不能なら近くの草原にでも不時着するしかない。そうなると、脚を痛めるかもしれん」


 滑走場が整備されるのを見てもわかるように、翼竜は離着陸にある程度の広さの平地が必要であった。本来野生種の竜はそこまでの制約はないのだが、スピードや人慣れのために品種改良された戦闘用の翼竜ではそうした問題を孕んでいた。


 そうした欠点を、自身も竜騎士出身であるだけに、ゲークは熟知していた。


「あとは竜騎士たちの判断で近隣の基地へ退避するか、上手い場所を見つけて不時着してくれるのを祈るだけだな・・・そう言えば、先日到着した新鋭竜もダメだったかね?」


「さあ?どこまで発進できたか正確に把握していませんから」


 品種改良に成功してようやく数が揃い始めた最新種の翼竜。先日実戦でのテストのために最前線へ向かう予定だったそれらが、イアルト基地にも到着していた。何もなければ、この基地で最終調整を行って南下する筈だったのだが。


「そうか・・・よし、敵機も去ったようだ。少尉、念話を使って退避した兵隊を呼び戻せ。基地内の被害状況確認に、負傷者の収容。火災の消火・・・やることは山ほどあるぞ」


「了解です。司令官」


 二人は新鋭竜のことから頭を切り替え、ようやく空襲が終わった基地の状況確認に動き始めた。


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