第八弾『黒弾とS』
【*】
「【S】ッ!」
「おやおや、そんなに睨まないでおくれよ」
【S】はそう言い、両手を挙げヤレヤレといったような、リアクションをとる。
「六年前! お前の事を忘れた事は一度もない。この傷もな!」
環はバイザーを投げ捨て前髪を上げる。そこには深い傷がついていた。
この傷は環から感覚を奪った原因になった怪我だ。
「それは僕からも言えるセリフかな?」
【S】はTシャツを捲り上げる。すると脇腹辺りに深い傷がついていた。
六年前、事件中、環は同い年の少女【S】と戦った。二人は相打ちになり、その時に環は額に、【S】は脇腹に深い傷を負った。
「俺は感覚を失った」
「僕は腎臓を失ったよ」
二人は殺気を放つ。
「三年前あった時は逃げやがって。一年前も切りあっても喜んで逃げられるし」
環は歯切れが悪いように言う。
「【黒弾】の殺気が怖かったからね。それにしていい顔になったね。それにまるで貫かれそうな殺気。その怖さで惚れそうだよ」
【S】はそう言って自分の指を口に這わせる。
それを見て環は興を削がれる。
「ったく。この変態が」
「失礼な。僕が変態だって? まあそうだね」
「認めんのかよ」
「まあ、殺し合ってる時が一番興奮するからね(性的に)」
環はため息を吐き、【S】の下に転がる死体を見て聞く。
「そいつらはお前が殺したのか?」
「そうだよ。ちょっと【シニカル】の仕事で用があってね」
腎臓を失っているという割にはとんでもない戦闘力である。
「そうか。で、俺とやりあうか?」
「いや、今日は遠慮しておこう。では、これで」
【S】はそう言って去ろうとする。しかしそれを環はショットガンを直し、引き止める。
「待て」
「何かな?」
それに【S】が立ち止まり振り返る。
「名乗っとこうと思ってな。大門環。【SKR】〇八部隊【ロウ】。部隊長。所属番号は【八〇一】で異名は【黒弾】だ」
それを聞き、【S】はニコッと笑い返す。
「なら、こっちも礼儀として名乗っておくよ。殺し屋【シニカル】。【S】ことスレイア=シュトリル。これからもよろしく」
そういうと自然に口から言葉が出ていた。
心の底から言った。
「いつかお前を……」
「いつか君を……」
「「殺す」」
この関係は、環にとっても、【S】にとっても、この世で最も強い繋がりだった。
【*】