表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/11

第終弾『桜の花を背負う執行者』

【*】



「ワシは知らん。殺し屋【ガウル】など!」


 ここはとある政財界の大物の自宅だった。そこで守っていた下卑たボディガードは首を切られたり、頭を打ち抜かれるなどして死んでいた。

 あの後、環は一人で【ガウル】の依頼人の所に来ていた。執行するために。

 おっさんは環に、リボルバー式の拳銃を突き付けられながら、怯えて否定する。


「うるさい。お前はどうせ、【執行リスト】に乗っている。結局は死ぬ。ただ動機を確かめたかっただけだ」


「なんの話だ?」


「いいからお前は黙って答えろ」


 環は銃を頬に押し付け脅す。


「ひぃ! は、はい」


「お前は凍木光也の求心力に恐れ、自分の地位が危ういと思った。そのため娘である凍木鍵子を殺し、精神的につぶそうとした。そうだな」


 環がそう聞くと、おっさんは逆切れする。


「そうだ! 自分の地位が恋しくて何が悪い! 人間とは自分のために生きるために生きているのだ!」


 それを聞き、環も言う。


「そうだな。人間は確かに自分のために生きている。だが、お前のように自分の欲のために人命を奪っていい理由などには決してならない!」


 環は拳銃の撃鉄を上げる。


「だから俺も俺のためにあんたを殺すよ。【八〇一】執行する」


「や、やめ!」


 次の瞬間、パンッという乾いた発砲音が響いた。



【*】



 ここはとある病室の一室。そこには鍵子が月を見ていた。

 狙撃されて、怪我はかすり傷一つ無かったものの、念のために検査入院したのだ。

 鍵子は、自分の右手の一指し指にしている指輪を、念じるように強く抱く。

 するとコンコンと窓を叩く音が聞こえる。


「ッ!」


 見ると、黒いロングコートを羽織った少年、環が手を振っている。

 鍵子は急いで窓の鍵を開ける。

 すると、まるで烏のようにクルッと一回転し、病室に入っくる。


「よう。様子みに来たぞ」


「あなた、傷は!」


 鍵子は背中に傷が無いか詰め寄って聞く。


「ああ。大丈夫だよ。ちょっと貧血にはなったけど。今はもう大丈夫だ」


 それを聞き、鍵子は安心する。


「そう」


 しかし安心したのもつかの間とんでも無いことを言われる。


「ああ。それから、お前を狙ってた殺し屋は撃滅した」


「え?」


 鍵子は目が点になる。


「だからお前が狙われた敵は撃滅した。一人残らず」


「うそ……。私の家があんなに苦労してたのに」


 鍵子は口を両手で押さえ驚きを隠せない。


「それから、向こうの依頼人も消した。しばらくは大丈夫だ」


 それを聞き、鍵子は三歩ほど下がる。


「はぁ」


 その反応を見て環はため息を吐く。すると鍵子はしまったというような顔をし、謝る。


「ご、ごめんなさい!」


「いや、謝る必要は無いさ。それが普通の反応だ。俺達は所詮人殺しだ。人殺しはなんであれ悪だからな。俺達は所詮異端な存在だからな」


「ち、違う」


「安心しろ。任務は終わった。たった一日だったけど学校生活楽しかったぜ。ありがとな」


 そう言って環はフードを深く被り、〝桜の大門〟の印を背負い、窓から去る。


「待って!」


 環はその声が聞こえても戻ることはない。

 しかし、下に降りると、そこに相理がいた。


「お兄ちゃん、もう行くの?」


「ああ」


「そうだよね。お兄ちゃん同情が一番嫌いだもんね。うん。分かってた。任務が終わればいなくなるって」


「悪いな。めんどくさい兄で」


「ほんとだよ! でも鍵ちゃん守ってくれて、ありがと」


「また、時間があったら帰ってくるよ。またな」


 そう言って、環は世闇を駆け出した。また悪を裁くために。


「〝桜の花を背負う執行者〟か……いつの間にか、かっこいいお兄ちゃんになられちゃったな」


 相理は不意にそう呟いた。



【*】


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ