第零弾『始まりは守るために』
始まりました! 新連載!
短めの奴です。
楽しんで頂ければ幸いです。
【*】
人を殺すのは悪だ。
たかが、その行為一つで、憎しみや悲しみをたくさんの人間に与える事になる。その感情がやがて、報復感情を生み、殺人は新たな殺人を生む。
しかしその行為は、はたして悪と呼べるのか?
または、命を狙われて、返り討ちにして殺した場合は?
結論だけで言うなら結局、殺人はどんな理由があろうと、悪である。
だが、この結論には続きがある。その殺人は誰かを救うためなら赦しになり、復讐のためなら自分の救いなる、ということだ。
しかし前述通り、殺人は新たな殺人を生む。つまりこの世界の憎しみの連鎖に終わりは無い。ただ戦いに臨む者はいつか終わりがくると思っている。終わりなど初めからないと知っていながら。
故に戦う者は、復讐を望む者、戦いを含め、愚か者しかいない。
ならば守る者も、結局世界からすれば愚か者でしかない。
【*】
暗い、怖い、熱い。
視界は、煙で遮られてよく見えない。
周りからは、血と硝煙と火薬の匂いが、立ち込めていた。
周囲からは、銃声と助けを求める呻き声しか聞こえない。
少年は隣で震える妹を抱き、恐れながらも歩みを止めない。
『兄貴なら、妹を死んでも守れ』
父親のその言葉に従い、少年はこの地獄の様な場所から脱出する方法を考えていた。
するとコツコツという足音が聞こえてくる。
少年は咄嗟に妹を連れ、ソファの裏に隠れる。
「つまんね。【羅刹鬼】がいるってきいてきたのに、いねえじゃねーか。つまんね」
そんな声が聞こえてくる。その男は手に機関銃を持っていた。
あれは敵だ。直観的にそう判断した少年は、右手の一指し指を口の前に持ってきて、妹に向かってシーとした。妹はそれを見てコクコクと首を縦に振る。
「そういや、ここには【羅刹鬼】のガキがいるんだったか。なら、拉致って殺して、餌にするか」
男のその言葉を聞き、少年はぶるっと震える。【羅刹鬼】とは少年の父の別称である。
つまり、見つかれば殺されるだろう。
(見つかったら殺される。どうする、俺。どうする? どうする? どうする!)
その時、少年は、自分の左方にSPの死体があることに気づいた。更にSPの死体の手には拳銃が握られていた。
少年はその拳銃を取り、状態を見る。拳銃の打ち方は父に教わっていたためすぐに分かった。既に撃鉄は下げられていて、安全装置も外れていた。いつでも打てる状態だった。
後は打つか、打たないかだけっだ。
コツコツと足音が聞こえる度に、少年の鼓動は早くなる。その時、父の声が聞こえた気がした。
『殺らなきゃ、殺られるぞ』
それが引き金だった。
少年は転がってソファから飛び出し、機関銃を持っている男に拳銃を向ける。
「なっ!」
機関銃を持った男は驚愕し、機関銃を構えようとするが、もう遅い。
少年は引き金をあっさりと引いた。
【*】