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初陣への準備

―天文21年―(1552年)6月 飛騨 桜洞城 



元服と初陣のことを告げられた後、親父たちと世間話をしていた俺だがやっと家に帰ってきた。

まあ、家というより城の中にある屋敷なんだけどね。

俺は、ここに部下たちや使用人とともに住んでいる。母は十年近く前に病死してしまったためいない。俺には弟も居るのだが、その弟もまだ幼く今はここには居ない。


「おかえりなさいませ若」


俺を出迎えてくれたのは、森可成という男だ。この男はもともと土岐氏の家臣だったんだが、斉藤家によって美濃が事実上乗っ取られたため、父親の可行と共に最近俺が召し抱えた。

最近長男が生まれたそうだ。俺としては次男として生まれてくる筈の長可が最大の目的だけど、可成も

結構優秀な武将なんだよな。


「ただいま可成」

「若、刀鍛冶の茂吉が来ておりまする」

「茂吉が?分かったすぐに行く」



今、俺は広間で刀鍛冶の茂吉と向かい合っている。

茂吉は、壮年といっても差し支えない年齢で顔には右目を中心に大きな傷跡が残っている。茂吉曰く、昔足軽として戦に参加した際の傷らしいが、元々の強面と相まって正直かなり怖い。

初めて会ったときは小便もらしそうになったほどだ。


「で、茂吉今日はどうしたの?」

「若様に依頼されてた例の武器の試作品完成しましたぜ」


例の武器とは、弩である。

弩は10世紀頃までは日本でも使われていたが、鎧の防御力が上がったため威力が不足したのと、連射が難しい事などから廃れていった。

しかし、軽装の足軽同士なら十分な威力を発揮するし、連射は改良や運用法で何とかなる。

それに加え、子供や老人なども比較的簡単に使用できることや、殆どが木でできているため飛騨の豊富な木材を使用して作成できることから、運用することを決めたのだ。

まあ、農民でも弓を使える者はそこそこ居るし今のままでは主戦力にはなりえないだろうが、改良を加えればかなり使えると思う。


「そうか、でもう試射はしたのか?」

「へえ、確かに若様のおっしゃっていた通りの出来でした」

「十月までにいくつほど作れる?」

「材料は幾らでもありますが、ほかの仕事もありますし人手も少ねえんで精々百五十ほどかと」


百五十か・・・、俺が直接率いることができるのは約五十人だから残りは親父に使って貰ってみるかな。

俺は茂吉に、十月の江馬攻めまで量産を続けてくれるように頼むと、茂吉の持ってきた弩を持って中庭へと向かった。



中庭では、可成と虎高が数十人の足軽たちに槍の稽古をつけていた。

因みに、足軽たちの使っている槍は全て三間半(約6.3メートル)のものにしている。この槍は訓練に時間がかかるものの、当時の足軽が持つ槍よりかなり長く有利なんだよな。


「若、何か用でしょうか?」


俺に気付いた可成が、槍を振る手を止め俺のほうにやってきた。


「ああ可成、前から話してた例の新武器が遂にできたんだよ」

「本当ですか?」

「ああ、だから試しに使って貰おうと思ってな」


俺が可成に弩を渡すと、可成は的に向かって試射を始めた。

十数本の矢を打ち終わると、可成は俺のところに戻ってきた。


「使い心地はどうだった可成?」

「ふむ、確かに従来の弓よりは扱いやすいですが、やはり連射が効かないのが欠点でしょうな、しかし、女子供や、護身用には使えるでしょう」

「やっぱりそうだよな、弓のほうが使いやすいから弩は廃れていったわけだし、とにかく連射性の向上が必要か。すまなかったな可成、訓練の邪魔しちゃって」

「いえ、若のお役にたてたのなら幸いです」


そう言うと、可成は訓練に戻っていった。

とにかく、初陣までに俺ができることはやっておかないとな。

主人公の母である良頼の正室ですが、病弱で、嫁いだ後すぐ亡くなったらしいのですが、正確な没年がわからないので、このような形にさせていただきました。

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