7年
今回もかなり短いですが、次回はもう少し長くできるように頑張ります。
―天文21年―(1552年)6月 飛騨 桜洞城
俺がこの体に転生してから7年の月日が過ぎた。
その間に起きたことをまとめてみよう。
領内についてだが、まず、農民たちに米だけではなく茶、そば、大豆、綿花などの商品作物を積極的に作らせるようにした。そして、それらを利用した特産品もつくらせ始めた。
これにはいくつかの意味がある。米だけを作っていると米が不作だった時に農民の生活がかなり苦しくなってしまうし、商品作物を作って売ることにより現金収入が生まれ、農民たちがその現金を使うことによって貨幣経済が浸透していくことになる。
これらに加えて、税を簡略化して税率を四公六民にまで下げることによって、現在城下や領内の村々は他国からの移住希望の農民や行商人などでかなり賑わってきており、収入も税率を下げる前より増えているそうだ。
これらを提案したのは俺だが、対外的には親父の良頼が考案したことになっている。
手柄を取られた気がしないでもないが、あまり目立ちたいという訳ではないからべつにいいだろう。
この収入を使って、親父達は着々と軍備を整えている。
祖父は武田が信濃に侵攻していることに焦っているらしく、できるだけ早く飛騨を統一するつもりのようで、宿敵の江馬時経が亡くなってから飛騨中部をほぼ制圧し、残るは飛騨北部の江馬氏のみとなっている。
「岩鶴丸様」
そんなことを考えながらひなたぼっこをしていた俺を呼びに来た中年の武将は名を三井虎高といい、史実では後に藤堂家に婿入りし藤堂高虎の父親となる男である。
本来は近江の生まれなんだが、若い頃から甲斐の武田氏に仕え武田信虎から虎の字の偏諱を受けたほどの武将だ。しかし、数年前に武田家を離れ故郷の近江に戻ろうとしているところを説得して家臣にした。
「何の用だ虎高」
「大殿がお呼びです」
「父上が?」
・・・一体なんの用なんだろう、元服のことについてかな。とにかく急いで親父のとこに行かないと。
虎高とともに親父のもとに向かうと、親父だけでなく祖父の直頼も居た。
「何の用でしょうか父上」
「うむ、岩鶴丸そなたももう十二だ、よって一か月後にそなたの元服を執り行うことにした」
「そして、十月の江馬攻めを初陣とする」
親父の言葉を途中で爺さんが継ぐ、てかあんた史実ならあと二年後には亡くなるはずなのに元気すぎやしませんかね。
「はい、分かりました父上、祖父上」
とにかく、元服と初陣の準備をしなきゃいけないな。