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Wiarm-ワイアーム-  作者: しろなえ
2/6

2話 少年と星の意思

 朝はよく晴れていた。

 リアはその栗色の癖毛をブラシで簡単に撫で付け、顔を洗いに井戸のある表へ出た。さすがに宿の外に着替えもせずに出ていくことは憚られるので、服は先に着替えてある。


「おはよう、エルヴァン。いい天気ね」

 リアは馬小屋に収まっている大きな飛龍に挨拶する。飛龍と表記すると基本的にワイバーンのみを指す。ドラゴンはたとえ飛べても龍(あるいは竜)と表記される、些事ではあるが。

 エルヴァンはオスのワイバーンでリアと共に旅をしている。竜の卵から生まれた異形の飛龍であり、神聖なる竜の格が落ちているとして竜使いの谷ではひどくそしられていた。

生まれた瞬間から今日までを共に過ごしてきた彼女とは並ならぬ絆で結ばれている。


「おはようリア、確かに、いい天気だ。さぞ見晴らしもいいだろうさ」

 エルヴァンが言わんとすることをリアもすぐさま察し、空を仰ぐ。雲は高く、まばらだ。空に昇れば視界を遮るものは何もないのだろう。

 昨日の晩。あの空の上に昇って逝ったひとが居る。

 リィネス、その名が苗字だったのか、名前だったのかすら定かでないが、響きからして名前だったのだろうとリアは推察している。彼女とは昨日の昼頃に出会い、体調を崩したリアを助けてくれた恩人であり、その日の晩、堕天病の患者を救うべく治療に励み、代わりに己が堕天し、狂気に囚われてリアと刃を交え、そして、最終的には自らの意志で自分に剣を突き立て、逝ってしまった。

 たった半日の内に出会いと永遠の別れを経験した。彼女は昨日、リアに一本の短剣を託していった。エスメラの町にいるという彼女の友人にこれを届ける。いささか情報が少なすぎるけれど、こちとら、時間はたっぷりある。速く走れる足の代わりにどこまでも飛べる翼だってある。無理なことは無い。

「ただ、エスメラまでの道程は長いね。休み休み行かなきゃ」

「疲れるのはきっと僕だけだ」

 エルヴァンは拗ねたような、ひねた声を出す。もっともこの声はリアにしか聞こえないが。

「私だってたくさん疲れる予定があるわよ」

「へぇ、どんな」

 上から見下ろすエルヴァン、ここで彼女の言う予定がしようもないモノならば鼻で笑われるのは確実。リアはふむ、と逡巡考えて、言った。

「貴方にご飯作らないと」

「君の分も兼ねてるじゃない」

 エルヴァンは即答する。ちなみに、ワイバーンは雑食性とはいえ基本的に肉しか口にしないのだが、エルヴァンは何故かグルメ家だ。野菜だって食べるし、果物も食べる、とりわけ、調理済みの物を好んで食べるという、非常に手間のかかるワイバーンなのだ。もっとも、これを言うと彼は「調理してある方が美味しいと言っているだけで、絶対に調理しろとは言わないよ、煮るも焦がすも君次第」などと挑発的な返しをするものだから、リアは対抗心を燃やしてちょくちょく凝った料理を提供しているのだが、結果的に見ればエルヴァンしか得していないのが分かる。そのあたりの計算高さも、彼のワイバーンらしからぬ所だ。

「色々調べ事だってあるよ、貴方を竜にする方法とか、昨日聞いたワイアームの事とか」

「君はすぐに一つの事に没頭するから、文献を漁るのには向いてないんじゃないかな」

 その言葉にリアはムッと頬を膨らます。

「何事も集中してやってみなくちゃ、本質は見えてこないよ」

「君は弱いところを突かれるとすぐに小難しい言葉を使おうとする」

 リアの表情が歪む、口からぐぬぬ……という声が漏れた。悔しかったからだろうか、次の言葉は今までより幾分か攻撃的になっていた。

「エルヴァンは本当によく『君は』って言うわね。君は、君はって、一つの事に夢中なのはそっちじゃないの?」

「君を第一に考えているからね。その指摘は間違っていないよ」

 言葉を咀嚼し、意味を理解したとき、リアの顔が急に熱を帯びる。

「な、何言ってんの! バカ……そういえば顔洗いに来たんだった、じゃあ後でね、エルヴァン。それと、朝ごはんは何がいい?」

「アップルパイ、よく焼いたやつ」

「却下」

 彼女は仕返し、とばかりに肩越しに振り返りにんまりした笑顔でエルヴァンを見た。そして足取りも軽く井戸の方へと向かうのであった。

エルヴァンは「ごちそうさま」と呟いた。

 一晩、エルヴァンの話し相手として付き合ってくれた頭のいい旅の烏が「お前ら、夫婦なのか」と突っ込みを入れる。呆れたようにカァと鳴くその烏の言葉がまんざらでもないエルヴァンであった。


 ――もう行くのかい?

 エルヴァンが声を掛けた相手はさっきの旅の烏だ。

 ああ、朝っぱらからあんまり甘ったるいモノ見せられたんで、酸っぱい木の実が食いたくなった。

 ――また会えるかな?

 烏は答える。

 会おうと思えばな、でも俺は会う気はないね。

 ――甘ったるいから?

 烏はやけに人間じみた動作で首を振った。

 気ままな一人旅に居場所は必要ないのさ、もしまたお前と合う運命なら待ち合わせなんぞしなくてもまた会えるもんさ、俺は時の流浪に身を任せる主義なんだ。

 ――なるほどね、すごくクールな考え方だよ。ともすれば、君は別れ際、どんな挨拶をするの?

 さぁてね、例えばアンタ、死に際の言葉を今のうちに考えておくのかい? 俺は違うね、いつも持ち歩いてるような挨拶はいらねぇ、その時の気持ちが一番重要なのさ……じゃあな、新しい親友、楽しかったぜ。

 そう言い残して彼はその漆黒の翼を広げ、まだ夜が明けない濃紺の中に消えていった。まるで幻か何かだったかのように、黒い鳥はあっという間に見えなくなってしまった。

 ――かっこいいな、なんてファンタスティックな烏だろう。


「さぁ、エルヴァン、朝ごはん食べたら町へと繰り出して、いざお金儲けよ」

「なんてファンタシズムの欠片もない人だ。もう少し烏を見習えばいいのに」

 は? 烏? とリアは目をまん丸にして首を傾げた。両手にはさっきできたばかりのミートパイが乗っている。右にはホールの何分の一かの三角形。左にはほぼ真円を描くスリットの入ったパイ。どちらをどちらが食べるのかは一目瞭然だ。

「さっきまで烏と話をしていたんだ、とても頭のいい烏で、すごくかっこよくて、かなりファンタスティックなんだよ」

「あぁ、なるほどね、でもファンタジーだけじゃ、お金にはならないかな」

「……お金って、現実の権化みたいだね」

「あなたは今確信を突いたよ」

 そんなことを言いつつ、リアはエルヴァンにミートパイを出して、自分のパイにフォークを突き刺した。

 エルヴァンはパイを一口で完食した。口の中でほぐすように数回弄んだあと、飲み込む。

「相変わらずパイ生地の仕上げが最高だよ、リア」

「いいところを見つけて褒めようとしてくれてるのは分かる。でも十回も言われると虚しいだけだよ」

「僕は君がわざと進化するのを止めたのかと思っていたよ」

「すぐそこまで来ているんだけどね、何かが足りないのよ」

「愛とか?」

「そんなファンタジーな答え求めてません」

 そう言うとリアは空の皿を取り上げてさっさと部屋に引き返していった。

 次に彼女が戻って来たのは、エルヴァンが退屈して三回ほど大あくびを掻いた頃だった。

「さて、資金調達よ」

「現実的だ」

 現実的な少女は背中に大きなリュックを背負っている、まるで旅の行商人のような装備はエルヴァンにとってはもう見慣れたものだ。

「じゃあ行こうか」

 リアがリュックを背負ったままエルヴァンに跨る。彼は嫌な顔一つもすることなく、いつものように羽ばたいて、いつもの空へと舞い上がっていく。


 数分後には目的地である両替屋に来ていた。

「四十ガルムってところだな」

「よ、四十!? たったそれだけ?」

 彼女はカウンターに掛けていた肘をガクリと落とすほど驚いていた。この町に来る途中で拾った宝石。値打ちものだと思っていたのに。

「この辺りには結構出回っているからな」

 と言う事らしい。中にはそこそこの値になる物もあったが、多くは雀の涙ほどの収入にしかならなかった。

 町から町へ移動する途中でトレジャーハントした物を換金し、資金にする。今のところそれが彼女らの食い扶ちとなっている。人が中々立ち入れない場所に入っていけるので、時々すごく儲かるのだが、今回の様に、道中の半分以上が草原だったりすると、がくんと収入が減少するのだ。

 今回の収入は飛龍と共に旅をする彼女にとって物足りないものだった。もう売れるものは出し尽くしただろうか、そう思って、スカートのポケットをまさぐってみたり、上着を煽ってみたりしていると、両替商が視線をある一点に留める。

「ちょっと、あんた。それを見せてくれ」

「え?」

 両替商が指さしているのは、リアの上着の内側のナイフホルダーに収められた件の短剣。リィネスの形見であり、彼女の友人に届けると約束した品だ。

「こ、これは売れません!」

 彼女は慌てて上着を閉じ、手で押さえつける。まるで両替商からそれを守る様に。

「見るだけでいいんだ」

 そう言われ、渋々とその短剣をホルダーから外し、カウンターに置く。彼はそれを色々な角度から眺めていく。その度に彼の表情には喜色が滲んでいく。

「こりゃすげえ、なぁ、こいつを売っちゃくれねぇか? 三十……否、四十万ガルムでどうだ!」

「四十っ……!?」

 同じ四十でもその途方もない金額にリアは唖然とする。どうしてこの剣にそれほどの値打ちがあるのかは分からないが、リアの答えは最初から決まっている。

「ごめんなさい、それは預かり物なの。それを受け取るべき人を探していて、だから、売れません」

「そうかい……残念だよ」

彼は肩を落としながら、名残惜しげにその短剣をリアに返す。剣を受け取った彼女はそれを大事そうに再びホルダーに差し込む。

「そんなに価値が有るなんて、一体なんなんですか、この剣は」

「それは、聖剣だよ」

「聖剣……」

 リアは言われた言葉を口に出して反芻する。

「名の有る鍛冶師やエルフの民によって鍛えられた剣には不思議な力があるという。強い意志によって力を引き出すことが出来て、剣に認められた者は富、力、地位、なんでも手に入れることが出来るという話だ、そいつが何てを持っているのか俺には分からんがね」

両替商は語る。あらゆる武器を見て来たからわかるのだと。それらとは完全に一線を画す雰囲気が、その剣から放たれている、と。

「そんなに凄いものだったなんて……彼女は一体、どんな人だったんだろう」

「売れねえってんなら構やしねぇが、そいつを持ちまわるなら気を付けた方がいい」

 どういうことです、とリアは問い返す。

「そういう力の集約みたいな物は持っているだけで争いを呼び込むぞ、何が何でも手に入れたい輩は少なくない、世の中、俺の様に聞き分けのいい奴等ばかりじゃねぇってことだ。くれぐれも気を付けな、お嬢ちゃん」

 忠告に礼を言ってから、彼女はその店を後にした。

 

「聞いてたよね、エルヴァン?」

「うん」

 エルヴァンは店の中に入れないので、外で待たせていたわけだが、リアは自分の聞くところと自分の発言を念話によって外のエルヴァンに伝えていたのだ。

「まさか聖剣だとはね」

「リア、聖剣の話をするときは念話にした方がいい」

「へ?」

「乗って」

 言われるままにリアはエルヴァンの背にかけ上る。リアが鞍にしっかりと腰を据えるのも待たず、彼は翼を振り下ろした。埃が舞い、突風が数人の通行人に吹き付け、彼の巨躯は浮かび上がった。その直後に、エルヴァンが今いた場所に走り寄る人影が二、三見られた。

「あれは……」

 リアが下を見れば、向こうはこちらを見上げている。

「狙いはきっと……」

「この聖剣だね」

「君が路上で軽々しく聖剣だなんていうから、その道の人が反応しちゃったんだろう、あるいはもっと前から監視されていたのかもね」

「すぐに町を出ましょう、一旦山中に身を隠す」

「賢明な判断だけれど、そのために準備は?」

「時間がないからね、暫くは狩猟生活を覚悟して」

 やれやれ、と言い残してエルヴァンは宿へ向けて進路を取った。宿に荷物を置きっぱなしだ。それを回収してさっさと町を後にしなければ。

 宿に着いて店主にもう発つことを伝えると、店主は複雑な顔をした。少し気にしながらも、部屋まで移動する。

ドアを開けて部屋に入り、鞄に手を掛けようとしたとき、背後から殺気を感じて直感で横っ飛びに身を投げた。後を追うようにナイフが空を切ってヒュッと音を立てる。床を転げ、向かい合うと、そこに居たのは黒い布で顔を眉間の下まで覆った二人の男、どちらもスラリとした体付きで、共に大ぶりのククリを手にしている。全く気付かなかったが、どこに隠れていたのだろうか。顔を覆う布と同じく黒く染め上げられた布で全身を覆っているのは暗殺者特有の物と見て間違いなさそうだ。

「女の子の部屋に忍び込むなんて、いい趣味ではないですね」

 額に汗を浮かべながらもおどける様に言って見せるが、もし完全に気配を消されていたらと思うとゾッとする。油断したところを狙われるという最悪の危機は脱したものの、彼女が依然ピンチなことに変わりはない。こちらにも武器が有るとは言え男二人を相手に勝てると踏むほどリアは無鉄砲でも向こう見ずでもない。

 リアの言葉に二人の男は何も反応せず、右手に立つ男がもう一人に、指で何かの合図を送った。それを見て男よりも早くリアが動く。

 先ほど両替してきた金貨を思い切り片方の男の顔面に投げつける。見事に金貨袋は黒装束の鼻面を捉え、隙が生まれる。袋の紐が緩んで床に金貨がぶちまけられた。

 リアが目指すのは窓だ。そのためにわざと窓側に立つ男を狙った。

 旅用の大きな荷物は捨て置き、最低限の物だけ詰めた鞄を取って窓に駆け寄ると強引に開け放して外へ、ここは二階、庇があるのは確認済みだ、窓枠に突いた片腕を軸に身体を捻りながら部屋の外へと身を投げ出し、足元を確認しようとしたとき、伏せるような態勢でこちらを見上げる男と目が合った。さっきの黒装束を着ている。同時に、ギラリとダガーが光る。

「うわっ!?」

 三人組だという可能性を失念していた、とリアは舌打ちする。

 男も突然飛び出してくるとは思わなかったのか、慌てて放った刺突はリアの頬を間一髪掠めたのみだった。

 伏兵の登場によりうまく着地できなかったリアは庇の端で足を滑らしてしまう。バランスを崩し、身体が宙に投げ出されたのは一瞬、落下を感じる間もなく彼女の体は上昇によって体に掛かる重力を感じていた。

「エルヴァン!」

「ああ! 無事かい、リア?」

「頬を掠っただけだよ、大きい方の荷物と、両替した金貨を置いてきちゃった」

 それを聞いたエルヴァンは大いに笑った。

「あっはっは! 大損害だ」

「もうっ、笑いごとじゃないよ!? 着替えの服も、調理器具も、食べ物も、みーんな置いてきちゃったんだから!」

 エルヴァンはそう言われても「これから山籠もりなんだから、お金なんて必要ないさ」と答えた。楽天的というか、能天気というか。

 しかしすぐにリアは気付く、エルヴァンはリアがあまり気に病まないように、わざと明るく振る舞っているのだ、と。

「ごめんね、エルヴァン」

「謝ることは無いさ、待ち伏せの可能性に気付かなかった僕も僕だ」

 昨日の今日で命を狙われる羽目になり、宿の部屋にまで侵入しているのを予見しろと言うのはいくらなんでも無理だろう。そんなことが出来るのは正真正銘のドラゴンぐらいだろう。彼らは世界を満たすマナを取り込んでマナの声に耳を傾けることが出来る。だから彼らは膨大な知識を持っているのだ。しかし、ドラゴンに成れなかったエルヴァンにそんな能力は備わっていない。


 そこまで考えてリアは一つ思い至った。そして呟く。

「ああ、宿の店主のあれはそういう事だったのね……」

「何かあったの?」

 宿屋の店主。私があの宿に居ることを知るのは関所にいる兵士と、店主しかいないのだ。そしてその中で私が借りた部屋の位置までわかる人物となると……。

 ことの詳細は分からないが、店主とあの黒装束が手を組んでいたという事だ。黒装束が話を持ち掛けたのか、それとも逆だったのかは定かではないが、どちらにせよ、きっと金が絡んでいるのだろう。人の良さそうな人間だって信用できないという事か。

「結局お金かぁ……」

 リアはエルヴァンの背に仰向けになる。

「人間の真理を見たり、みたいな顔をしているね」

 エルヴァンからリアの顔は見えないから実際に見た感想ではなく、憶測で話をしているのだろうけれど、全くその通りであった。

「あーあ、谷から出ればもっと自由だと思ったのになぁ」

 

 谷では習慣的な、昔から受け継がれてきた伝統に縛られて、それが嫌で谷長の命令に従って飛び出したけれど、そこにあったのは金の支配と、貪欲な力への執着。

 その人間の心の穢れが世界のマナを汚し、結果的には自らに堕天病という形で悪害をなしている。だけどそれを癒すのはリィネスやあの三人の聖職者の様に優しく、純粋な意思を持っている人たちで、たとえ堕天することが無かったとしても、汚れたマナによって毒され寿命を削られていることに変わりはないのだ。

 大きな矛盾を抱えた世界にリアは早くも幻滅し始めていた。それでも、谷を出てきて良かったと思わせることもある。特に、リィネスとの出会い。彼女との出会いはリアにとって辛い結末となったが、あの笑顔はリアが数ヶ月ぶりに他人から向けられた優しさだったのだ。彼女のような人間が居ると思うと、この支配や束縛だらけの世界も悪くないと、少しだけ思うことが出来る。

 そんな世界から一歩外れて、野宿するのも最近ではだんだんと嫌ではなくなってきた。最初はあんなにベッド以外で寝るのに抵抗があったのに。

「リア、着くよ」

 エルヴァンはそういうと降下し始める。翼で空気を受けて減速しながら開けた場所まで来ると空気を掴むのをやめてストンとその場に落ちる。足が地を掴むと同時に衝撃を吸収するために足を曲げ、バランスを崩さないように翼で地面を押さえつける。舌を噛むような激しい衝撃もなくエルヴァンは地に降り立った。少し遅れてリアも大地を踏む。

 彼女らが来たのは昨日上空から見たとき、左手に見えていた霊峰の末、頂上付近に降り立ったリアはそこから下界を見下ろす。

 切り立った急な斜面は背の低い植物で覆われ、今経っている場所より上に行くと岩場、だ。時期的な関係で雪が見えないだけで、冬が近づけばこの辺りも雪に埋もれているのだろう。小さな花の点在する斜面を少し下りれば鋭い葉を茂らせた森が広がる。針葉樹ばかりで恵みに乏しそうな森だ。

「早速、野営の準備でもしましょうか」

 リアが自分の貧弱な装備を見て溜息を漏らす。見れば見るほど足りないものが多すぎる。今ある物と言えば……。

 武器、元より持っていたロングソードと、リィネスから預かった短剣、サバイバル用のナイフ。

 食料は、保存食が少しあるが、今食べる訳にもいかない。調味料は数種類が少量ずつあるだけだった。

 雑貨はロープを始め、水筒、鉄製のコップ、外套、といつでも使いそうな物ぐらいしか入っていなかった。

「最低限の物が有ってよかったね」

 エルヴァンはまるで他人事だ。もっとも、雨に打たれようが、風が吹こうが、竜が体温を奪われるということはあまりないので、実際に野営準備は他人事だったりするのだが。形は爬虫類に近くとも、体温の調節機能はかなり発達している。

「とりあえず木を拾ってくるよ」

「じゃあ僕はご飯捕ってくる」

 そう言い残して二人は別々の方向に向かっていく。リアは少し下の針葉樹林まで下り、まっすぐ伸びた細木を切り出していく。地面に落ちている乾いた草木は貴重な薪となる。剣やナイフを使って木を削っては折り、削っては折る、の繰り返し。暫くそれを続け、空にしていたカバンが俄かに重くなってきた頃、リアは遠目に鹿を見つけた。角は見当たらない。雌なのか、生え変わりの時期なのか、小鹿には見えなかった。貴重な食料だ、確実に捕ってもらわねば、そうして空を見る。天上を覆う葉の隙間から空を旋回して獲物を探す彼の姿がある。大きく円を描いているということはまだ狩場も見当がついていないらしい。

「やれやれ、助けてあげますか」

 小声で呟くと、息を殺して音を立てないように下へと下りる。鹿の後方に回り込んだリアは丸を作った指を咥えて吹く。鹿の鳴き声にも似た響きが山に木霊する。鹿は後方のリアを確認すると一目散に山の上に向かって走り出した。

 エルヴァンは上空で口笛を聞き届けた。すぐに下に目を凝らす。木々の隙間から飛び出してくる鹿が見えた。その場で宙返りして一気に速度を上げながら降下する。水を大きく掻く様な動作で翼を動かし、推力を得ながら翼をたたむ。例の如く隕石でも落ちたかのような衝撃が起こり、辺りで一斉に鳥たちが飛び立っていった。

 リアは他の獲物が逃げてしまわなければいいけれど、と肩を竦めた。

「そろそろいいかな」

 あまり遅くなると簡易テントが組みあがる前に日が暮れてしまうかもしれない。そう判断したリアは最後に拾った一本の枝を杖にして坂を上ってゆく。鳴き声を聞いたのはその時だった。犬が低く唸るような威嚇の声音。

「い、嫌な予感が……する」

 恐る恐る、振り向いた瞬間、大木の奥から巨大なオオカミが身を躍らせながら突進してくる。

「うわああああああ!?」

 飛び掛かってくるオオカミの口に手にした枝を噛ませ何とか食い止めるが、首を振るわれてあっさりと払い落とされた。同時に肩に掛けた鞄が落ち、集めた木が少しこぼれた。オオカミはリアを押し倒すような態勢になり、その獰猛な牙を剥いている。

 どうする、どうすればいい!?

 慌てて懐の短剣を手にしようとしたとき、リアは異常に気付く。よく見るとオオカミは牙を突き立てる訳ではなくリアを見据えながら息遣いを荒くして、尻尾と腰を振っている。

「もしかして……発情してるの!?」

 命の危機は一瞬にして貞操の危機に、さっきとは別の意味で冷や汗がしたたり落ちる。

「ま、待って待って待って! 私人間とだってまだなのにそんな……!」

 パニックに陥り意味不明なことを言っているリアにも構わずオオカミはその鼻頭を近づけ、リアの顔を舐める。何とかどかそうとオオカミの胸を力いっぱい押してみるが、ビクともしない、そもそも、オオカミが巨大すぎる。高さが大の大人ほどもあるのだ。体長ともなればさらに長い。

 顔をひたすら舐められながら、恐怖で自分でも何が何だか分からないまま目尻に涙が浮かんでくる。聖剣を抜くことすらかなわないまま為されるままになっていた。

 その時、聞き慣れぬ声が響いた。

「こんの……バカ犬!!」

 最初にその声が耳に届く。男の声だけど、エルヴァンじゃない。

 次に何か棒のような物で殴るような軽い音。「わふん」と気の抜けた鳴き声を上げたオオカミは不機嫌そうな顔をして声の主を睨み付ける。

 オオカミの視線を追いかけた先で見たのは、リアとそう変わらないであろう年端の少年。黒いぼさぼさ髪が印象的だ。

 人が居たことにこの上ない安心感を覚えた。何とか涙を引っ込めて、少年に助けを求める。

 少年は蹴散らすように巨大オオカミをリアの上から退けさせ、リアの手を引いて起こした。

「悪いな、まさか人間の女の子が居るとは思わなくて」

「……?」

 リアが小首を傾げると少年は人懐こい笑みで笑った。

「俺、シルって言うんだ。こっちのバカオオカミがラルフ。こいつ、野生のオオカミだった癖に人間の女が好きでな、見ると見境なく飛び掛かっちまって……それで、それを克服するのと、俺自身の修行を兼ねて山籠もりして何日か経ってたからその……溜まって、たんだろうな」

 シルと言う少年は気まずそうに言うが、聞いているリアはもっと気まずい思いをしていた。なんせ、実際に襲われたのだから。

「ほんとに悪かったよ」

 お前も謝れよ、と彼はジト目でオオカミに促す。オオカミのラルフは少しだけ首を垂れて「くぅ」と細く鳴いた。

「いいよ、びっくりしたけど何ともなかったし、アレが居たらもっとややこしかったと思うから、不幸中の幸い……かな」

「アレって言うのは?」

 今度はシルが首を傾げる番だ。

「うん、私の相方。たぶん今上で待ってる」

 そう言って、山の上を見る。

 シルが「見てみたい」と言うので特に断る理由もないリアは了承した。集めた木を再びリュックに戻して歩き始める。すぐにラルフがすり寄って来た。最初はおっかなびっくりだったが、リアも少しずつ慣れてきて、頭を撫でてみたりする程度のスキンシップを取るようになった。やがて樹林を抜け、山の斜面の草葉に出る。その向こうには荷物番をしている飛龍の姿。

「うっひゃあ、すげぇ……これってドラゴン?」

 「便箋上はワイバーンだよ」と言いつつ、エルヴァンに歩み寄る、エルヴァンはすぐにリアの隣を歩くオオカミに気が付いて、目を丸くしていた。ペタペタとスキンシップしながら歩み来るオオカミが近づくにつれてエルヴァンの目が細くなっていく。

「ごめんねエルヴァン、遅くなって」

「いや、それより……」

「えっと、さっき会ったシル君とラルフ。山籠もり中だったんだって」

 荷物を置くときも絡んでくるラルフに構いながらリアは説明する。襲われた、とは口が裂けても言えない。それでなくてもエルヴァンの足は頻りに地面の土を引っ掻いていた。

 日はもう傾き始めている。シルが火起こしを買って出てくれた。

「早い方がいい」

 彼はそういうと木の枝と枯葉を置き、手を翳した。まだ火は無いけれど、そこに火があるかの様に薪に向かって。

「大気のマナよ……」

 静かにシルが呟き始める。それが魔法の詠唱だと彼女はすぐに気付いた。修行とは、魔法修行の事だったのだろう。シルの詠唱以外では誰の言葉もないまま、その動向を皆一様に見つめている。

「呼びかけに応え、此処に熱を……陽光を起点に火炎に帰結せよ……」

 シルが詠唱を始めると辺りが少しずつ暖かくなってくる。しかし一時的なもので、それが過ぎ去ると肌で感じる温度は元に戻り、やがて燃えやすい葉にチリチリと火種が出来上がり、それは徐々に輪を広げて、大きくなっていった。

 火が大きくなるのを見届けると、シルはゆっくりと息を付いた。そこにリアが感心の声を向ける。

「すごいね、魔法って。普通に火起こししてたら一時間以上かかることもあるよ」

 リアの言葉に照れた笑いを返すシル。

「まだまだだよ、俺なんて。時間が掛かりすぎるんだ、できる事もそう多くは無いし」

「そうなんだ……」

 

 彼曰く、魔法とは世界に満ちるマナに呼びかけて操作することで、シルが言うにはマナと言うものは存外、生き物に似たようなところがあるらしい。人の声を聞くことが出来て、欲や悪しき考えを持つ人間から離れようとする性質があるという。しかし特別な道具を使って強制的にマナに命令を与えるのが最近の魔法のようだが、シルは魔法道具を使わない魔法の修行をしているのだ、と語った。

 

 簡易テントを張り終え、外套を地面に広げて寝る場所を確保する。

 ラルフは火が無くとも俺の毛皮が温かいぞ、と言わんばかりにしきりにリアに撫でてもらいにくる。リアは遠慮がちに相手をする程度なのだが、視線が痛い。誰の、とは言うまでもあるまい。しかしラルフにとっては視線よりも目の前の女性の方が重要らしい。ばたばたと尻尾を振り回しながら嬉しそうにリアにくっ付いて頬を舐める。

「わ、くすぐったいよラルフ、ダメだったら」

「おいラルフ、いい加減に……って、聞こえてねぇな、こりゃ」

 音が聞こえる。獣の鳴き声とは少し違う、どんなと言うと雷に近い音だ。遠くの空で雷が鳴っているような音だが、今空はよく晴れ渡っていて、雷が鳴るような雲は無い。シルは訝しんで空を仰いでいるが、リアには音の出元が分かっていた。

(まずい……竜帯鳴らしてる……)

 

 竜帯りゅうたい――主にドラゴンとワイバーン種に備わる、声帯の一種。その器官は音を放つために存在していて、主に警告などに使われ、竜砲りゅうほうと呼ばれる。

 音は個体によって異なるものの、爆音や雷鳴に近い音が多く無音状態からでも限界値の音量を叩き出せるのが特徴だ。至近距離で聞けば鼓膜の破裂や失神など普通に起こりうる。

 警告の理由も個体によって様々で、護身や縄張りに入ったことを警告することが上げられるが、エルヴァンの場合は、怒りの警告。普段温厚なエルヴァンは突然激怒したりしない、まず、雷の遠鳴りの様な警告がある。それで収まらないなら、弩級の落雷が至近距離に落ちてきたかのような爆音が響くことになる。まさに今、このオオカミは彼の逆鱗に触れようとしているのだ。

 

 兎にも角にも彼に竜砲を使わせるのはまずい。耳のいいオオカミがあの音を至近距離で耐えるのは無茶だろう。

「ちょ、ちょっと待ってよエルヴァン! ほら、ラルフも早く退いて」

 ワイバーンとオオカミに板挟みにされて右往左往するリアを見かねて、シルも手を貸してくれた。持っていた槌の頭を持って、柄尻でぽかっとラルフの頭の天辺を叩いた。

「おいラルフ、それ以上やると飯抜きだからな」

 言葉を理解しているのか、それを聞いた途端、彼の耳はパタリと倒れて、尻尾は力なく垂れ下がった。名残惜しそうにリアを見つめた後、彼は焚火の横で丸くなって、まるで捨て行かれた子犬のようになっている。少し可哀想だったか、とも思ってしまう。

「エルヴァン! この程度で妬かないでよね」

「リアはあんな犬の方がいいの? ……僕より」

 絵に描いたような嫉妬の台詞にリアは思わず吹き出してしまう。

「やっぱり鱗より毛皮だよね」

「な、何言ってるのよ!」

 リアはエルヴァンに身体を寄せると顎を撫でながら優しい表情で囁く。

「エルヴァンが一番だよ、貴方が居れば後は何も要らないんだから」

 本心なのだが、臭い台詞だとリア自身思う。それに、この台詞をワイバーンに対していってしまうあたり、やはり普通の人とはかなりずれている。この感性のズレが谷での孤立を深める原因の一つでもあったのだろう、もっとも今更世間に合わせようなどとは思わないが。


「喋れるのか、ワイバーンと?」

 シルは面食らったように目を開いていた。エルヴァンの声はリアにしか聞こえない。それを失念して普通に会話してしまっていた。傍から見れば、今の彼女の行為は物言わぬワイバーンに語り掛けているという奇行にしか見えないのだ。

「えっと、竜使いの谷の生まれだから」

 本当の事を言うと、谷の者でエルヴァンの声を聞いた人間はいないのだが、詳しい原理がリアにもわからない以上説明するのは不可能だった。

 しかしシルはその言葉で納得したらしい。

「……そういうもんだよな」

 と言ったきり、彼は自分が起こした火をただじっと眺めていた。

 暫くの間はそうした静かな時間が過ぎていった。やがて西の空が揺れる炎と同じ色になり始めた頃、リアが立ち上がった。

「晩ごはんの準備しますね」

「じゃあ俺達、そろそろ戻るか」

 うとうとし始めたラルフの頭をぺしぺしと叩きながらシルは言った。

「食べていかないんですか?」

「貴重な食料だろ?」

「そうですね、でもシルさんやラルフと一緒に居る時間はそれ以上に貴重だと思うから」

「だけどな、やっぱり食料が少なすぎるよ、なぁ、ラルフ?このままじゃリアの手料理を食わずに帰ることになるなぁ、残念なことに」

 すると、今まで伏せて眠りかけていたラルフが弾かれたように森の方へと駆け出した。呆気にとられるリアとエルヴァンをよそ目にシルはきしし、と悪戯っぽい笑みを浮かべていた。

ものの数分でラルフは二羽の兎を咥えて帰って来た。二兎を追う者、本気を出せば二兎を得る。とでも言おうか、戻って来たラルフはそれをリアに差し出した。唖然とする二人にシルが加わって、三人でラルフの早業に驚いた。そしてシルが叫ぶ。

「お前っ! 俺と狩りする時はサボってばっかりの癖に!!」

 そう言ってラルフの顔を両手で挟み込んでぐにぐにと揉む。オオカミなのだが、まるで犬だ。もしかすると彼も野生の中では変わり者なのかもしれない。


 じゃれあうシルとラルフを微笑ましく見つめてから、リアは調理の下準備を始める。鹿はエルヴァンが近くの木にぶら下げてくれたので血抜きは済んでいるだろう。綺麗に清めたナイフで鹿をテキパキと裁き、摘んできた大きな葉っぱの上にばらして並べていく。ブロックになった肉に火がよく通る様に切れ込みを入れ、軽く味付けをすれば完成という、いかにも、なサバイバル料理の完成だ。

「ワイルドだね」

 それがエルヴァンの感想だった。

「調理器具が無いのが辛いよ。キノコも見つけたんだけど、よくわかんないし怖かったから止めといた」

「賢明な判断だよ、リア」

 ラルフの捕って来た兎も同じように下処理、味付けと進めて、晩餐の準備は整った。三種類の調味料をそれぞれに振りかけて、バリエーションを持たせる。炭水化物が無いのが残念だ。パンくらい鞄に忍ばせておけばよかったと後悔する。

 シルの荷物から鉄串を貰い、肉を刺して炙っていく。ジワリと油が滲んで炎が俄かに揺らめきを強くした。

「うはー、美味そう!」

 シルが肉を焼きながら率直な感想を漏らす。

「本当、美味しそう」

 リアがブロックの肉をじっくりと焼き、息を吹いて冷ましてからエルヴァンに差し出す。

「うん、美味しい。君特製のピューレソースと少しのサラダが有ればなおいいけど」

「……なんであなたってそんな風に、らしからぬ食べ方なの?」

「君がそう育てたんだ」

 「そうだったかな?」と首を傾げてみるが、ハッキリとした答えは見つからなかった。そういえば幼いころにはエルヴァンに自分が食べる物と全く同じ物を与えていた気がする。

 谷ではドラゴンにはドラゴン用の食事を作る掟なのだが、エルヴァンはワイバーンだからと、屁理屈もいいところな理由でリアは常にエルヴァンと食事を同じくしていた。

「そうかもね」

 と結論付けて、今度は自分の分の肉を焼いていく。

 暫く新鮮な肉に舌鼓を打ちながらの談笑が続いた。


 ――場面は今朝リア達が発った町の酒場に移転する。

 カウンター席に並んで座る二人の背中が有る。片やスラリとした男性。服装こそ違っているが、今日リアにククリを振るった男で間違いなかった。

 もう一人は女性。赤い染料で染めたような髪が特徴的だ。澄んだブルーの瞳には冷たい光が宿っているように見える。底の厚いブーツに、腰までスリットの入った黒のロングスカート、腰には一本の細身の剣が下がっている。どことなく妖艶な雰囲気を醸す彼女は、男に聞いた。

「で、聖剣の在処は」

「ワイバーンと女がウェンズベル霊峰へと向かうのを部下が目撃している」

「ふーん、しかしアンタが直々に赴いてしくじるとはね、やり手なのかい?」

 カウンターテーブルに肘をついて、頬杖を突きながら女性は問い掛け、男は首を振る。

「いや、私の油断だ。初撃を躱されたことに動転してしまった」

「ふふっ、そうかい」

 まぁ、そのおかげでアタシにこうして仕事が回ってくるわけだけどね。

 それに、ワイバーンを駆るという少女、実に興味深い。

「さてと、じゃあアタシはそろそろ行くよ」

「……頼む」

「あいよ」

 後ろ手を振りながら女性は立ち去る。

 カウンターには男と、二つのグラスが残された。

 彼女が外に出ると辺りはもう夕暮れ時だ。鮮烈な赤の髪を靡かせて彼女は町の影に消えながら呟いた。

「さぁてと、お仕事開始だ。同類が面白い奴ならいいんだが……」

 路地の影で歩みながら不敵に笑う。路地裏を縫うように移動し、町の外に出た彼女を待ち受けていたのは、エルヴァンとよく似たワイバーンだった――


 影は既に広がり始めている。

 欲望と目的が複雑に交差しつつある。

 それはこの女性やリア、シル達だけに留まらない、リアを取り巻く黒い影は、まだ、その一角しか姿を見せていない。


無事二月中に続きを投稿できました。

少し早めに投稿して、三月半ば~末までには一話ぶんストックを増やしたうえで三話を投稿せねば!と息巻いております。


作品の目的はできるだけシンプルに出来たつもりなんですが、

世界観とこの物語を通してどういうメッセージを読者に与えるかってのが難しいです……。

公開するからには自己満足のためだけの作品では終わりたくないですね。

少しでも皆さんと世界観なり、キャラクターの心情なりを共感、共有しながら書いていければ、物書き冥利に尽きますね。

今後ともリアちゃん共々よろしくお願いします。

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