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 サイレントウォール 中級持続型消音魔法 普通は内緒話のために使う。

 エアウォーク 初級持続型移動魔法 靴の下を踏みしめるタイミングでそこの空間を封印し、足場にする魔法で、初級とあるが実際に使いこなせるのは中級者以上。

 襲撃事件より5日。

 混乱は収まり、校内放送としては刈谷は正しい判断をした人としてあげられた。

 襲撃者にかけられていた魔法はマインドコントロールといわれる魔法で、かけられたものは術者の命令に絶対服従し、自己はなくなる。これは予想だが、恐らく命令は『将来、自身に勝てる可能性のあるものは殺すな。だが、勝てなさそうなものは殺せ』であろうといわれている。

 刈谷は恐らく最も早くに状況を把握し、最も早く行動した。

 だが、最も恨まれてもいる。

友人たちは変わらぬ対応をしてくれているが、親が操られていた者たちは刈谷に対して陰湿ないじめをしている。

 慣れからか、全く動じていないが。

 坂本と菊池はちょうどそのタイミングには寮におり、この襲撃事件には参加していない。


 刈谷はさも当たり前のように隠された自分のものを取り出し、さも当たり前のようにやった人物を見ている。

 まるで、『お前がやったんだろうが、残念だったな』とでも言いたげだ。

 因みに、昨日ノートを燃やされたときには首謀者のノートは全教科、参加していた者のノートは刈谷が燃やされた教科のノートが燃やされている。

「そういえば、刈谷。今、御三家が来てるらしいぞ」

「へー、御三家が……。でも確か御三家って自分の家で教育しているから表の学校に行っているんじゃなかったっけ」

 確か、御三家は栄木、藤林、中森で木の数が増えているので覚えやすい。

「それが、お前のよく知っているあの事件で学校がつぶれて、今回来る藤林のご息女が行かれる学校をなくしてしまわれて、何の理由で選んだか知らないがそのご息女は自身の偏差値よりも低い学校に行っていたからこの機会に両親はもっと偏差値の高い学校に行くように説得したが……何を思ったか、ここに通うと言い出して一ヶ月の問答の末、ここに来てご息女に利益となるものがあると認めたらここに通うことを許すといったらしい。

 何でもこれから一週間この学校に通ってそれの結果を見て決定するらしい。

 そうだ。お前の元の学校に藤林と言う人は居なかったか?」

 藤林……居たな同じクラスに、もっと言うなら小学校5年のときから中学、高校とずっと一緒のクラスだ。そして……。

 ―――僕のいじめられた理由だ。



 小学校5年の時。

 転校生がやってきて、その転校生はかわいい女の子だった。

 名前を藤林雫といい、明るい子で、その見た目にほとんどの男子は目を奪われた。

 そういう刈谷はそのほとんどには含まれておらず、と言うより刈谷以外の男子は全員目を奪われていた。

 今思うと、先生も怪しげな目をしていたと思う。ロリコンか?

 まだ幼い少年たちの女子の気を引く方法はいじめることだと相場が決まっているし、実際そうだった。

 始めのうちはかわいいものだったが、自分こそと思っているその少年たちはどんどん行為をエスカレートして言った。

 物がないのは当たり前、見つかったら良いほう。体操服はぬれており、いつも見学している。

 そんな中、その少女が刈谷に興味を持つのは少し変だがおかしくはなかったのかもしれない。

 雫は刈谷に興味を持ち、自ら接触した。その行動を見たほかの男子は刈谷に嫉妬し、刈谷も同じようにいじめに加わるよう言ったが、刈谷はそれを無視してさも当たり前のように雫と普通に接していた。

 そのときから刈谷に対してもいじめが始まり、どんどん孤立して行った。

 中学に上がり、刈谷の通うところは一小一中で事実上のエスカレーターだったので場所が変わってもそのいじめは続き、さすがに刈谷には少しは友達が居たが、そのころ雫に友達と呼べるものは刈谷以外居なかった。

 中学二年の冬。

 刈谷の住む地域で大雪になり、せっかくだからと言うことで雪合戦が学校公認で行われた。

 その時雪合戦で刈谷と雫は当たり前のように同じチームになった。何度もいうようだが、雫が転校してきてからずっと刈谷と同じクラスである。珍しいと言うか、作為的何かを今なら感じる。

 雪合戦では始めのうちは普通に行われていたが、途中で誰かが悪知恵を働かせ雪玉の中に石を入れて雫に投げた。

 それを額に受け、雫の額からは血が出ていることに刈谷は気づいたが、他の男子は気づかずまた同じように石入りの雪玉を投げた。

 刈谷はこのとき初めて人前であの目をした。

 元々の二重が幾重にもなり、殺気も出ている。

 刈谷は飛び交う雪玉をすべて掴み取り、目を元に戻した後、雫をつれて保健室へと向かった。その時刈谷にはこういう行動をとるのを誰にも止められないであろう肩書きの保険委員と言うものを持っていたからだ。

 この約一週間後、刈谷は雫に告白され、それを断った。

 理由はあの目で見たとき、雫だけ他とは違って見えたからだ。

 その事実を刈谷は恐怖として持っており、その対象に告白されてうなずくはずもなかった。


 今思い返すと、あのときからいじめはなくなっている。

 恐らくあの目の異常性を子供ながら理解したのだろう。

「確かに居たよ。と言うか、同じクラスだったし」

「ホントか? 仲いい? どんな感じ?」

 ちょうどそのタイミングでチャイムが鳴る。

 これで今日の必須科目の授業は終わりだ。

 ―――直後、少なくとも冒険者時代なら転移してこの場から逃げているぐらいのいやな予感がした。

 この世界にスキルはない。だが、身体的特徴もまたスキルに分類されているので真眼や直感といったスキルは今もある。

 その直感スキルが言っている。『今すぐにこの教室から出ろ』と。


 この後の刈谷の動きは早かった。

 刈谷はすぐさま荷物をまとめ、窓を開け、魔術を唱え始めた。

 だんだんいやな感じは強くなっており、詠唱を終えるとすぐさま窓の外に飛び出すも、友人に「おまえ、さすがにここから飛び降りるのはまずいって」と言われるが、はっきり言ってこの場に居続けるほうがまずいと直感が言っている。

 何とか友人を振り払ったとき、教室の扉は勢いよく開かれ、

「刈谷って言うやつは誰だ!!!」

 大声で叫ぶ上位クラスの男が現れた。


 刈谷は入って来た男に、

「刈谷ならもう教室から出て行っちゃいましたけど」

 と堂々と嘘をついた。

 他のやつらから情報が漏れないようにサイレントウォールまで使っている。

「そうか、どこに行ったか分かるか?」

 ここでわざと少し悩んでいるように見せかけ、

「たぶん寮に行ったか図書室だと思いますけど……」

「ありがとう」

 そういって上位クラスの男は走り去っていく……。

「ふぅ」

 サイレントウォールをとき、当たりの都合に悪い音を入れる。

 いつ気づくか分からないので、今のうちに寮の自室へとエアウォークを使い入る。

 冒険者時代愛用の結界を張り、自室にこもった。


 ―――分かってはいる。これは問題の先送りだとは……。


 感想など待ってます。

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