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「危ない!」

 そういうといたるところから錬金で作り出した短剣を死神に向かって打ち出す。

 それを紙一重で死神はかわし、構える。

 それを見て刈谷はこちらの人の前で始めてこの魔法を使った。

「―――舞え、剣たちよ―――」

 使った魔法は舞い踊る無限の刃。刈谷の固有魔法の一つ。避けられた短剣は空中で雫を守り、死神を貫こうと舞う。

「―――蘇れ、英雄の剣よ―――」

 そういって錬金で作り出した刀を構えつつ言う。鞘に莫大な魔力を込めつつ敵をにらみつける。

 少しの魔力を魔法陣を作るのに向け、作り出したらそこに魔力を注ぎ込む。

『魔方陣の制御と注入魔力は任せた』

『本気だな』

『これのやばさの分からないお前じゃないだろう』

 そう中で言い、現状を把握する。

 短剣は大半が落とされた。そう判断したところで魔方陣の魔術を解き放つ。

『全弾発射、注入魔力の続く限り魔術を連続投射』

『了解だ』

 この空間にいるだけで生命力を持っていかれる。

 それにこいつにはまだ味方がいる。

「危なそうだな、死神。手伝おう」

 そういったやつに魔術が大量にぶつかられる。

「あいつ、化け物か?」

 屋外だったのが原因か、敵の数は200はいる。

「雫、いまいち状況がつかめない。今これはどうなっているんだ?」

「刈谷、入院中じゃ……。

 そんなことはどうでもいいか、ここは藤林家の敷地内。あいつらは私たちを殺しにきた殺し屋。リーダーはあの死神。だけど本当のリーダーは……」

「俺だよ」

 そういうのは家の屋根の上に立っている男。

 こいつだ。この場の死の感じを出しているのは……。

「こいつが一番やばそうだな。死神なんてどうでもよくなるみたいに」

 そういうと男は少し驚いたように。

「おお、分かるか。お前とは気持ちよく話せそうだ。依頼人は一発当てれば殺せる死神のほうが優秀だとか言いやがるからな。まだまだあいつには負けねぇよ」

 そういう姿は嘘をついているようには見えない。

 一度でも当てれば殺せる死神と、こいつでは確かに死神のほうが優秀に見えるが、そうでもない。死神相手ならある程度時間はかかるが魔術主体で戦えば倒すことは可能だが、こいつ相手にそれが効くとは思えない。

「雫、送ってやるから……」

「嫌」

 最後まで言わせずに嫌といった。こいつもどうかと思うが、それが雫だ。

「仕方ないな」

 そういうと大きく息を吐き、吸う。

『魔方陣はできたか?』

『もちろんだ。そっちも準備はできているようだな』

 確認を取ったらすぐに左手を上げ、

「―――さて、誰が敵か分かりやすいのはうれしいな。見方に当てるようなへまをしなくてすむ」

 その台詞を本気に取れた敵は屋根の上の男と死神だけだった。

 左手を下ろし叫ぶ。

「―――全工程省略(カット) 全弾連続掃射(バースト)

 刈谷の背後に魔法陣が浮かび、そこからさまざまな魔術が飛び出す。

 炎が敵を巻き込んで爆発し―――エクスプロード―――、水が敵を溺死させ―――タイダルウェイブ―――、風が敵を吹き飛ばし―――サイクロン―――、土が割れ敵を落とし―――クラックグランド―――、闇が敵を滅し―――イリミネイト―――、光が敵を裁く―――ジャッジメント―――。

 無論、それに対応できるのは先ほどの台詞を本気に取れたもののみ、つまりは死神と屋根の上の男のみだった。

 死神は攻撃をすべて鎌と魔術で相殺またはかわしたが、それでもかわしきれずいくらかのダメージを負う。

 屋根の上の男はすべてを魔術と短剣で打ち落とした。

 だが、それ以外は全滅。全員からだのどこかに穴が開き、生命活動を続けられそうになかった。

「―――全工程完了(コンプレッション) 追加攻撃(ネクスト)……(ノウ)工程終了(エンド)

 背後の魔方陣は消え、今度は地中から魔法陣が現れる。

「―――工程開始(セット) 全弾連続掃射(バースト)

 左手を振り上げ、魔方陣からいくつもの剣が天に打ち出される。

 宙が剣で埋め尽くされたところで、

「―――舞え、剣たちよ」

 剣たちがそれぞれまるで円舞曲を踊るように舞う。

「こいつはまずいな……!」

 男が一つ一つ丁寧に対応しながら言う。

「軍隊が出てきたかと思うほどの魔術じゃないか……なんでこんな奴がこんなところにいるんだ?」

 その疑問はごもっともだが、そういったところで剣が止まるわけでもない。

「―――敵の全方位から剣たちよ、貫け」

 それに対応できるものは早々いない。というよりこれに対応できればそれこそこんなところにいるのがおかしい。

「ワープ」

「―――ワープ」

 敵は二人ともワープを使ってそれを回避する。

 だが、そんなことは分かりきっていることである。

 宙にある刀を一つつかみ。

「―――魔剣技 無―――」

 無をもって死神を切り裂く。

 すばらしい反応速度でその直撃を防ぎ、防御できたであろう、先日のものであれば。

 大鎌は切られ左腕は切断されている。

「――――――!」

 直後、刈谷は大きく後ろに下がった。

 先ほど刈谷がいた位置には何もないように見えるが、実際にはそこだけ空気がなかった。

「外したか。結構反応速度も勘もいいな」

 おそらく固有魔法。指定空間の空気をなくすもの。

「死神はだめだな。あの一瞬で対応するなら回避が正解だがそれをせずに受け止めようと思うとは。敵の技の効果が分からないなら受け止めるのは下策だとあれほど教えたんだが……思い上がっているのか?」

 台詞の意味は分かる。同じ意見だ。

「面白いタイミングで来たみたいだな」

 男がそういって上を見る。

 翼を持つ騎士。莫大な量の魔力。魔術を打ち消す剣を持った女騎士。

「ナディアか、タイミングが悪いな」

 あいつ曰く、こいつが見られるのがまずいらしいが、これは確実に見られたな。

『見られたがどうする?』

『仕方ない。死んでも知らんぞ』

『安心しろ。祟る気はない』

「お、お前こいつを知っているのか?いや、面白い」

 心底面白そうに男が笑う。

「まさか慎吾、お前もだったとは……まあ、やることは変わらないのだが」

「やることだと?」

 そういうとナディアもまた屋根の上に立ち、こちらを見下ろし、

「お前を殺す。こいつも殺す。それだけだ」

 そういうとナディアは刈谷の手にある剣が砕けるのを見た瞬間、こちらに向かってきた。

「っち―――――!」

 魔術を放ち、速度を落としたがそれでも間に合わない。

「なっ――――――」

「っち」

 ナディアの剣が振り下ろされるとき、刈谷とナディアの間に人影が入った。

 それでもナディアは剣を止めず、その人ごと刈谷を切ろうと剣を振り下ろす。

 人影は刈谷を突き飛ばし、その人影だけがナディアに切られる。

 血が飛ぶ。その血はナディアの剣と鎧、顔に飛び、そして刈谷の元にその人影が飛んでくる。

 反射的にその人影を受け止め、ナディアに追撃をさせないように剣を作り、握る。

 それを見たナディアは大きく後ろに飛び下がり、緊張が少し緩む。

 そして見た人影の正体は悪い予感を的中させた。

「なんて顔してるのよ。もっとしっかりしなさい」

 雫は血まみれになって、今にも死にそうになっても刈谷を心配していた。

「――――――っ!」

 いっそのこと罵ってほしかった。思い切り罵倒されたかった。

「泣きそうになって、あんた一度もあれから泣いてないんじゃない?」

 そうじゃない、もう何度も泣いた。

「あ、そろそろやばい。

 ―――じゃあね天国か地獄かがあるならまた会いましょう、今度こそ円舞曲の相手してほしいな……」

 そういうと満足そうに目を閉じ、そのまま息絶えた。

「―――残念だが、死んでも会えそうにないな。お前が行くのは天国だが、僕が行くのはまず地獄だろうから……」

 そういうと涙を拭き、腰の剣を構える。

 作り出した剣は使わない。さっきは時間的に使えなかっただけ。今なら使える。

 問う。

「なぜあそこで剣を振り切った。お前なら切らずに止めることもできただろう」

 問う。

「なぜ他人を巻き込んだ。お前なら邪魔されないように眠らせるだけということもできただろう」

 問う。

「なぜお前は戦う。お前にはそれ以外にできることがないのか」

 問う、問う。何度でも問う。それに対する答えはひとつだった。

「それがどうした?」

 魔力の枷が外れる。脳が掛けるストッパーを破壊する。

「そんなことは決まっている。邪魔だったから殺しただけだ」

 屋根の上の男はその魔力に、そのプレッシャーに一歩下がる。

「そうか、ならもう答えなくていい。お前は殺す。僕が殺す」

 口調は淡々としていて、殺気もない。だが、それに対してナディアもまた後ろに下がった。

「―――魔剣技―――」

 無かとナディアは思った。そしてあのスピードなら簡単によけられるとも思った。

 無かと男は思った。だが、あれをナディアがよけられることは刈谷も気付いていることに気付き、違うものだと直感的に思った。

「―――絶―――」

 ナディアには見えなかった。男にも見ることはできなかった。

 気付いたら刈谷はナディアの後ろにいた。

 それに気付いたとき刈谷の声が聞こえたのだ。前方から“絶”と。

 次の瞬間、世界は、ずれた。

 剣に一本の線が入り、鎧にも肌にも、ただ一本の線が入り、それしかなかった。

 だが、それだけではなかった。

 ナディアも男も動けない。動くことができない。

 動いてしまったら死ぬから。わずかにも動いたら死ぬから。

 だが、それもどちらでも同じと気付く。まだ刈谷はここにいるのだ。

「―――魔剣技 焔―――」

 まるで雫を弔うような大きな炎が二人を包み込み、焼き尽くした。



「こんなところにいたの」

 そういうものは誰だったか……。

「はあ、そうやって腐っていくのはいいけど、さすがにせっかく参加したパーティーぐらいちゃんと踊りなさいよね」

 ああ、菊池か。

「ほら、あそこであんたを呼んでる。踊ってきなさい!」

 そういって背中を叩かれる。結構痛い。

「そんなに出たくないんですか?どちらかと言えばこういったものには皆さん出たがっている印象があるんですが……」

 そういうのはいつかそう聞いてきた女。それに対し僕は遠い目をしながら答える。

「円舞曲は、もう、踊りたくないんですよ」

 そういってその場を立ち去る。


 その後、刈谷の行方を知るものは少ない。

 一説には天使とともに戦死、一説には雫を守れなかったがために自害したとさえ言われている。

 だが、彼らは知らない。雫の墓には常に新しい花が添えられていることを……。


 魔剣技 絶:先日確認した現象を使った空間断裂をする魔剣技。防御方法はなく、回避するしかないが今回の刈谷は物理法則を魔術で無視して光よりも早く移動しているため事実上不可能。

 多くの“ため”の時間が必要で、発動後数秒で剣は自壊してしまう。が、自壊するまでの数秒間、空間は断裂しているため、自壊する前に敵が動く、致命傷となる攻撃をする。の二つのうちどちらかさえすれば敵は確実に死ぬ。

 本来は突撃する技ではなく、無を見せた後にやる技で、カウンター技である。

 無を見せた後にやる理由は敵が無だと勘違いして突撃してくれるため。今回はナディアが回避できると思ったから自分から突撃する羽目になった。ちなみに突撃するといくつか欠点が出るらしい。


 この話はこれで終わりです。感想、評価があるとうれしいです。

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