11
一日に他作品とあわせて二つ投稿。
疲れた。
刈谷は本当に気になったことがあると、調べないと気がすまないたちである。
今の刈谷の興味は、自分の目の秘密、何故自分は魔術が使えるか、と言う点に集中していた。
目の秘密は雫に言われたSEから、魔術の点も雫に言われた魔術が使えないはずだった。と言う発言よりだ。
少し冷静になって考えてみると、どうやら僕はなんだかんだと言って雫のことを自分の中で大きく思っているのかもしれない。
いろいろと雫関係で面倒ごとになっても突き放していないのだからいまさらという気もするが……。
それはともかく、この目について、やはり気になる。
まず、精霊であることはほぼ確定している。
状態から考えて、中位の精霊の契約、もしくは最上位の精霊の仮契約状態。
仮契約とは、本契約をする前の状態をいい、身体を精霊に提供している状態を言う。これだけでももとより魔力が増える。そもそも精霊は意思を持った魔力の塊なので当たり前である。
僕が元々魔術が使えないということを念頭に考えると、恐らく精霊と契約、または仮契約したことにより、魔力が身体をめぐり魔術が使えるようになったと考えるべきだろう。
因みにこの理論は魔術の使えないものに魔術を使えるようにさせる方法と理論は同じだ。
となると、仮に精霊と契約しているなら、何故精霊が出てこないか、さらにはこの目との関連性だ。
精霊は契約相手の呼びかけにこたえる義務がある。しかし、仮契約ならば別だ。
仮契約は便宜上契約と称しているだけで、ただ住んでいるだけなので精霊に宿主の呼びかけに答える義務はない。
そうなると、今の刈谷は仮契約状態。それなのに刈谷が強い特殊能力を持っているということは相当に強い精霊であることが予測される。
目の特徴を一言で言うならすべてが見える。だ。
やったことはないが、恐らく透視も出来るだろう。もしかしたら未来視もできるかもしれない。
精霊は人の概念が自然の魔力を核に魔道生命化したものだという説があるので、一つこの精霊の存在に心当たりが出来る。
―――ラプラスの悪魔を知っているだろうか?
ラプラスの悪魔は世界に存在する全ての原子の位置と運動量を知ることができるような知性が存在すると仮定すれば、その存在は、これらの原子の時間発展を計算することができるだろうから、その先の世界がどのようになるかを完全に知ることができるだろうというものである。
刈谷の記憶が正しければ、それは量子力学によって否定されているが、このさいはどうでもいい。
イメージとしては、これがぴったりのような気がするのだ。
すべての事柄を見ることができる目、後はそこにそれを計算する知性があれば未来が見える。それを何となく。で感じているから刈谷は勘がいいのかもしれない。
そう考えるとつじつまが合う。
ラプラスの悪魔という概念が魔力を持って魔道生命化した。そう考えるのだ。
すべてを知っている。すべてを知覚することができる。つまり、すべてを見ることができる。仮契約だからここまでなのか、本契約をするとどうなるのかは予想はつかない。
―――だが、それだけでは契約はできない。
契約は正直しなくてもいいと思っている。目は今のままでも十分すぎるほどに自分に力を与えている。
―――それでいいのか?
力に対する欲求。力を欲する気持ち。そんなものは人が人である限り、逃れることはできない。それをなくしたとき人の成長は止まる。
―――それがどうした。そこまでほしいものでもない。
悩むな。この逡巡も、すべては不必要だ。僕はただ知りたいだけだったんだ。
―――そうだ。僕はただ知りたいだけ。この目の中の存在を。
『そうか、では答えを言おう。正解だ。刈谷慎吾、お前は私の予想より早く私の存在に気付いた。賭けはお前の勝ちだ。それでは、私はお前から奪ったお前の記憶を返そう。そして、契約だ。お前は私の思ったとおり、逆神だ。おまえなら、神であっても、その理性の、その考えが違う限り、その相手をたたき伏せるだろう。約束どおり、お前は私の願いのために動き、私はお前に力を貸そう』
記憶がよみがえる。
あの日の思い出。
ずっと忘れるつもりのなかった。けれども一瞬で忘れてしまった。過去の思い出を。
夏、僕は親に連れられてキャンプにやってきた。
山奥のキャンプで、歩き回っていくうちに道がわからなくなり、泣いてた。
さらに歩き続け、ちょっとした段差に躓き、坂を転がっていった。
そして、木の幹で頭を打ち、気を失った。
『お前は、この世界をどう思う?』
声が聞こえた。
『幻想を抱かせ、運命というものに縛られ、神によって動かされるこの世界を』
よくわからない。そうとしか言いようがない。
『考えることを放棄するな。神という存在に結果を縛られる世界をよしとするのか?』
ちょうどそのころ飼っていたペットが事故で死んでしまった刈谷はそれを良しとできなかった。できなかった。正義の味方にあこがれている少年に、理不尽な結果を良しとすることはできなかった。
『ならば、そのためになら、神に逆らう覚悟はあるか?』
―――そんなことは決まっている。たとえ神が許しても、彼にはその神を倒すことで救えることがあるのなら、その神を倒す。
『そうか、だったらお前を試す。我を思い出せるか、想像出来るか、神を殺せる力を持つか……』
刈谷が気を失って少ししたころ、刈谷の両親が探索の魔術を使って刈谷を見つけ出す。そのとき、刈谷はそのときの会話を忘れていた。
思い出した。あの日の約束を。契約を。
“目”を開くと、そこにはいつも以上のものが見えていた。
『ラプラスの悪魔なら、未来は見えるのか?』
『見えない。それはまだ決定していないからだ。精霊の本質はこの運命への反逆。その運命を決定しないことが目的なのに見えるわけがないだろう』
『それもそうか』
会話はスムーズにできる。
目を使うと微量にだが魔力が持っていかれているようだ。
『そういえば、お前は精霊魔法を使えるのか?』
『性質としては今お前が使っているものだ。“すでに決定したすべて”を知れる』
つまりは過去と今は見えるが、それ以外はできないということだ。使えるというか、微妙なところだ。しかし、そこまで問題はない。刈谷はさほど攻撃手段に困っていない。
―――コンコン。
ノックの音がする。無視してもいいが、少しいやな予感がする。
『これもお前のおかげか?』
『間接的には、お前はもともと勘がいい。そこに今の現状を知れるものがいればその確率も上がるだろう』
そういわれるといやな気しかしない。きっと見ようと思えば向こう側の人も見えるのだろうが、それはしないようにする。あまりそういったことをやりすぎると後で困るのは自分だ。できるだけ今までと同じことをしたい。
「はい、どちらさまで?」
そういって扉を開けると、なにやら人型の…いや、人がこちらに飛び込んでくる。
ほぼ反射的に回避し、それを確認すると、
「やっほー、慎吾。お姉ちゃんでーす」
姉を名乗る女が立っていた。
感想待ってます。




