壱章・巻七「鼠は潜る、小さな綻びから・前」
白雨から依頼を受けた。
でも変わらず彼女は──礼菜は学校へ来ていた。
いかに政府の最高機密である部隊員たる彼女だろうとも
一般人としてのカモフラージュが必要だ。
故に北風らも同じように隠れ蓑を被り生活していた。
彼女の蓑は小学生。
そう、今回の依頼は「小学生ハッカー」の検挙だった。
しかも、その星とされている者は礼菜の親友である
黒崎 雪絵であった………。
(うぅ~……お国のためだけど……つ、辛いよ……)
(何が嬉しくて友達を検挙しないといけないのよ……
で、でもやらないと皆が困っちゃうし…
お父さんから引き継いだ「七獣」だもの……やらなきゃ!)
心の内で、葛藤し、礼菜は覚悟を決めた。
親友だろうとも、国のため皆のために捕まえて見せる、と。
(でも、変だなぁ……)
ふと歩く中で、礼菜が思う。
(雪絵ちゃん、絵に描いたよう機械オンチなんだけどなぁ…。
そんな子がどうやってハッカーになったんだろ
……今週、ちょっと家に行ってみようかな)
東郷ほどとは言わないが、頭の中で
小学生とは思えない計算を繰り広げる。
もちろん、内容はすべてどうやって礼菜を捕まえるかだ。
(まぁ、ちょうど苦手教科と得意教科は交互だし勉強会名目が一番かぁ)
ピン、と礼菜がひらめきそのルートを進めるように
また思い、考える。
彼女が学校を通り越しそうになったのはまた別の話。
───時間は飛び、帰り道。
「ゆきちゃん、ちょっといいー?」
「んにゃ?なにれいちゃーん」
お互い親しみを込めたニックネームで呼び合う
礼菜と雪絵。しかしその礼菜の裏側は雪絵には想定できないだろう。
彼女の本当の姿もまた、永久の秘密となる───はずだった。
「もうすぐテストだからさっ、お泊り勉強会やりたいと思うんだけどー」
「いいねっ!私も困ってたんだぁー」
まぶしいほどの笑顔で礼菜に雪絵は答えを返す
その瞬間に生まれた黒い一面を彼女はまだ知らない。
お久しぶり、になるのでしょうか。
この子…礼菜だけはどーにも動かしづらくて
ついつい更新が停滞してしまいました。
兄の助け舟の下なんとか書き上げれて頭が上がりません。