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タビガラス ──七獣と呼ばれた者達──  作者: 28円玉
壱章「七つの獣の意味」
1/13

序章 「再集結・壱」

かつて、この国の政府はとある七人を抹消しようとした。


その前に政府は倒れ、新たな時代となる。

この物語はカラスのように、自由気ままな男を中心とした

とある7人の物語。




かつての静けさを完全に失い、新たな時代が中心都市と

選んだ都市「旱戒かんかい」。


その都市に、いかにも場に馴染もうとしない意思を放つ

男が一人足を踏み入れる。

なぜ馴染まないか、それもそのはず、服装は今の時代に袴と紋付きである上

腰には刀が差してあり、履物は草履という有様であった。

周りからはクスクスとあざ笑うような声がするが男はそんな声を

関係ない、と言わんばかりに無視し路地裏に踏み込む。


「表はあまりにも変化してしまったが、裏は変わらんままか」


男が旱戒に入ってから初めて口を開いた。

その口には笑みが浮かぶ。


何十歩か歩き、立ち止まるとあたりをきょろきょろと見渡し始めた。

数十秒かして男の顔が止まるとその目線の先に

こじんまりとしたバーがあった。


「あのじじい、おとなしく生きてりゃいいんだがねぇ………」


やや悪態と言った調子でバーに歩を進め、戸を開ける。

そして、次の瞬間にそれを閉じた。


「じじいてめぇ!俺じゃなかったら死んでたぞ!」

「黙れぃ!お前もタイミングが悪いわっ!」


いきなりの怒鳴りあい。

バーのテーブルには老人が立っており、その右手には

あきらかに柄の悪い若者が伸びたまま胸倉を掴まれている。


「包丁なんざ投げやがって……てめぇ、本気でこの戸を

 開けるやつ殺す気だったろ?」

「あたりめぇじゃ、この若造がわしが誰かも知らずに喧嘩を

 振った上に不利になると仲間内を呼びおったからの」


老人があざ笑うかのように若者の所業を述べると男は納得した

表情をしていつのまにか意識を取り戻していた掴まれていた若者に近づいた。


「あんたも馬鹿だな……喧嘩を売るなら人を見極めろっての

 このじじいはかの穂影禅持ほかげぜんじだ。

 生きてただけありがてぇと思え」


穂影が胸倉を掴んでいた右手を話すと

若者は一目散に出入り口まで……逃げたものの、開いた扉に

顔をぶつけ再び伸びてしまった。

開いた扉の裏にはまた、男が一人。


「おや、タイミングが悪かったかな……?穂影さんに……北風。」

「ずいぶんと早い到着だな、会社はいいのか?」


扉を開けた一人の男は白いスーツに身を包み、青い縁のメガネをかけ

いかにも金持ちとわかる姿をしていた。


「あぁ、とっくに書類仕事は全部終わらせたよ……まったく

 僕一人に負けるなんて、この世の中どうなってるんだか」

「おめーが異常なだけだ、東郷」


北風。そう呼ばれた男が悪態交じりに東郷に言い放つと

一気に目の間に火花が散り始める。

その様子を見た穂影が両者の間に入り込むように仲裁した


「まったく……お前らはいつもそうじゃ。

 ちったぁ仲良くせんかい……」

「……何言ってんだじじい、ボケたか?」

「そうですよ、僕らは前からこうだったじゃないですか」


穂影が二人から聞いた言葉にはぁ、とため息をつくと

今まで硬いままだった表情が笑みに変わった。


「ふん、変わらんようで安心したわい。

 …まぁ飲め。今日は奢ってやる」


気がつかぬまま、テーブルから離れていた穂影が

テーブルの内側に戻り、かがんたと思えば次には

だいぶ大きな酒瓶がおかれていた。


いがみ合っていた、そう言える二人は瓶の置かれた音を合図に

カウンター席にそそくさと腰掛けた。


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