少女の笑顔
ある日の寒い冬のこと、一人の少女が体を震わせながら早足で帰っていました。
ここで、くしゃみを一つ。
去年より断然寒く、防寒具もまともに買えない少女はなんだか暗い顔をしていました。
彼女の心の支えは、美しく光るお母さんの紫色のブローチただそれだけ。
昔は綺麗だと思っていた雪も今となれば、自分の体を蝕む病気のように感じていました。
両手でブローチを大切そうに包んで帰っていると、暖かい笑い声が聴こえてきます。
その方向を見てみると、赤いレンガ造りの家の窓から暖かそうな光がきらきらと道に射していました。
「…」
少女は、自分の細い手足を見てため息をひとつ。
そのため息が彼女の心をいくつか癒していきました。
そして、次の日も同じく例の家を通りました。
やっぱりあの笑い声が聞こえてきます。
いつしか少女の耳には、この笑い声が自分に対してのものなのだと思い込むようになりました。
彼女の目に映っていたのは、きらきらとした窓からの光と外を見て笑う大きな影だけでした。
漠然とした絶望感ばかりが重なり、目を背け、全てを捨てて逃げ出そうとした時、突然耳に響いていたあの笑い声が消えたのです。
「……」
彼女は、自分がこの世のものではなくなったのではないかと思い耳の近くで手拍子を一つ。
パンッ!
小気味の良い音が聞こえて、少女はホッとします。
後ろを振り返り、再びあの窓を見てみると、相変わらずきらきらとした光がそこにはありました。
しかし、先程までこちらを見ていた影がありません。
彼女は、不思議に思いました。
いつまでも耳に響いていた笑い声が急に止まるはずがない…と。
少女はいつの間にか、あの家の中に入りリビングのドアを開けます。
そこには、綺麗にきらきらと光る暖炉の火、美しく仕立てられたカーペット、暖かいココアの匂い、そして、中央で倒れるお爺さん。
そこには、少女の求めているもの全てが揃っていました、ただ一つを除いて。
少女は、ブローチをカーペットの裏に隠しお爺さんを引きずります。
そして、まだ燃え盛っている暖炉の中に放り込みました。
「きらきらしてるでしょ?よかったね」
彼女は、今までにないほど美しく笑い、きらきらの世界の仲間入りを果たしましたとさ。




