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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

140字小説まとめ22

作者:

大学に入学して、新しく友達が出来た。必修授業で一緒になり、波長が合ったのだ。度々昼休みで一緒にご飯を食べたり、遊びに行ったり、楽しく過ごした。けれど、大学内でその子を見なくなった。心配で連絡すると、すぐに返信が来た。

『気になる授業、全部もくりし終えたから、大学は行かないよ!』


『誰なんだ、君は』







隣の部屋から、叫び声や怒声が聞こえてくる。

「おい、誰かに聞こえたらどうする」

「……道連れにするまでだ」

俺は布団にこもって震えた。隣人は、人相が悪い二人組だから、下手に通報する事もできない。泣き寝入りするしかないのだ。


後日、テレビでその人たちが出ていた。任侠映画の演者として。


『練習』








鳴きもせず、じっとこちらを見る黒猫は、とても綺麗だった。私の前に座って、動きはしない。横切ると不幸になるという迷信の、反対みたいだ。


「うち来る?……なんか、飛び降りるの馬鹿らしくなっちゃった」

橋の欄干に鎮座する黒猫に、手を伸ばした。黒猫は匂いを嗅いだ後、手をペロリと舐めた。


『訪れ』







「これが私の主人の孫なの? 二人揃って地味なのは、隔世遺伝ね!」

愉快そうに笑う、帽子を俺は悔しそうに睨みつける。僕は小声で呪文を唱えてから、呆れたように言い返した。

「ばあちゃんが死んで悲しいのを、無理に隠すなよ……みじめだぞ」

「なっ、……! 心を読む魔法を使うな!」


『ツン魔女帽子』







パンプキンライトを作ろうと、大きなカボチャの中身をくり抜いた。あとは、顔部分だ。突然、インターホンが鳴った。ハロウィンパーティの飾りが、届いたらしい。荷物を受け取り、パンプキンライト作りの続きを……

「わー!」

かぼちゃの中から、息子が飛び出た。尻餅をついたのは、言うまでもない。


『びっくり箱になった』








彼女とのデートで、お化け屋敷に行った。可愛い反応が見れたらいいな……という、期待は淡く消えた。彼女は驚きも泣きもせず、笑顔でサクサク進んでいく。

「あんまり怖がらないんだ……」

彼女は俺の方を向いて、にっこり微笑んで頷いた。

「本物は、もっと怖いよ。君の後ろに、いるやつとか」


『怖い発言』








「コウモリさん、コウモリさん」

ぼやけた夜空に、豊かな月が妖艶にコウモリを照らしている。

「こちらへ、いらして」

明るい所は苦手であるが、コウモリは行きたいと強く思った。微笑んでいる月に向かって、一直線に飛ぶ。

コウモリはやがて、夜闇に溶け込み、姿が分からなくなってしまった。


「誘惑」







「これ、食べる?」

友達から何気なく差し出されたキャンディを、一口食べた。その瞬間、スッと身体が軽くなり、心も良くなった。今まで暗く生きていたのが馬鹿になるくらい最高すぎて笑いが止まらないほんとおかしいもうなきそうもっとたべたいもっとほしいもっともっと

「この薬、効くみたいだね」


『おかし、否』








息子の死体が、消えた。葬儀が始まる前日に。また、息子の妻も、同時に行方不明になった。警察に通報して、事情を話したりしていると、玄関で物音がした。見に行くと、息子の妻が立っている


「すみません。生き返らせるのに、手間取って」

フランケンシュタインとなった息子と手を繋ぎ、立っていた。


『蘇らせる』







「今日ね、授業で手を上げて答えたら、正解だったの! 先生に褒められた!」

お母さんは嬉しそうに頷いて、僕を見守っている。その内、奥からお父さんに呼ばれた。

「また、お話しするね」

お母さんに手を振ると、スッと消えていった。


お仏壇に飾られたお母さんの写真は、いつもより笑顔に見えた。


『いないけれども』






大きな蝶が、蜘蛛の巣に絡みついていた。蜘蛛は喜んだ。何日ぶりかの、ご馳走だったからだ。だが、蝶は糸が纏わりつくなか、命乞いをした。

「お願いです、見逃してください。私はお腹に、卵がいるんです。せめて、葉に卵をつけた後でいいから」

切実な訴えを、蜘蛛は最後まで聞いた。そして、食べた。


『生態』








夫が生肉の血を、一心不乱に啜っていた。私に気が付くと、夫は目も見開いた。

「大丈夫よ。貴方が吸血鬼だってこと、知ってるし」

夫は拍子抜けしたようだ。力が抜いて、へたり込んでいる。可愛い、吸血鬼なのに気弱くて。血を吸うことを我慢している貴方のために、人肉の塊を用意して良かったわ。


『愛するために』







おばあちゃんが作る、パンプキンパイが大好きだった。台所から見える、小さな後ろ姿をじっくり観察したものだ。今は、できない。私が台所に、立てる年齢になったから。背中は、もう見れない。

「なんか、違うなぁ」

大好きな、味も作れない。

自分で作ったパンプキンパイは、沢山余ってしまった。


『あじ』







夜闇で覆われた森は、言いしれようない恐怖感に満ちていた。何度も、私はそこに迷い込む。ずっと抜けられなくて、当てもなく彷徨う事もある。ひょんなことから、抜け出すことができて、光の下へ立つ事もある。だが、光は一瞬だ。黒く塗り潰した森が、迫ってくる。


嬉しい。また、光を見つけられる。


『試行錯誤』








ずっとフラレ続けていたが、ようやく恋が叶った。彼女は「あーあー!」と声を上げて、僕に近づいてくる。それに、感動してしまう。いつも、逃げられてばかりだったから。彼女の口に猿轡をつけてから、抱きしめる。念の為、手には拘束具をつける。


俺以外がゾンビになった世界、最高だなぁ……。


『実った初恋』







——寒くない? 

——ガウンを着てるから大丈夫だよ。

——良かったわ。でも、そろそろ、お身体綺麗にし合いましょ。

——そうだな、きちんと磨かないと、崩れてしまうよ。


夫は、カラカラと顎を鳴らして笑った。私も釣られて、顎を鳴らす。死後百年記念日は、骨だけとなったお互いの身体を拭き合った。


『死後記念日』







娘の夜泣きが、止まらない。どんなにあやしても、空気を引き裂くように泣き喚く。思わず、拳を握った。

「ご本、読もうね」

夫が娘の隣に寝転び、絵本を読み聞かせた。すると娘はピタリと泣き止み、暫く聞き入って、夢の中へ。魔法、みたいだ。絵本の作者である夫は、娘の頭を優しく撫でた。


『夫の魔法』







「月が綺麗ですね」

愛を伝える、有名な言葉だ。だからこそ、陳腐に聞こえる。

「人の言葉じゃなくて、貴方の言葉がいいわ」

「ごめん、勇気が出なくて……」

情けない震え声に、私は深く溜め息をついた。……これも惚れた弱味かしら。

「じゃあ、私が代わりに言うわ。一緒にいなさい……一生ね」


『自分で紡ぐ、愛の言葉』







私は、丸いものを見ない。見たら満月を連想して、狼に変身してしまうから。特に、人間の彼とのデートは気をつけていたのに。

「結婚して下さい」

差し出された丸い指輪を見て、変身してしまった。怯える私に、彼は声を掛けた。

「僕もだから……黙っててごめん」

彼は……狼男は、微笑んでいた。


『同族』







ずっと、人形が戻ってくる。遠くのゴミ捨て場に捨てても、神社でお焚き上げしても。乱れのない金髪と、傷一つない身体で、玄関前に座っている。まだ、私の元にいたいと思っているんだ。

「また捨ててあげるから、頑張って来てね」

青い目を見つめて微笑むと、人形の首が微かに動いた気がした。


『どちらも呪い』








祖母から、特別な見分け方を教えられてきた。害のあるりんごは、紫色、逆にいいのは金色だと。物だけではない。何か秘密を隠している人は青色に染まり、危険な人は黒い色になる。おかげで人間関係は、円滑に進んでいた。

でも、結婚相手は青くて、どす黒い人を選んだ……惚れた弱味っていうやつさ。


『毒々しくても』







私の上に乗って、飛んでくれる魔女が亡くなった。一緒に逝きたかったのに、笑顔で拒まれたのだ。

「これから、あなたは自由に飛び回れる。その素敵な景色は、あなたの心を豊かにしてくれるわ」

どれだけ綺麗な景色を見ても、重みがなくちゃ意味ないの。アンタのところまで飛んで、そう吐き捨ててやる。


「待ってなさい」







ユリの柄が張りついているキャンドルライトをつけている間、願いが叶うらしい。試しに、願ってみた。冷たくないご飯、優しいパパとママ、私と遊んでくれる友達……。全部、全部叶った。キャンドルライトの、おかげだ。……あ、光が段々消えていく。

 

……もう、願いは幻みたいに、消えちゃうんだ。


『幻影』








蜘蛛の刺繍が施されたドレスを着ていた叔母は、蜘蛛女と言われていた。周りから気味悪がられているが、私は好きだ。

「貴女がいてくれると、幸せよ」

毎回そう言って、愛してくれるから。


数年後、意地悪な両親が、原因不明の事故で亡くなった。引き取り先の叔母は、意味ありげに目配せをしていた。


『福を絡めとる』







パーティーの途中、盛り上がっている波から外れ、柱にもたれかかる。

「どうしたんだよ」

イケメンになった友人が来たから、少し休憩中と返事をした。

「確かに、俺も疲れたわ……これ外そ」

友人は、イケメンの顔を外した。

「人間の仮装パーティーって楽しいけど、顔つけるの苦しいんだよなぁ」


『化ける』








「かぼちゃの花言葉は、『広大』なんだよ」

大好きな彼が、昔教えてくれた。実家は農家で、後を継ぐから色々勉強しているらしい。眩しい笑顔に、目を逸らした。まだ若すぎたのだ、あの時は。


「重い?」

旦那が心配そうに声を掛ける。けれども私は、トラックに軽々と、かぼちゃ達を乗せたのだった。


『実った』









今日は、受験当日だ。緊張している私を見かねて、祖母がコップに入った綺麗な緑色の液体を差し出した。

「幸運を呼び寄せる薬だよ」

爽やかな香りが、不思議と心を落ち着かせた。その後、自分の実力をきちんと出せた。祖母にお礼を言うと、笑顔を向けられた。

「あのハーブティーは、験担ぎに最適ね」


『ただのお茶』








手で君の首元を押し当てても、床に広がる赤を食い止めることはできなかった。こんなはずじゃなかった。守ることが出来なかった。全ての危険から、君を……。強く、唇を噛んだ。


外界が危ないと散々言って来たのに、それでもここを出ようとするから……。俺と、一緒にいる事を、拒否するから……。


『仕方なく』







仮装した子供達が、毎年ハロウィンに、お菓子を貰いに来る。「とりっくおあとりーと!」って。けれど、今年は子供達は来ないだろう。俺が幽霊になってしまったから。だが、子供達は家の前に来た。

「ありがとう!」

沢山の花とお菓子を、両手いっぱいに抱え、俺を確かに見て、涙ながらに叫んでいた。


『感謝の訪問』








今日の晩ご飯は、大好きなカレーだった。

「別れよ」

そして、恋人から別れを切り出され……ちょっと待て。慌てて指輪を渡した。

「今日のカレーは、恋人として食べるのは最後だけど、夫婦として最初に食べたいです……これ言いたくて、カレー作るまで待ってた」


恋人は笑って、指輪を返してきた。


『失敗……!』







子供たちが、お化けの仮装をして、お菓子を貰いに行ってるね! ゾロゾロ並んで、可愛いなぁ……よし、僕たちも混ぜてもらおう!


『『『ハッピーハロウィン!』』』


僕達が茂みの影から出たら、子供たちは逃げて行った。


面白いね! お化けの仮装をしているのに、本物のお化けで逃げちゃうなんて!


『ハッピーハロウィン!』







ほわり、ほわり。枯れた花弁が、頭上に落ちる。目の前で、大きな赤い薔薇が萎れて、散っているからだ。

「もう、私は……」

絞り出した薔薇の声に、私は笑顔を向けた。

「最後までひとりには、しないよ」

薔薇は安心したように、花弁を落としていく。私は、最後のひとひらまで、しっかりと見守った。


『愛情』







どろどろに、溶けてしまった。大切な家族も、友人も、全部。けれども、溶ける様は綺麗なものだった。みんな、私から離れることに対して、喜びを感じていた。貴方達と一緒にいたかった、一生……でも、私は溶ける事ができない。赤、青、オレンジ……数多の綺麗な色が混り合う姿を、じっと見つめていた。


『調和できない』








揺籠の中に、私がいる。適切な速度で、ゆらり、ゆら、……と、揺れている。心地良さそうなのに、物凄く不満そうだ。だから、抱きしめて外に放り出してやった。その途端、私は笑顔で駆け回った。どこまでも、どこまでも……。嬉しくなって、後からのんびりついていった。一人で走れて、良かったね。


『自立』







あいつと別れる、最後のデートで見た月は、綺麗ではなかった。小さなすれ違いや、衝突が起こり始めた頃だった。涙ながらに別れを切り出された時、すんなり承諾した。今思えば、早急な事をしたかもしれない。今日は、新月らしい。月は、綺麗かどうかも分からない。でも、綺麗であって欲しいと思った。


『心残り』








左手の薬指が、何か物足りない。そうだ、指輪をしていないんだ。どこかで、落としてしまったか。早く探さないと。家の隅々まで、探したが、見つからない。となると、他には……。

「お探しのモノはこれかしら?」

嫁が綺麗な笑顔で、俺の結婚指輪を差し出してきた。


「浮気相手の家に、あったわよ」


『探しモノ』







生前、妹は私を驚かせる事が好きだった。物陰から飛び出したり、プレゼントをびっくり箱仕様にしたり……。そんなことばかり、してて、とても暖かい日々だった。


「ばぁ! 驚いた?」

今は幽体になって、物陰から霊感の強い人を驚かせて回っているらしい。盛り塩片手に、今日も妹を回収した。


『死して、なお』








かわいい子供だった……だから、育てた。やりたいことは全部やらせたし、支えた。おかげで、誰に対しても思いやりのある、いい子に育ってくれた。そして、小さな癖やしぐさが、私の子供だと思わせてくれるほど似てきているのだ。


これで、大丈夫だね。

誘拐した子って、バレないよね。良かった。


『自分の子』


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