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王都へ

王都訪問当日、私の部屋のドアに素敵な服がかけられていて、恐らく王都に出ても恥ずかしくない様にシエル様が用意してくれた物の様だった。

これから森に行くのにこんな上等な服、いいのかな?

でも私がダサいと2人が馬鹿にされるかもしれないよね。


私はその服に着替えると、2人が待っているであろう一階に降りた。


「わあ、凄く可愛いよメイ!

 まるで公爵家の令嬢みたいじゃないか!」


玄関付近にいたシエル様が歩み寄ってきて私の服を褒める。

シエル様、ただでさえいつもかっこいいのに今日は一段とオシャレで素敵…!

王子様みたい!


「シエル様の用意して下さった服…凄く素敵で驚きました!」


「そうだろう?今日の君には森よりアクセサリーとかが似合うと思うんだけど本当に森でいいの?」


「はい!楽しみですね!」


私が満面の笑みで答えると、シエル様は残念そうな顔をしながらため息を吐いた。


「2人とももう準備したんだ、

 呼ばれたのは俺なのにさ」


浮かれていると、エディさんの声がして振り返る。


「!?」


そこには整った黒髪に気品を漂わせる顔立ちをした高身長の美形が立っていた。


「だ…誰!?」


「誰って…エディだけど

 どう?今の俺シエルよりかっこいい?」


何となくかっこよくなるだろうなとは思ってたけどまさかここまでとは…!


箒の様だった髪は艶やかに、燻んだ肌は白い陶器の様になり

高級そうなコートを完璧に着こなす様は、間違いなく名門貴族の出立ちだった。


恐るべしエーレーン家のポテンシャル!


「…ちょっとおしゃれしたからって調子に乗るなよ

 僕の方がいいよねメイ」


「ご自慢のビジュアルで負けそうだから嫉妬してんの?

 メイ、どっちがいいか教えてやりな?」


げ…また睨み合ってる…!

「ど、どちらも素敵ですぅ…」

私はそう言いながら縮こまるしかなかった。



王都に着くと、その活気と街の美しさに思わず感嘆する。


街の入り口からも見える大きなお城は、

まるで絵本の中で見た景色がそのまま現れた様だった。


「じゃ、俺は城に行ってくるから…2人は時間潰してて」


エディさんはそう言うとお城の方へ消えていく。


「…僕らも行こうか、暗くなる前に済ませたい」


彼が言うと、私は目を輝かせながら頷いた。


ー西の森を入り、少し歩いた場所

そこにはとても希少な魔法植物が沢山生えていた。


あれはマリンドウ、あれはクロカゲスイセン…!

来て良かったー!


「収穫は禁止だから、見るだけにしなよ」


「はいっ!解ってます!」


私は花から花へ飛び移り、どんどんスケッチしていく。

こんな花達が咲く植物園があったら…素敵だろうなぁ。


「あーあ…君って普通の子だと思ってたけど

 かなり変わってるよね

 …僕より花がいいなんて」


「はい?何か言いました?すみません集中してて…」


「何でもない」


彼は訝しげな表情で言う。

あれ?何だか機嫌が悪い…?


「僕、ちょっと昼食買いに行って来るよ

 サンドウィッチとかでいい?」


「はい!ありがとうございます!」


「絶対奥には入るなよ

 …特に黒き森の付近には」


「はーい!」


彼はそう言い残し森を後にする。

大丈夫大丈夫、奥になんか入っていかないから!

ましてや黒き森になんか…ん?


黒き…森?


『彼女の危険さに気付いた現女王陛下により

 黒き森に幽閉される…』


それって…エディさんのお母さんがいるって言う…


少し、背筋が冷たくなるのを感じて私は首を振る。

大丈夫、奥に行かなきゃいいんだから!

私は目の前の花をスケッチすると、別の場所にも希少な花を見つけてそれに飛びつく。


それにしたって天国みたいな場所だわ、ここ!

本当に珍しい植物ばっかり!


次はこっちの花をスケッチして…次はあの木の実の匂いを嗅いでみようかな!


どんどん目移りしていると、私の目の前を「月光蝶」が通り過ぎる。


あ…この蝶見たことある…

前この蝶が部長と一緒にいて珍しい柄だったから調べたのよね

鱗粉が暗闇で光る蝶だ。


鱗粉には誘惑作用のような物があって、

野生の動物を惹きつけ外敵から守らせるって習性がある。


綺麗な水のある場所じゃないと生きられないって本で見たけど、

ここって近くに川とかあったかしら…?

私は蝶の飛んでいく方向に何か花でもあるのではないかと期待してその蝶を追いかける。


その間、自分がどんどん森の深部に入り込んでいる事に気付きもなかった。



ーシエルが昼食を買って戻って来ると、元いた場所にメイはいない。


…どころか、禁止区域に続く足跡まで残っており、顔を青ざめさせる。


「あの子…!言わんこっちゃない!」


シエルは昼食を鞄にしまうと、森の奥へと走ったのだった。

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