1巻
「狡猾な魔女」はすぐに真実にたどり着いてしまう。
こんな頼りなさげな女が貴女の1番の脅威となりうるのです。
・・・聞いていますか?
私は真面目な話をしているんです。
貴女はあの女、エカテリーナに直接会ったことがないから、そんなことが言えるんです!
・・・いいでしょう。
10月17日、すべてが分かります。
狡猾な魔女シリーズ
第一弾
麗しき
令嬢は
鏡の中に①
プロローグ
あれが噂の…
おかあさまとおとうさまの
お友達で…
どこぞやのお国の女神様!
ん?2人いますわ…
あ!あの銀髪の人、頭から
犬の耳が生えていますわ?!
え!?狼?
あの人、狼ですの?!
・・・どっちが
「エカテリーナ」
様なのですの?
金髪の人?
それとも・・・狼の人?
「エリー、久しぶりですね!
コルレア王国にようこそ!
歓迎しています。」
「ありがとう、メアリス。
ところで・・・
チャールズどうなってるの?」
「あぁ、
チャールズさんなら今…
ベッドに監禁、いや、
軟禁されています。」
「・・・寝込んでると
いうことかしら?」
「いいえ、ベッドに
軟禁されているんです。」
「・・・寝込んで…
いるのよね?」
「ベッドに軟禁状態です。」
「・・・分かったわ。一応
「寝込んでいる」
と解釈させてもらうわ。」
「このまま釈放されずに
獄中死しちゃったら
賠償金請求しようと
思って
いるんですけれども…」
「・・・さすがに
鬼畜すぎない?」
あ、金髪の人の方が、
エカテリーナ様なんですの!?
・・・じゃあ狼の人は、
何の人なんですの?
御付きの人ですの?
「・・・やっぱりどこまで
いっても金勘定なのね…」
この瞬間、場の雰囲気は
一瞬で絶対零度にまで
下がったかのように感じた。
一同の倫理観を疑う視線が、
この銀髪の少女に降り注ぐ。
そんな視線は
知らぬ存ぜぬとでも
言いたげに、彼女の狼の耳は
ピクピク動いている。
「ちょ!マリー!
知らない人に
なんてこと言うの!
ダメでしょ!自制して!
あとメアリスに
「ごめんなさい」
して!」
「・・・知らない人じゃ
ないもん。メアリスとは前
会ったことあるもん。」
「・・・え?」
「マーリャちゃんも
久しぶりですね。」
「うん、久しぶり。」
「・・・え?いつ?
あなた達、本当に
いつ知り合ったの…?」
頭の中がはてなマークで
いっぱいになっている
エカテリーナ様。
それを分かっているのに、
一切説明はせずにただ
「久しぶり」
と声をかけるおかあさま…
確信犯ですわ。
あれはきっと、いや、
絶対に確信犯ですわ。
「覚えてない」
は確信犯しか言わないこと、
メアリーは既に
知っていますのよ?
「・・・そちらの令嬢は…
メアリス、あなたの娘?」
そう言ってエカテリーナは、
メアリスの隣の美しい少女に
目を向ける。
「いや、私は」
「えぇ、娘ですよ。
この子はアリス。」
メアリスから
「自身の娘、アリス」
と紹介された少女は、
鮮やかな新緑のような
緑色の目を、
ほんのコンマ1秒ほどの
短い時間、瞼で隠したあと、
驚いたような顔をして
メアリスを見た。
が、淑女教育の効果も
あってか、すぐに
自己紹介を始めた。
「はじめまして、
エカテリーナ様。
アリスと申します。」
それまでずっと口を
挟まずにいたマーリャが、
突然口を挟む。
「ねぇ、壺の中の彼女は
誰なの?」
!?
ひょっとして…
バレてますの、これ?!
いや、大丈夫なはずですわ。
息を殺して、
心を落ち着かせて…
そうだ、枝毛でも
探しておきましょう!
大丈夫、絶対、
見つからないはず…
「メアリー!?」
メアリスが目を見開く。
「・・・何してるの?」
美しき目を一瞬
見開いたものの、
アリスはすぐに冷静になり、
愚女に質問を問いかけた。
「・・・えへへへへ…
バレちゃった。」
―――――――――――――――――――――――――――――――
白猫はそこまで
書き終えると、
万年筆を下ろした。
10月7日の
出来事であった。
繝励Ο繝ュ繝シ繧ー
「マリーちゃーん!
ちょっと来てくれる〜?」
「・・・行けなーい。」
「あ、聞こえてるなら
そのままでいいから
聞いといて〜。」
「うん、分かったー。」
「チャールズ覚えてる〜?」
「・・・誰だっけ〜?」
「チャールズ・ブランカ」
「あ、
ブランカ伯爵のことー?」
「そーそー」
ブランカ伯爵・夫人との
「思い出お話畑」が
出来上がってきて
しまったので、終わるまで
彼女達の紹介でも
しておきましょうか。
何部屋も離れた自室から
手紙を読みながら話す、
金髪の少女…
まあ、少女では
ないんですが、見た目が
少女なのでここでは
少女と言っておきましょ!
女性は若め若めに
言っておいた方が、
良いのです。
あなたもこれで、
1つ賢くなりましたね。
おっと話が
それてしまいましたね。
ごめんなさい(_ _;)。
この少女の名前は、
エカテリーナ。
この国を統べる、
女神です。
・・・開始早々こんな
パワーワードを
出してしまって
ごめんなさいね!
でも、事実なんだから
しょうがない。
・・・だから、
私は厨二病ではないです。
そんな目で見ないで下さい。
エカテリーナが
話しかけている少女、
狼の耳を頭から
生やした銀髪の少女は…
はい、あなたも
よくご存知ですね。
今はエカテリーナの従者、
名前はマーリャちゃんです。
縺ゅl縺悟ヲケ
そうですね。
あれがあなたの妹さんです。
・・・何故梯子に登って本…
しかもよりにもよって
風俗本を片付けているかは
謎です。
風俗本と美少女という、
最も縁遠い単語2つが
並んでいるこの光景。
それに違和感を覚えている
今日このごろ。
あら、あなたも
違和感を覚える。
やはりそうですよね。
・・・おっと、ようやく
本題に入りますね。
縺ゅ↑縺溯ェー
え、私ですか?
「コハル」
と名乗っています。
以後、お見知りおきを。
多分また会います。
仲良くしてください。
「・・・で、
そのブランカ伯爵が
どうかしたの?」
「あぁ、そうだった!
あのね、チャールズが
倒れちゃったから、ちょっと
コルレア王国に
行かなきゃいけなくt」
ものすごい音がしましたね。
マーリャちゃんが
倒れたんです。いや、
倒れてはいませんね。
訂正します。
梯子から落ちました。
心配ですね。
おっと、こちらへ走ってくる
足音が聞こえます。
多分エカテリーナですね。
あ、そうこう
しているうちに、
お別れの時間と
なってしまいました。
あなたはもう
いかなくてはなりません。
早いですね〜。
悲しいですね〜。
え、悲しくない?
ひどいですね。「薄情者」と
言われたりしませんでしたか?
あら、そう…
では、次回は
高所にもお気をつけて。
母親の胎内から堕ちても
死にますけれども、
高所から落ちても
死ぬんですよ?
ご存知でしたか?
・・・ご存知なかった。
またこれで1つ
賢くなりましたね。
これで来世でたくましく
生きていけることでしょう。
今日10月10日を
あなたの第二の命日に…
え、嫌だ?不謹慎?
はい、分かっております。
妹さんのことは
お任せください。
あなたの代わりに、
しっかりと、陰ながら、
見守っておきますよ。
縺ゅj縺後→
いえいえそんな、
滅相もないです。
お気になさらず。
感謝の言葉なんて不要です。
あなたの来世でのご活躍を
お祈りしておきます。
では、さようなら。
第一章
今日、10月17日、
コルレア王国、
ブランカ伯爵邸。
1台、
たった1台の馬車で、
来客がやってきた。
その者達は、
ブランカ伯爵夫人が丁重に
もてなす準備を
していたわりには少ない、
2人、たった2人という
人数で、やってきた。
荷物も少なかった。
普通貴族というものは、
例え日帰りだろうが、
一泊二日だろうが、
阿呆のように
大量の荷物を、
使用人に運ばせ、
持ってくる。
・・・くどくど言わず、
はっきりと、
申し上げてしまおう。
彼女は…銀髪の少女の
エスコートを制し、
出てきた金髪の少女は…
伯爵夫人という、
とても高貴な身分の
お方が、
丁重に丁重に、
もてなさなければ、
ならない者…
伯爵、または、
それ以上の身分を
持っているはずなのだ。
それなのに、使用人を
たった1人しか
連れてこず、
とても少ない荷物で来た、
あの少女は…
「貴女の言ってた通り。
確かに異端ね。」
「黒幕」とも言える
立場の、この者は、
「エカテリーナ」と
という名前の、
少女の姿をした、
新たな障害の出現に自室で
頭を悩ませながら、
ボソリと呟いた。
1時間弱前、
エカテリーナを
出迎えた時のことを
思い出しながら。
―――――――――――――――――――――――――――――――
貴女もあの女と
会ったのでしょう?
貴女もあの女と対峙して、
分かったでしょう?
あの女…
エカテリーナは、
「異端」
なのです。
だから…
「異端は、早め早めに、
除去しておいたほうが、
良いかと。」
―――――――――――――――――――――――――――――――
「いや、良いわよマリー。
自分で降りれるわよ。」
「・・・いや、
そういうわけじゃない。
エリー、自分の立場を
考えよう。」
「大丈夫だよ〜。逆に
聞いちゃうけど、
メアリス達の前で威厳を
見せつけて何になるのよ。
そりゃー、異国の
貴族さん達の前では、
家の国のためにも、
威厳を見せつけなきゃ
いけないのは、
分かってるわよ?でも〜…
メアリスよ?
メアリス相手なら…
別に良くない?」
「だめ。」
「えー、そんな〜!
・・・ストレスが、
心理的疲労が
溜まりそう…」
「我慢して」
ポカンとしている
令嬢2人を置き去りに、
馬車から降りもせず、
「エスコートを
つけるか否か」
の議論が延々と
繰り広げられるかと
思われたその時、見かねた
メアリス・ブランカ
伯爵夫人が割って入った
(マジでグッジョブ)。
「・・・私と娘達以外
この場にはいないので、
とりあえず
降りてきてください…
・・・この場所でのことが
噂になることは、おそらく
ないと思いますし…」
「ね?メアリスも
そう思うでしょ?!」
「・・・でも」
「この前もそんな感じで
1時間弱降りて
こなかったですよね?」
それでも納得しようと
しなかったエカテリーナの
従者の銀髪の少女は、
不服そうだったものの、
ブランカ伯爵夫人が
(おそらく怒りを
隠しながらの)笑顔で
「いい加減学習
してください。」
と、圧をかけたので、
おとなしくなった。
「よいしょ、と」
ようやく降りてきた
エカテリーナを、興味津々で
眺める令嬢2人。
それもそのはず。2人は
事前に
ブランカ伯爵夫人から
「エカテリーナは
人間ではなく、
彼女の国では
「女神」として、
信仰の対象にも
なっている」
と聞かされようものなら、
好奇心も湧くだろう。
おまけに、エカテリーナは
人間では少しあり得ない
見た目をしていた。
リボンのついた黒い
カチューシャで
まとめられた長い金髪は
まだあり得る。
しかし、オッドアイは
なかなかに珍しい。
さらに、そのオッドアイが
「右が鮮やかな水色、左は
ショッキングピンク、
おまけに瞳孔は白い」
なんて少女が出てきたら、
まじまじと見てしまうのも
当然といえば当然。
「貴女達が、
メアリスの娘?」
「は、はい!そうです!」
突然声をかけられ、
驚く2人の令嬢。
濃さは違えど、2人とも
美しい緑色の目と、
茶色の髪をしていた。
・・・しかし、
ブランカ伯爵夫人の
容貌は、
「明るい金色の髪に、
まるで夏の空のような、
鮮やかな青色が映える。」
といった具合で、
茶髪も緑色の目も
持っていない。
この令嬢達は
ブランカ伯爵に
似たのだろうか?
「は、はじめまして!
私は、あ、
アリス・ブランカです!」
やや緊張気味なのか、
少し噛みながらも、
はつらつと
自己紹介をした、
髪も目の色も
濃い方の令嬢は、
アリスと名乗った。
「エカテリーナ様、お初に
お目にかかりますわ。
メアリス・ブランカの娘、
メアリーですわ。」
反対に、髪や目の色が
薄いほうの令嬢は、
ハキハキと、社交の教本かと
思うくらい完璧な
自己紹介を、
ごくごく自然に
やってのけた。
「はじめまして、アリス、
メアリー。ひょっとして、
メアリスから私のことは
聞いているのかしら?」
「えぇ、もちろん、
伺っておりますわ、
エカテリーナ様。」
「は、はい!
聞いてました!」
「そう、でも一応
自己紹介はさせてね?
エカテリーナよ。
こっちは頼れる従者の
マーリャちゃん。」
エカテリーナの自己紹介に
登場した少女に令嬢達の
視線が集まる。それまで
エカテリーナの容姿ばかり
見ていて
気づかなかったのか、
2人はマーリャを見て
目を見開いた。
ブランカ伯爵夫人に
「お久しぶりです。」
と挨拶している、
銀髪の少女の頭には、
犬のものなのか
狼のものなのかは
よくわからないが、
ピクピク動く耳が
ついていた。
しっぽもある。
「え、えか、えけて、
エカテリーナ様。」
アリスが
「エカテリーナ」
と呼べずにいると、
当の本人は
「ふふふ、
呼びづらいわよね?
「エリー」
でいいわよ。」
と助け舟を出した。
「じゃあエリー様。
これから
父様のお部屋に
ご案内します。」
「お願いします!」
マーリャちゃんや
アリスさん、
メアリーさんは
気づきましたかね?
一瞬とはいえ、
エカテリーナが
険しい表情を
見せたことに…
マーリャちゃんの
お姉さーん!
見えてますかー?!
第二章
「こちらです。こちらに
父様は
寝かされております。」
「そう。開けていい?」
2人の令嬢の間に流れる
シリアスな空気を
知ってか知らずか、
あえてエカテリーナは
明るく聞く。
「はい、どうぞ
お入りくださいまし。」
そう言ってメアリーが
ドアを開ける。
と同時に、
エカテリーナの顔が
険しくなる…
いや、違う。みるみる
青ざめていく。口元に手を
抑えだした。
「どうした。我々の父親の
容体はそんなに
悪いものなのか?」
と不安になる令嬢2人を
よそ目に、エカテリーナは
廊下でどんどん
青ざめていく。
「どうした。
そんなにひどいのか?」
と2人がしびれを切らして
聞こうとしたその時、
なんとエカテリーナは
嘔吐してしまった。
廊下に響き渡る
アリスの悲鳴。
「大丈夫か」
と心配するメアリーの声。
「しばらくお待ち下さい」
の状況が数分間続いたあと、
ようやく吐き気が
収まったらしい
エカテリーナが口を開く。
「・・・この匂い、何?」
「匂い…!」
何かに気づいたらしい
メアリーが部屋に
飛び込んでいく。
解決しようと
飛び込んだらしいが、
まさかの
「犯人がまだそこにいた」
という状況だったらしく、
話し声が聞こえてくる。
しばらくして話し声が
止むと、メアリーと
黒髪のメイドが部屋から
出てきた。
「申し訳ありませんわ。
どうやら我が家の
メイドが
「魔除けの香」
を切り忘れたらしく…」
「魔除けの香」
この国や周辺国では
ごくごく一般的に
使われる、蚊取り線香の
ようなもの。
魔法を使うと使用者は
吐き気、頭痛、目眩、
嘔吐などの症状が出る。
体質によってどれだけの
効果があり、どのような
症状が出るかは異なる。
通常魔法を使わなければ
これらの症状は
出ないが、体質に
よっては匂いを
嗅ぐだけで症状が
出るものも、
多くはないが存在する。精霊や魔法使いに
比較的多いこの体質を、エカテリーナは
持っていた。
「ねぇ、お母様から
言われていましたわよね?
「エカテリーナ様は
魔除けの香に弱いから
消しておくように」
って。なのに強くして…
どうするおつもり?」
メアリーは黒髪のメイドを
睨みつける。
「た、大変申し訳
ございません、
メアリーお嬢様。
奥さまのお申し付けを私が
忘れてしまったばかりに…」
ちょうどその時、第二の波が
押し寄せてきたのか、
再びナイアガラの滝が
出来上がり。そしてとても
バッドなタイミングで、
マーリャと
ブランカ伯爵夫人が
遅れてやってくる。
遅れてやってくるのは
ヒーローではなく、ただの
関係者だったというわけだ。
「な、なんなんですか、
この状況は?!」
「・・・エリー大丈夫?」
第三章
「・・・酷い目に遭った…」
魔除けの香の匂いが
染み付いてしまっている服
を脱ぎ、持ってきた
セーターに着替えながら
エカテリーナは呟いた。
「・・・よし(๑•̀ㅂ•́)و✧
それでは、張り切って
まいりましょー!
・・・とはいっても…」
肝心のチャールズの部屋は
まだ、魔除けの香の匂いが
とれてないわよね…
急いで換気して
もらっているとはいえ、
多分今日はあの部屋に
入れそうにないわ…
・・・じゃあ、
何を調べていこうかしら…?
「・・・うん!」
調査は明日から!
今日はこのお屋敷の探検でも
しておこうかしら!
―――――――――――――――――――――――――――――――
エカテリーナが部屋から
出てくると、目の前には
メアリーが立っていた。
ドアを開けたら目の前に人が
いたら驚くのは、万国共通。
エカテリーナはまるで、
鳩が豆鉄砲を食らったかの
ような顔で固まる。
「え、エカテリーナ様!?」
ようやく覚悟を決め、
ノックをしようとした瞬間、
呼ぼうとした本人が
出てこようものなら、
誰だって驚く。
「・・・メアリー?」
「はい、メアリーですわ。
ひょっとして…何か
ご用事でもありまして?」
「ううん、ただ
「暇だから探検でも
しようかな」って。」
「あ、ならよろしければ、
私がご案内
いたしましょうか?」
「え、いいの?!
ありがとう!」
―――――――――――――――――――――――――――――――
メアリーはエカテリーナに
屋敷の部屋全てを見せた。
「このお屋敷は
随分と広いわよね!」
「そうですの。私もここに
引き取られたばかりのころ、
よく迷子になりましたわ。」
「ふふふ、私もなったわ!
逆に迷子にならない人が
おかしいと思うのよね!」
「そうですわn…!」
「・・・どうしたの?」
「1人だけいましたわ…
迷子になっていない人…」
何故かメアリーは、苦虫を
潰したかのような顔を
している。
「え?!誰?」
「・・・アリスですわ…」
―――――――――――――――――――――――――――――――
「アリス?貴女と一緒に
いた、あの小柄な子よね。
あの子がどうしたの?」
エカテリーナ様ならきっと…
・・・落ち着きなさい。
いや、落ち着かないで。
ここは狂人のように
振る舞いませんと。
悟られないように。
論理的な説明に
ならないように。
確信を得ていると、
悟られないように。
・・・これは、
ファースト・コンタクト。
ファースト・コンタクトで
上手くいく話が、
素晴らしい話なわけ、
ありませんわ。
・・・緊張しませんわ。
緊張をもっと
見せつけないと。
表情筋を使って!
ポーカー・フェイスで培った
表情筋を、演技力を今こそ!
今までの取引で培った
演技力を使って、
敵も味方も、全て欺いて…
「エカテリーナ様…
その、アリスについて…
お話がありますの…」
第四章
メアリーは、エカテリーナを
3階のある部屋に案内した。
「・・・ここは?」
「マリアお姉様の
お部屋ですわ。」
「・・・マリア?」
「マリアお姉様は、2年前に
突如、お庭で姿をお隠しに
なってしまわれましたわ…」
「・・・マリアって誰なの?
貴女の姉?」
よし、出だしは上々…
あとはアテネに託すしか…
「アリスは、マリアお姉様が
失踪した1年後…
つまり1年前に、お父様が
保護されたらしいのです…」
「あの〜、その
「マリア」
って誰なの…?」
「でも、屋敷のみんな
気づかないのです!お父様も、
お母様も!」
「・・・マリアについての
説明は…?」
エカテリーナ様の注意は
ほとんど私…
よし、ここで決めなさい、
アテネ!
「・・・アリスは
マリアお姉様なのです!
なのにみんなそれに
気づかない…
おかしいですわ!
この屋敷のみんな、
何者かに騙されていますの!」
透明な何かが、
エカテリーナのポケットに
手紙を入れた。
透明な「何か」は
エカテリーナに
気づかれないように、
細心の注意を払った。
100キロメートル先の
鶏の左目のみを
撃ち抜かんとするほどの
集中力であった。
・・・しかし、
エカテリーナは「何か」に、そして手紙に、
気づいたらしかった。
「何か」とメアリーからは
絶望の匂いを感じる。
エカテリーナは手紙を
一瞥すると、口を開き、
こう言った。
「・・・どういうこと?」
本当に終わったと、
そう思いましたわ。
でも、続く言葉は、
私の作戦が、まだ、
終わっていないことを
示していたのですわ。
「・・・何で、
貴女はアリスをマリアだと、
そう思うの?そして、
何で貴女以外の人は、
マリアだと気づかないの…?」
エカテリーナは、
不思議そうな顔をしていた。
―――――――――――――――――――――――――――――――
本当に嬉しかった。
ありがとう、
エカテリーナ様。
でも、この策に
乗ってしまえば貴女も、
周りのみんなと同じく、
きっと…
危険な目に
遭われるでしょう。
ごめんなさいね。
でも、私の我儘にどうか、
お付き合い下さいませ…
私には、どうしても、
助けたい人がおりますの。
恩を仇では返したく、
ありませんの。
私を助けてくれたあの人と、
仲良くしてくれた彼女。
彼女を助けることは、
私の愛するあの人を
お助けする事と同じ。
私の愛するあの人の願いも
叶えたいし、
恩人を2人も助けたい。
これは、そのための、
取引なんですの。
でも、誤解なさらないで
くださいまし。
私は、貴女を悪い目に
遭わせるつもりは
ありませんの。
第五章
「・・・そこで何してるの?」
「!?…アリス、貴女こそ、この部屋に何か用ですの?」
「エリー様を探してたら、
ボタンがメアリーと一緒に
この部屋に行ったって、
教えてくれたの。
・・・メアリーのほうこそ、
何してたの?」
「別に。私はただ、
エカテリーナ様と
お話していただけですわ。」
「エリー様をこの部屋に
連れ込んで…ひょっとして、
私がマリアさんだって嘘、
エリー様に吹き込んでた
わけじゃないよね?」
「嘘なんかじゃあ、
ありませんわ!私には
本当に、360°何処から
見ても、マリアお姉様
なんですのよ!?」
そこまで言い切ると、
メアリーは悲しそうな顔を
して、こう言った。
「・・・マリアお姉様。
いい加減、冗談は
よしてくださいませ…
覚えていませんの、
私のこと?!」
「・・・私はマリアさん
じゃないし、マリアさんは
もういないの…
いい加減もう、
現実を見てよ!
マリアさんじゃなくて、
私を見てよ…」
突然の修羅場でオドオド
しているエカテリーナの手を
引き、外へ連れ出したのは、
マーリャだった。
「マリーちゃん!」
「・・・探した。もうすぐ
お夕飯だって、
ブランカ夫人、言ってた。
行こ。」
そして、マーリャは
エカテリーナの手を引き、
マリアの部屋を出た。
―――――――――――――――――――――――――――――――
「・・・エリー、
その手紙は?」
「うーん…ラブレターかな?
まだ中は見てないのよ~。」
「・・・エリー、この屋敷の
人たち、何かおかしい。
アタオカばっか。」
「こーら!そんなこと
言わないの!アタオカの
ふりしてる、ピエロさんかも
しれないでしょ?」
「・・・私、ピエロ、嫌い」
―――――――――――――――――――――――――――――――
「エリー、今日はわざわざ
来てくれて、本当に
ありがとうございます。」
「いいわよ、別に。
お礼なんて。」
「・・・にしても、
わざわざこんなにも
ご馳走を用意
してくれるなんて…
・・・食べれない
チャールズに
申し訳なくなってきたわ。」
「いいんです!あの人、
なかなか起きないし、
仕事しないし、こういう時に
こそ、日頃の恨みを
晴らすべきなんです!
そう思って最近は、
毎日ごちそうですよ!」
「もちろんお会計は家計からではなく、
チャールズの個人資産から」
と語るブランカ夫人は
したたかよね〜。
・・・自分の旦那
倒れてるから、喪中みたいな
雰囲気の、質素な
ディナーにでもするのかと
思ったけどね。
・・・もちろん、私は
御相伴には預かれないし、
預からないけどね。
「・・・アリス、メアリー。
また喧嘩したんですか?」
「・・・」
「ごめんなさいね。
この2人、どうも相容れない
みたいなんです。」
「・・・エリーの前でも
喧嘩してたの。」
「え!?そうなんですか?!
・・・本当に、
ごめんなさいね。」
ブランカ夫人が
エカテリーナに
謝っていると、
茶髪のメイドがワインを
持ってやってきた。
「大変お待たせしました〜!
ワインをお持ちいたしまs」
そのメイドは何もない
ところで綺麗にすっ転び、
ワインがぶちまけられる。
危うくエカテリーナに
かかるかと思われたその時、
マーリャが身代わりとなり、
彼女のきれいな銀髪や
青色のワンピースは、
赤紫色になった。
「ギャーーーー!
す、すす、すみません!」
「・・・貴女、名前は?
あとで覚悟しておいて」
「ひぃぃぃぃ!
る、るるるるる、ルチナです!」
「マリーちゃん、
弱い者いじめはだめでしょ!」
「弱い者いじめじゃなくて
報復だから大丈夫」
第六章
「マリーちゃ~んあの後~、
本当に詰めたのね~」
「有言実行」
「うーん、
嘘は良くないけど~、
暴力も~、
良くないと思うわよ~。」
「暴力はしてない。
言葉による平和的解決」
「その服の赤いのは
なにかしら~?」
「赤ワインだよ、酔っ払い」
「え~、
なんで赤ワインが~、
マリーちゃんに〜
かかってるの~?」
「さっきあの
アンラッキーメイドに
ぶっかけられた。」
「じゃあお風呂に
入らなきゃね~」
「うん、だから早く出て」
「う〜ん…
まだ出たくな~い!」
「のぼせるよ」
「えー、のぼせないよ~」
「とにかく酔っ払いは
もう出る時間。
・・・何分湯舟に
つかってるの?」
「えーとね...
0.7時間…?」
「単位を分に直すと?」
「よんじゅうにふーん!」
「はーいもう出て」
「えー、やだー!
あ、そうだ!
一緒に入れば問題なし!」
「酔っ払いは寝る時間。
私と一緒に入ったところで
のぼせなくなるわけでも
ないし。
それに私が入ると毛が浮く」
「えー。気にしないよー」
「私が気にする。」
―――――――――――――――――――――――――――――――
「あ、マリーちゃーん、
あのねあのねー、私ねー。」
「はーい、話よりも
ゴートゥーベッドよりも
まずは服を着て。
爬虫類でも人外でも精霊でも
何でも人の形をしていたら、
服を着なきゃ変質者だから。
人の姿を手に入れることは
服を着る義務ができるのと
同義だから。」
「私、メアリーと
愉快な仲間にー、
深夜2時にー、
鏡がある部屋に
呼び出されてるのー!
これってもしかしてー、
告白かな(⋈◍>◡<◍)。✧♡」
「・・・不倫になるよ。
あと服を着て。
人型なら皆等しく
服を着なきゃいけないのが
この世の摂理。」
「告白されたからって
不倫にはならないよー。
告白にOK出しちゃったら
話は別だけどねー」
エカテリーナは悪い顔をしている。
「大丈夫、国王陛下とか
娘息子の皆々様とかには
黙っておくから。」
「ん?マリーちゃん...?」
「ライサとかいう私の姉を
自称する不審者、いや、
不審猫とか
私に風俗本を片付けさせた
一種の変態騎士とか、
その他ばれちゃ
いけなさそうな皆々様にも
黙っておくから。」
「ちょ、マリーちゃん、
「冗談」って知ってる...?」
「大丈夫、私、口は堅い。」
「マリーちゃん、本当に
冗談だから...ね?」
「このままいったら向こう
1カ月は浮気疑惑を
マリーちゃんに
かけられてしまう...!」
といった大変切実かつ
現実的な目の前の問題に
エカテリーナの優秀(?)な
脳みそは
フル活用されはじめ、
もうすっかり酔いは
冷めたようだ。
「・・・よし、
酔いは冷めたよね。」
「あ、本当だ!
マリーちゃん凄い!
うちの子天才!」
※今のエカテリーナは
素面です。
コハルはプライバシーの
都合上、浴場や寝室には
入らないように
しているため、お生憎
今この場にはいないが、
もしもいたらこの
「素面なのに謎に
酩酊状態よりも
だらだらしている」
というエカテリーナのこの
「うちの子天才!
さすがうちの子!」
とも言いたげな立派な
親馬鹿を目撃していたら
「・・・何なのこれ?」
と、あの虚春も割と
ガチ目に
ドン引きしていただろう。
・・・もはやマーリャが
可哀想になってくるレベルの
親馬鹿である。
第七章
エカテリーナが
約半日前に受け取った手紙、
つまり、メアリーが
「アテネ」と呼んだ透明な
「何か」と協力して
エカテリーナに
渡した手紙は、次のような
文言で始まる手紙だった。
―――――――――――――――――――――――――――――――
本案件の未来の解決者、
かつ、我々の救世主と
なるであろう、
親愛なるエカテリーナ様へ
お初にお目にかかります。
あのような形で渡すことに
なってしまいましたこと、
ここに、
深くお詫び申し上げます。
この手紙に気づきまして、
さぞ驚かれると同時に、
大変気味悪くお感じに
なったことでしょう。
しかし、こちらにも事情が
ございましたもので、何卒、
このような失礼を
お許しください。
さて、重ね重ねの失礼に大変
申し訳なく
思っておりますが、何分、
事態は急を要するものに
ございます。
お詫びはここまでとし、
本題に
入らせていただくことを
ご容赦ください。
この計画を立案し、かつ、
実行したのは私、
アテネでございます。
エカテリーナ様は私、
アテネにまだ
接触していないものと
思われます。
私は本案件、
チャールズ・ブランカ伯爵
昏倒事件に関する
有力な情報を
握っております。
本当はそちらに伺い、
情報提供を
行うべきなのでしょうが、
事情があり、私はそちらへ
参上することが
できない状態にあるので
ございます。
ですので、厚かましいことは
十分承知し、理解している
つもりではありますが、
こちらへ
お越しいただけないで
しょうか?
貴女にお手数を
おかけすること、
大変申し訳なく
思っております。
しかし、そのご足労よりも
価値のある情報を
必ず提供することを
お約束いたしましょう。
深夜2時、3階にある寝室、
この手紙を受け取った場所で
お待ちしております。
アテネ
―――――――――――――――――――――――――――――――
ぱっと見は大変丁寧に
お願いしているように
見えるが、実際は
「事情」「事情」と、
何かはよく分からない
事情によって度重なる無礼を
働かれたうえ、そのお詫びも
「事情があったから許せ」
という、この素敵な手紙に
エカテリーナが
興味を持ったのは、
「失礼へのお礼」
という目的ではない。
まず、エカテリーナは
作法などには
大変寛容であり、
失礼を働かれたら
「勇気があるな、この子...
欲しい!」
という思考に直結する
人材欲しい欲しいオバケで
あるため、アテネと名乗った
人物の失礼な言動は
あまり気にしてはいない。
しかしエカテリーナの下で
働きたい皆々様、
「ということは
失礼な言動をとったら
雇ってもらえる...!」
とは考えないほうが
いいだろう。
マーリャは対照的に、
そういうのに
滅茶苦茶厳しい。
エカテリーナに
無礼を働こうものなら、
確実に彼女に
しめられるだろう。
なぜ彼女がアテネの手紙に
興味を持ったのか。
まあ、エカテリーナは
知的好奇心が強いため、
とくに理由がなくても
行っていただろうが、
今回は
ちゃんとした理由がある。
「絶対に価値のある情報を
提供する」
という強気な文章にどうやら
興味を惹かれたようだ。
現に、ここは3階の寝室、
元マリアの部屋。
つまり、アテネの手紙をエカテリーナが受け取った
場所、呼び出された場所である。
―――――――――――――――――――――――――――――――
「えっと、何だっけ...
そうだ、アテネ!アテネ、
約束の時間になったわよ!
私、もうかれこれ
30分前から
待機してたんだけど?
もう約束の時間よ!
そろそろ出てきても
良いんじゃないかしら?!」
エカテリーナは
マリアの部屋の
姿見の前にたちながら、
大声でアテネを呼ぶ。
・・・しかし、誰も来ない。
なんの足音も、
何なら物音もしない。
深夜2時だから
当然といえば当然では
あるが、物音がして
「何!?
・・・なんだ、ネズミか...」
となってくれたほうが、
面白い。
それにそういうのは
敵がくるフラグでもあるため、
「敵が来る=誰かが来る
=アテネ関連
=話が始まる」
ということであり、
エカテリーナに
とっても、ホラー展開を望む
皆々様にとっても、
エカテリーナの
驚いた姿が見たい、
若干変わった趣味嗜好を
お持ちの
エカテリーナファンの
皆々様にとっても、
良いのではないか?
・・・いや、たとえネズミが出ようが、
ゴキブリが出ようが、
殺人犯が出ようが、
虚春が出ようが、
四肢を欠損した幽霊少女が
出ようが、
エカテリーナが
驚く姿だけは想像できない。
―――――――――――――――――――――――――――――――
・・・全く、
人を呼び出しといて
自分は遅刻するなんて...
「アレ君みたい。
・・・アレ君、
今頃大丈夫かな...
・・・絶対ミラちゃんに
どやされてるよね...
「アレ兄、
遅刻するなんて最っ低!
もう嫌い!知らない!」
って。うん。目に浮かぶ。
想像にたやすい。
絶対1日10回くらいは
どやされてるんだろうな...」
相変わらずの親馬鹿ね...
―――――――――――――――――――――――――――――――
寝室とはいえ、誰も使っていないので
虚春が入ってきていたようだ。
先ほど、第六章で
「あの虚春も
割とガチ目に
ドン引きしていただろう」
と書いたが、実際ここまで
ドン引くとは思わなかった。
貴重な虚春の
ドン引きシーンだ。
虚春のファンの皆々様、
シャッターチャンスだ。
早急にカメラを
引っ張り出そう。
・・・まぁ、
肉眼でも見えないし、
カメラにも写らないけど。
「カメラのみに写る
目に見えないもの」
なんてバラエティ番組か
心霊特集の本の中のみの
話というわけで。
カメラにそんな能力、
あるはずもないわけで。
「肉眼で見えないものが
カメラのみに写る」
といった都合のいい話、
小説の中にもないわけで。
第八章
・・・ん?んんん?
エカテリーナ、
貴女、何してるの?
そんな物騒なもの
持ち出して。
・・・というか、
どっから出したの、
そんな大剣?!
―――――――――――――――――――――――――――――――
虚春はエカテリーナの
大剣の出どころが
分からなかったようなので、
説明しよう。
エカテリーナは
一部界隈では
「狡猾な魔女」
と呼ばれている
高名な魔女。
・・・「狡猾」は
高名なのか
若干疑問ではあるが、
気にしないでくれ。
どの界隈なのかも
聞かないでくれ。
・・・とにかく、
そんな
「魔女」
でもある
エカテリーナが
何処からともなく
大剣を出したんだ。
どこぞの誰かは
勘の良い子供は嫌いな
らしいが、そんなどこぞの
誰かに嫌われそうな皆々様は
何処から出てきたか、
分かるだろう。
これh
これは、
エカテリーナの
魔力で作られた
大剣のようね。
・・・先を越された。
―――――――――――――――――――――――――――――――
「・・・アテネ、ごめんね♡
私、手紙渡された時から、
というか、マリアの部屋に
来た瞬間から、貴女の
正体、分かっちゃった♡」
※エカテリーナは
素面です。
「・・・今更
怖くなって
おじけづいたのかしら?
・・・でも、
もう貴女は既に
戻れないところにまで
来てしまっている。
メアリーに協力させた貴女には、
「やめる」
という選択肢は既にもう
残っていないのよ。」
・・・普通の人間は、
自分のほうを見ながら
喜々として笑いながら、
若干脅迫をしてくる女が
いたら、絶対に恐怖よね。
しかも、その女を誘ったのは
自分なら。
それまで
「自分が優位に立っていた」
と思っていたのに、
一気に下に落とされる、いや、
最初から手のひらで
踊らされていたと
知ってしまう、
本能的に悟ってしまう、
そんな感覚を相手に与える
エカテリーナ、
貴女は、
私が言うのもなんだけど、
性格悪いわね。
・・・あの
ショッキングピンクと
水色の目、アテネに
とっては恐怖でしか
ないんだろうね。
虚春に
「性格悪い」
と言われるなんて
相当である。
今度2人で
7ならべをやってみてほしい。
絶対2人で止め続けて、
虚春は
エカテリーナの
困っている姿で
笑い、
エカテリーナは
虚春のセンスを
褒めながら、
どうやったら
落とせるか
考えるのだろう。
絶対接戦間違いなし。
よし、DVDの販売を
考えなくては。
サブスクリプションでの
配信も考えなくてはいけない。
・・・冗談はここまでとして...
エカテリーナも
虚春も、
アテネの居場所が
分かったようだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――
・・・なんなの、なんなのよ、
あの女!?
・・・あの子を助けられると
思って、
協力してあげようと
思ったけど、
ロマンに見つかるし、
もう最悪!
・・・事情を
察しなさいよ、
この馬鹿が!
私があんなに
へりくだって
お願いしてあげたのに!
・・・何よ。
こっちを見ないでよ...
早くアタシの視界から、
鏡の前から退いて!
退きなさい!
退いてよぉ!
早く、早く、アタシの
視界から消えて!
・・・なんで、
なんで笑っているの...
「・・・でも安心して!
情報提供者の貴女に
危害は加えさせないわ。
だから貴女は安心して、
私に情報を渡して!
・・・そうすれば、
貴女は安全を
保障されるうえ、
貴女が私に接触してきた
目的も果たせるわよ?
私も情報が手に入って
嬉しい。」
・・・やめて。
・・・なんでその目を
私に向けてきているの...?
・・・なんでそんな
楽しそうな目で見てくるの?
「・・・素晴らしい取引だと
思わない?」
―――――――――――――――――――――――――――――――
「・・・出てきてくれないか...」
まぁ、それはそうよね。
いくら私が
「安全を保障する」
と言ったところで、
不安が消えるはず
ないわよね...
「仕方がない!」
実力行使といきますか!
「せっかく大剣を
出したのに使い道がない」
なんてバッドエンドに
ならずに済んで、
良かったわ!
「(* ̄▽ ̄)フフフッ♪」
―――――――――――――――――――――――――――――――
エカテリーナは
可愛い、しかし、
今の状況には
似つかわしくなく、
逆におぞましく聞こえる
笑い声をあげると、
手に持った大剣を
振りかざし、
姿見に向かって
突き刺した。
魔力で作り上げられた
大剣、つまり、魔力の形をした、
純粋な魔力は、魔法ではない。
なので、普通は突き刺さらない。
すり抜ける。
そう、普通ならば。
大剣は鏡に先端を映した。
根本ではなく、先端を。
そして、鏡の中の
大剣は魔力ではなく
実体となり、
鏡に映る
エカテリーナの
目の前まで届いた。
鏡の中の
エカテリーナは、
一瞬で、160cmは
越えていそうな
姿から、120cm程度の
小さなエカテリーナに
変わり、右手で剣を受け止めた。
「・・・初めまして、アテネ。
会いたかったわ。」
満面の笑みを浮かべる
エカテリーナと
対照的に、鏡に映る
エカテリーナは
恐怖で歪んでいた。
それは右手で
受け止めた剣への
恐怖のためか、
それとも...
「・・・さぁ、アテネ。
取引といきましょうか。」
エピローグ
エカテリーナは深夜3時、
ブランカ伯爵邸の廊下を、
自身が泊っている
ゲストルームに向かって、
ご機嫌に歩いていた。
「ふー。ためになる情報が
聞き出せたわ!」
―――――――――――――――――――――――――――――――
・・・アテネからの
情報はとても
興味深かったわ!
「・・・敵が見えてきたわね。」
・・・でもアテネの
情報には、現実との矛盾が
存在する...つまり、
まぁそれが前提だろうけど...
アテネも知らない情報が、
存在する。
それにまだ多くの
疑問が...
そしてなぜ今になって?
・・・これは
「裏ボスの予感」
いいわ。最高よ!
面白くなってきたじゃない。
見てなさい。
私の友人に手を出したこと、
後悔させてあげるわ!
・・・フフフ、楽しみね。
面白くなってきたわ。
いいわ。
かかってきなさい。
全部まとめて
始末してあげる。
・・・まずは、
チェス盤に、
味方のキングを
加えなきゃね。
繧ィ繝斐Ο繝シ繧ー
ん?食堂の電気が
付いているわ。
誰かしら?
食堂では牡丹が
エカテリーナに
向かって
1.助走
2.膝を曲げ、腰を折り、
腕を伸ばして
土下座の姿勢になる
3.手でブレーキをかける
4.大きな声で
「申し訳ございませんでした!」
と叫ぶ
の、4段階の丁寧な
スライディング土下座で
誠心誠意謝っていた。
・・・何事?
「え、なになになになに?!
とりあえず座って!」
と、エカテリーナは
慌てて土下座を辞めさせる。
―――――――――――――――――――――――――――――――
「・・・じゃあ、
退魔の香を
切り忘れたのは、
あの時部屋にいた
貴女の姉、サンゴでは
なく、ボタン、貴女と
いうわけ?」
「はい、そうです。
あの時姉様が
私の代わりに
罪をかぶって、
謝ってくれたの
ですけれども、
本当は私のせいなのです。」
ああ、昼間慌ててたあの子ね?
マーリャちゃんの
荷物運んでいるときに
気づいて、大慌てしてたわね。
それでさっき、
アテネへの事情聴取、
もといカツアゲ?の帰り、
エカテリーナを
ようやく見つけて、
声をかけたってことね。
・・・にしても、
厨房で見たときは
驚いたわよ。
おんなじ顔の人が
2人いて、それぞれ料理を
作っていたんだから。
「・・・ミラちゃんみたい」
「え?今なんと?」
「あ、ううん、貴女がそうやって
謝ってるところを見てたら、
娘のちっちゃいころ
思い出しちゃって。」
・・・親馬鹿ね。
「あ、そうだったんですね。
・・・って、娘?!」
「そう、娘。
娘のリュドミューラちゃん。」
「え、む、むむむ、娘!?
え!エカテリーナ様、
お若いのにもう娘様が
いらっしゃるのですか?!」
「そうよ、今は反抗期だけどね。
・・・まあ、それでも可愛いけど。」
「は、ははは、反抗期?!」
・・・まぁ、
エカテリーナは
ぱっとみ、十代後半くらいにしか
見えないからね...
そりゃびっくりするわな...
「あ、息子もいるのよ。11人。」
「む、むむむ、息子?!」
「娘のミラちゃんは
1番年下だけど、
すごくしっかりしてるのよ?」
「む、娘が1番年下?!」
・・・どうやらボタンさんは、
エカテリーナに反抗期の娘がいて、
さらにその「反抗期の娘」より上の
息子たちがいることに
驚いてるのよね...
まぁ、十代後半だと思ってた人に
そんだけ子供がいたら
「あなたいくつ?!」
「いくつで子供産んだの?!」
になるよね...
※エカテリーナは
1500歳越え老人です。
「え?!え?え!え!?」
「それで9番目の
息子のアレ君は...」
・・・だめだ、この
親馬鹿。目の前のボタンさんの
反応を全く見てない。
1人はずっとパニックで
「え」しか言ってないし、
1人は子供の自慢しかしていない
この状況、1文字で「?」、
2文字で「混沌」、
3文字で「カオス」と
表します。
・・・この人たち、
いつ寝るんだろう?
皆々様、初めまして、またはこんにちは。
⻆谷春那です。
※前書きの10月17日は作中の日付であって、
現実世界では10月17日になってもなにも起きません。
紛らわしいことをしてしまい、大変申し訳ございません。
あのような紛らわしい文章を書きあげてしまった私の両手には、深く深くお詫びさせます。
さて、「狡猾な魔女シリーズ第一弾、麗しき令嬢は鏡の中に」がいよいよスタートいたしました。
これと、「水槽脳夢世界」と「青春サツ×論」の3つで毎週水曜日投稿をしていく予定なのですが、
読者の皆々様には先にお詫び申し上げておきます
(本日2度目のお詫びですみません)。
後書きまでたどり着いた根性のある読者の皆々様は既にお気づきかと思いますが、
この「麗しき令嬢は鏡の中に」は1話あたりの文章量が大変、もうそれはそれは長いんです。
はい。「水槽脳夢世界」が昼食、「青春サツ×論」がおやつだとすると、
「麗しき令嬢は鏡の中に」はフルコースのディナーといった具合です。
なので、投稿頻度というかなんというか、まあ、書き終わるにも時間がかかるし、
読み終わるにも時間がかかるカロリーが大変多く、
ぎっつりした胃もたれしそうな話なので、
他の2つと比べると、少し投稿頻度が低くなりそうなのです。
・・・エターナル未完はいたしませんよ。大丈夫です。安心してください。
なにせこのシリーズには私の推しというかなんというかが出ているんですよ。
私の推しにつきましては、後々、活動記録にて触れさせていただきます。
皆々様、私の作品で「推し」はできましたか?
もし「できた」という方がいらっしゃれば、ぜひ感想などで私に教えていただければ幸いです。
全身全霊をもって感謝をします。
私の両手が。