厳格な父
私は中学二年生の三奈子、父と母と私の三人家族。
父は大学の教授をしていて、口髭をはやしかなり厳格な見た目だ。母はおっとりした性格の専業主婦だ。
ある日の日曜日の夜、私は母に父とどうやって知り会って結婚まで至ったのか、馴れ初めを聞いてみた。
父は今お風呂に入っていていなかった。
厳しい父の前で馴れ初めなんて聞いたら怒られそうだからだ。
母はお父さんには内緒よと言い話し始めた。
「お父さんと出会ったのは高校の時でクラスメイトだったの、でも私は大人しくて友達もいなくてクラスで孤立してたの。
何が切っ掛けか解らないけど、段々虐めの対象になって、最初は無視から始まり段々机に落書きされたりしてね」
「じゃ、そこでお父さんが助けてくれたの?」と聞くと、母は首を振った。
「お父さんが虐めの主犯だったの」と言うのだ。
私は驚いた、何で虐めの主犯と結婚に至ったのか想像も出来なかったのだ。
「それでね、私は毎日辛くて辛くて死のうと思ったの、でも最後に虐めの主犯のお父さんが許せなくて、お前なんか大嫌いだーと叫んでグーで顔を恨みを込めてガツーンと殴ったの」
私はおっとりした母が父を殴るなんて想像も出来なかった。
「そうしたら、お父さんたら後ろにぶっ倒れて、私はざまぁ~みろと言って教室から出ようとしたの、すると倒れてたお父さんが起き上がり鼻血を垂らしながら、素敵だ君が好きだーって叫んだのよ」
私はもう開いた口が塞がらなかった。
あんなに厳格な父が虐めの主犯で、母に殴られて変な言葉を発するなんて。
私は母に続きを促した。
「私もクラスメイトもビックリしてその場で呆然としていたの、私は死のうと思ってたけど、驚きのあまりその後、教室から飛び出して家に帰ったの、そして私の生活が一変したのは次の日からよ」と母は語った。
「次の日に恐る恐る学校に行くと、父が私の姿を見るなに謝って来たの、そして付き合って下さいの連呼だったのよ」
えぇー、私はもうパニックになって来た。
厳格な父が、厳しい父が、口髭をはやした父が…。
「きっと、お父さんは私に殴られて頭を強く打ってドSからドMになっちゃったのね」と母は言った。
そこに、咳払いをしながら父がお風呂から出て来たのだ。
私は父の顔を何となく見れなくて自分の部屋に戻った。
すると、リビングから父と母の声が聞こえた。
「ママ~何で言っちゃうのよ、娘の前では厳格な父を演じてたのに~」
「だって、馴れ初めを聞きたいって言うから」
「もう、ママの意地悪~」
私は父の隠れた一面を知り複雑な気持ちになった。