ジュネーブ防衛戦 決戦の幕開け
「いざ、参る!!」
麗沢はフライパンを構えた。ミツキも銃の弾丸を新たに込め直した。
「麗沢・・・お前は俺にとって親友だと思ってる。だからこそ俺はお前を俺の手で殺さなくちゃいけない、害獣でもビーストでも、悪魔でもダメだ・・・」
「何故でござる・・・何が先輩を変えた?やはりディエゴ殿に何かを吹き込まれたのではござらぬか?」
「俺はただ見ただけだ、そしてそれを見て俺は判断した。正しかったのは永零だったとな・・・」
「だから、それは一体何なのかと聞いてるのでござる!!」
ガッギィィィィッッッ!!
麗沢のフライパンと桜蘭のライトニングソードがぶつかり合った。
「それは、死の先で知る・・・」
「ミツキ殿!!」
「分かってる!!行くよ!!」
横からミツキのライトニングソードが桜蘭に襲いかかる。桜蘭は麗沢のフライパンを弾き、ミツキと剣を合わせた。
「うりゃ!!」
「ふっ!!」
ミツキは次々と桜蘭に向かって攻撃を続ける。
「踏み込みは日本剣術・・・だが、この手捌きは・・・」
「レイピアだ!!」
ミツキは大きく踏み込んで突きを放つ。桜蘭は防ぎきれずに肩に攻撃を喰らってしまった。桜蘭は咄嗟に距離を取る。
「その踏み込みは霧島 京也・・・そしてその手捌きはキャロラインのものか・・・中々の威力だ」
「ありがとう。まさかこの攻撃が通るとは思わなかったけどね。三上君が教えてくれたの、桜蘭さんの戦い方の基本は返し技で、突き技に弱いってね。そこで突き技に強いキャロラインさんも私の修行に付き合ってくれた」
「しかしながら、その返し技を阻止する為に拙者がいる。2対1だが文句はあるまいな・・・さぁ、まだ攻めるぞ!」
私と麗沢で一気に攻め立てる。麗沢がフライパンで攻撃をいなして、私が突き技をメインに攻撃をする。
「なら!!」
「うおっ!?」
桜蘭さんが協力な横薙ぎを放った。それで麗沢は一気に飛ばされる。その瞬間、桜蘭さんを守るように害獣たちが現れた。
「こざかしいでござるな先輩!!拙者式!ホームラン!!」
麗沢はフライパンで害獣を吹っ飛ばしていく。
「ぬっ!!?」
ドン!!ドン!!ドン!!
その飛んでいった害獣の陰から桜蘭さんは電撃の銃弾、ライトニングシュートを放った。麗沢は防いだが、それで麗沢とミツキの間にかなり距離が生まれた。
「連携は阻止するに限るな」
「くそぉっ!!」
だがミツキは問答無用で攻め続けた。激しいぶつかり合いの後両者は鍔迫り合いにもつれ込んだ。その瞬間を見極めて麗沢が駆けつけようとするが、
『グギィアァァァァ!!!!』
「ぬっ!!ビースト!?」
麗沢の前に害獣ではない別の脅威の怪物、フィアーズビーストが現れた。
「第四段階が二匹だ。あんたを先に殺しておきたかったが・・・どうやらミツキはそれを望まないらしい。やっぱり先にお前から倒す」
桜蘭は鍔迫り合いを押し除け構え直す。
「桜蘭さんにそこまで思われるのは光栄だね」
「買い被り過ぎだ、俺の剣はさほど上手くないんだよ」
「なら、攻め続けるよ!!あなたが!!負けるまで!!」
ミツキは大きく銃を振りかぶり、連続攻撃を仕掛けた。突き技をメインに桜蘭が捌きにくい攻撃を加え続ける。
「はぁ!!」
「っ!!」
ミツキは、桜蘭の僅かな隙を見つけて突破した。ミツキの放った攻撃は桜蘭のライトニングソードを巻き込んで銃本体を飛ばしてしまった。その瞬間を逃さずミツキは桜蘭の脳天に銃を突きつけた。
「はぁ、はぁ・・・か、勝った・・・?」
「本当に成長するもんだな・・・近接戦に弱いとは家、普通の人間にここまでやるなんてな」
「ならもうやめにしてよ・・・」
「だが、及第点だ・・・この戦いは命の奪い合いだと忘れるな。やるのなら、今ので俺を殺さなくちゃダメだ」
桜蘭はゆっくりと目を閉じた・・・
(これ、この感覚・・・知ってる!!)
「麗沢さん!!」
「なぬっ!?」
ミツキは咄嗟に叫んだ。その時、麗沢が相手をしていたビーストの動きが変わった。ミツキは瞬間的に引き金を引こうとしたが・・・
「『恐獣の舞』」
桜蘭は両手に拳銃を持ち、その両手側にライトニングソードを出現させ強力な回転攻撃を放って距離を取った。
「『命の舞踏』・・・命の王の力で動物たちと意識をリンクさせる技・・・」
「八咫烏に随分と教え込まれたようだな・・・だが、最も重要な部分はまだ聞いていないのか」
桜蘭はゆっくりと目を開けてミツキを見た。
「多分その話はこの戦いの終わった後に聞くことになってるやつでしょ?」
「さぁ、あいつは利益になる事を伝える時、自分に襲いかかるのは不利益になる。ミツキは八咫烏の事を信じているのか?」
「意味分からないんだけど?」
ミツキは桜蘭の言っている事が理解できず眉間に皺を寄せた。
「それが答えか・・・さて、そろそろ1人で戦うのはキツくなってくるな。助っ人でも呼ぶか・・・なぁミツキ、ここにはあらゆる重鎮たちが一手に集まっている。そう仕向けたのはエルメスだな?」
「そうだけど?」
「エルメスにそうさせるように仕向けたのが、俺だと言ったら?」
桜蘭の言葉にミツキは少し固まった。そして理解した、桜蘭の言葉の意味、それはこのジュネーブの銃撃が罠である事を理解したのだ。
「ど、どういうこった!?」
新月が冷や汗をかいて質問を返した。
「新月さん、あなたは正直過ぎる。いや、ミツキに麗沢もだな・・・だが、2人はどういう意味か分かったみたいだな」
桜蘭は麗沢とミツキに回答を振った。
「まさか・・・先輩の能力には、ディエゴ殿の・・・」
「記憶支配・・・それを使ってたって事?」
「そういう事だ。今現在ここにいる奴らは純粋な思いでここに立っているものばかりだ。エルメスはその純粋な奴らと手を結ぼうと世界各地を回り、ここへ呼んだ。だが、この世界の人間の本質はエルメスの思うような奴らではない・・・全員が思惑を持っている。薄汚く、ドス黒い思惑がな・・・俺は予めそいつらから記憶を奪っておいたんだ。そして今、4人ほど記憶を戻した。お前たちに見つけられるか?誰が裏切り者か、誰の記憶が戻ったのか、そもそも記憶を奪っていない奴もいる、純粋な奴がな・・・さぁ、今からが真の侵攻開始だ!」
ビリッ!!バリッ!!
周囲に放電が散り始めた。
「これ!!」
「奴でござるか!!」
「そこか・・・ふんっ!!」
その時、ミツキの影から一振りの剣が桜蘭の足元に突き刺さった。
バッチチチィィィィッッ!!!
「うおっとぉ!?どへぇ!!」
それと同時に剣が突き刺さった場所にルシフェルが盛大にすっ転んで現れた。
「よ、随分と間抜けな登場になったな兄弟」
「いってて・・・もうちょい格好付けさせろよなぁ?せっかくの決戦なんだぜミカエルよぉ?」
ミカエルはゆっくりとした足取りで突然現れたルシフェルの前に立った。ミカエルは剣を手元に再度出現させ、ルシフェルの顔に剣を突きつけた。
「不意打ちはかっこいい技とは思わないか?」
「ぬかせ、それはお互い様たろうが・・・桜蘭の話聞いてたか?」
「あぁ聞いてた。で、それが?堕天したとは言え、元大天使ルシフェルともあろう奴が気が付かないか?害獣にビーストを相手する程度ではこの数は多過ぎるってな。天正第二に宮ノ下のそれぞれの生徒たちがここにいるのは、余計な事してくれた人間たちを、第三帝国を継ぐ要素を持つ者たちにこの現状を、そして子どもたちの意志を示す為だ。
既にお前たちの目論見は見えているんだよ。この世界は汚い奴らの方が多いからな。ルシフェル、この世界の善悪の天秤は常に悪へと傾いている」
「あっ!!」
ルシフェルは気がついた。ここに現れた子どもたちが武器を向けているのは害獣でもビーストでもなく、人間に向けられていた。
「だが、俺は何を持って悪とするのか分からない。必要に迫られるのならば、自らが悪になるのも一つの善と言えると思ってる。なあ桜蘭、今が侵攻開始の時ならば、我々は今こそ反撃開始の時だ」
桜蘭はニヤリと笑ったまま銃を構え直した。




