束の間の観光
私たちはゲートの向こう側に足を踏み入れた。どれどれ、どんな景色が・・・
「まずは首都の中央地区ね。それでここが、私たちの城で政府の中枢、新アダムスビルヂングよ!!」
でかー・・・けどなんか、響きが昭和ー・・・
目の前にある巨大なビル。そして周辺は路面電車が走りゴツいけど懐かしい感じの車が走ってる。なんかこう、前に長い車。
「にしてもよー、ここ異世界ってより・・・」
「外国だな・・・」
新庄に続いてキョウ君がぼやいた。私もそう思った。そもそもこの世界はニヒルさんたちがこの世界に文化をもたらした結果生まれた町並みだから異世界というより異国って感じになるのは自然な事だよな。なんならニヒルさんって異様な程大和魂持ってるみたいな感じの人だったから結構日本的な部分が多い。
信号機からはぴよぴよ聞こえたりカッコーが聞こえたり、車線は左側通行だし、看板は普通に日本語で書いてあるし。
「なんか古き良きアメリカーって感じ〜、私は好きだな。あ!ガンショップあんの!?シングルアクションアーミー!!しかもこいつぁバントラインじゃなねぇか!!なっげぇ!!かっけぇ!!」
とは言っても、東郷はめちゃ興奮してる。
「ワタシアメリカ行った事ないヨ!だから見るもの全て目新しいネ!!みんなのファッションもカワイイヨ!!」
ネーちゃんは見るとこやっぱりそこなのね。
「んーまー、ここはぼちぼちの反応だよね。むしろ懐かしい感じがするんじゃない?これでもここがこの国の一番最先端の街なんだけど。君たちの国はもっと発展してるもんね〜。んじゃ、次に行こう。今度は、ガチで驚くわよ?」
エルメスさんがもう一度ワールドゲートの方に向かった。これってそんな『どこ◯もドア』みたいな性能なの?割といい反応みんなしてたと思うけど・・・
私はゲートを潜った。
「ようこそ、バハムル国定自然公園に!!」
「・・・なんじぁごりゃぁ!!?」
聞いてない!!先生の話とか聞いてない事多いけどカラスちゃんの話はしっかり聞いてたつもりだ!!けど、この景色は聞いてないぞ!?
「すっげぇ・・・」
「あぁ・・・やべぇ」
新庄とキョウ君ですら語彙力失ってどっちが喋ったのか分からないくらいだ。
「ま、まじだっての?」
「わ、わたくしも初めて見ますわ・・・」
異世界に慣れてる筈のメグとキャロラインまでこの反応。まじでどうなってんの?私の目の前には雄大な花畑のような草原をユニコーンが駆け抜け、池で水を飲んでいたペガサスが羽ばたき、空を見上げれば飛行機のような大きさの鳥・・・いや、あれはドラゴンだ。ドラゴンが空を舞ってる。
そして視界を先にやると崖があり、その下には海がある。そしてその海では岩山で人魚が寛ぎながら水浴びをしているのだ。
「ほぇ〜・・・」
私も流石に圧巻過ぎて声が漏れた。
「さっすがに驚いたでしょ。まぁ、なんてったってここには向こうの世界にない生き物たちがいっぱい生息してるもんね。私もサクラに言われるまで天馬とか一角獣とかドラゴンとかって普通にいるもんだと思ってたからさぁ〜。あ、でもここはこっちの世界でもめっちゃ珍しいドラゴンの生息地って言われててね、火吹き竜のバハムートって名前の希少種ドラゴンももしかしたら見られるかもよ」
エルメスさん・・・ば、バハムートって、あの例の召喚獣では!?でもあれって確かベヒーモスのなんかの訛った感じの呼び方じゃなかったっけか!?
『あ、すまんのエルメス。バハムートは今寝とるわ、儂が起こしに行ったんじゃが、あいつ朝弱くてのぉ』
女の人の声?私がその声を聞いた瞬間、身体が飛んでいきそうな程の暴風が吹き荒れた。
「わっぷぷ!!」
「ど、ドラゴーン!!」
新庄が情け無い声で叫んだ。すると目の前を大きな影が通り過ぎる。さっき空を飛んでいたドラゴンよりも更に一回り大きなドラゴンの影だ。しかし、その影は一瞬のうちに小さな人型に変わって私たちの前に降り立った。
「よ、相変わらず元気そうじゃなエルメス。それと、こやつらが例の異世界の学生共か。儂は四精霊のサラマンダーじゃ」
真っ赤なぼさっとした髪をポニーテールみたいに纏めたかなりラフな格好の女性。だけど、尾てい骨から伸びる鱗質な尻尾と縦長の瞳孔が人外を思わせる。こんな感じの特徴の人って・・・
「久しぶりー!!サラマンダー!!」
そう、この人懐っこい猫・・・いや虎?の白虎だ。四神、四精霊の対極の存在のような、そんな感じの存在だ。
「おう、白虎じゃないか、お前も久しぶりじゃのぉ。朱雀の奴は相変わらずか?」
「うん、相変わらずあったかいもふもふだよ!けどサラマンダーの足元付近もあったけー・・・グゥ・・・」
もう寝た。しかも今度は足元で・・・せめて膝とかに乗らないの?
「相変わらずじゃのぉ。おっとすまんな、こっちの話ばかりしちゃったようじゃ。えー、ミツキってのは誰じゃった?」
「・・・え、私!?」
突然サラマンダーに名指しされた。なんだ、一体何されるんだ!?
「おー、お主がミツキか。ちょっとこっち来てくれんか?」
私はドキドキしながらサラマンダーさんの方に向かった。サラマンダーさんは私の耳元で囁く。
「ミカミから話は聞いておる。そしてお主もカラスちゃんから色々聞いておるじゃろ。今日の戦い、おそらくお主はサクラと戦う事になるじゃろう。そしてそこにはレイノルドもセットになる筈じゃ。そしてレイノルドにはある秘策を隠しておる。
四騎士って言うてな、以前の戦いでは零羅の父も祖父も手も足も出ない輩を召喚するのじゃ。じゃが、そいつらを召喚するには儂ら四精霊か四神のどちらかを素体にする必要がある。お主にはそれを阻止して欲しいのじゃ」
「・・・え、ぇえ!?私がぁ!?」
突然めっちゃ重要な役割を任された。敵の最強戦力の足止めとか、どうすれば!?
「慌てる必要はないぞ。お主にはお主しか使えぬ秘技があるじゃろ。言霊じゃ、そいつを使うて四騎士を呼び出すのを阻止するのじゃ」
「さ、流石に無茶ですよ!!」
「無茶は承知の上じゃ、儂らも手伝いたいとこじゃが、儂ら四精霊も四神もサクラに会う訳にはいかんからのぉ」
「それは、どういう・・・」
「あやつは今命の王じゃ、そして儂らがあやつを命の王に仕立て上げた。その結果、あやつは儂の想像の遥か上を行く力を得てしまったのじゃ。サクラはあらゆる命を自在に操る。お主も経験があるじゃろ?」
あの時の・・・身体が言う事を聞かなかった。
「お主の場合強い意志があったおかげでサクラの力を跳ね除ける事が出来るが、儂らはそうは行かんのじゃ。サクラは人間以外の動物は最早何処にいようとあやつの支配下になってしまうのじゃ」
命の王の話は既に聞いているが、ここまでヤバい能力なんだな・・・下手をすれば相手が何処にいても思考が読まれ、他人の生死も自分の好き勝手に操れる・・・それが、桜蘭さんの能力。
「だからこそ、万が一の時為に俺がいる。もしもの時は俺が桜蘭もレイノルドも相手してやる」
「ミカエル、聞いておったか」
ヒソヒソ話しだったけど、天使って耳もめちゃくちゃ良いんだな。
「聞いてるのはあいつもだ。ウンディーネ、聞いてたんだろ?」
「無論だ、妾はあの桜蘭に拳骨の一つがます方法を模索しておるのだがな、秘策の一つでもと期待して聞いておったが、やはり無理か。残念だ」
池の中からすんげー綺麗なお姉様が上がって来た。この人がウンディーネ・・・水の精霊か。結構エロティックなドレス着てるから新庄が顔真っ赤にして倒れた。
「はは、済まんのぉウンディーネ。ま、儂らが勝ってそん時に思いっきりお仕置きしてやろう。サラの奴も怒っておったからのぉ、あやつのお仕置きは中々見ものじゃぞ?」
「ほぉ、お前の娘も中々見どころがありそうではないか、仲良くやれそうだ」
このお二人・・・結構怖い・・・
「お、色々と重たい話をしてしもうたのミツキよ、後は他のお友達と一緒に遊んでくると良い」
あら、みんな動物・・・いや神獣?と触れ合って遊んでる。ここは触れ合い動物園か?ってか、大丈夫か?そんな風に触れ合って。
「問題は無い、ユニコーンもペガサスもかなり知能は高いからな。無礼な奴は容赦なく蹴り飛ばすが、人間は良く遊んでくれる無害な存在だと奴らは認知しているうえ、人間への加減の仕方も知っておる」
ウンディーネさんが澄ました顔で解説してくれた。はぇ〜、私も触ってみたいなぁ・・・
「ミッちゃん!!ペガサスの羽!!すっごいサラサラしてるネ!!」
「ミッキー!!あのユニコーン背中乗せてくれたぜ!?ミッキーも乗ってみろ!!」
「わ、わー!ちょっと!私は何処にも行かないって!!」
私はネーちゃんとメグに引っ張られた。
「ミツキは少し昔の桜蘭と似ておるのぉ」
「あぁ、女版のあやつと言っても差し支えないな」
私が桜蘭さんと似てる?こんな性格してたの?聞く限り昔のあの人は優しくて、明るい人ってイメージだったけど。
「あ!おい犬いるぜ!?」
犬?新庄・・・この神獣まみれの中に犬なんて・・・てか、新庄いつのまにか復活した?
『ポンッ!!』
いや、変な鳴き声の犬いたわ。ただの豆柴だ。なんか適当な顔してるな・・・
「おぉ、ポンスケではないか、って事は奴も来ておるな。白虎、奴を捕まえてこい」
「うにゅ・・・ほーい!どーん!!」
「んぎゃぁっ!!」
白虎が起きたと思ったら突然空中にラリアットかますと、何もなかった空中に突然一匹のオオカミが現れ、その首にクリーンヒットした。
「ねーねー!シルフ!一緒に遊ぼ!!かけっこしよ!!」
「白虎てめ!!もうちょい止め方あんだろ!!この俺様の首にラリアットかましやがって!!って・・・あ?」
あのオオカミ、なんか突然震え出した。てか、耳長・・・・この特徴は、確か風の精霊・・・
「なぁ駄犬、お前少しこやつらと遊ばれてこい」
「やだ!!」
「良いじゃん別に、俺シルフのお腹触るの好きだけどなぁ」
「ちょっ!!白虎てめ!!後でたくさん追いかけっこしてやるから助けやがれ!!」
「んー・・・俺今シルフのお腹触りたい!!わっしゃー!!」
「わっわふふふわ!!!」
白虎はシルフを仰向けにさせてお腹付近を弄った。あーあ・・・野生忘れた顔になってしまったよ。
「ほれ、お主らも触ってみぃ、でっかいわんこみたいなものだ。遠慮するな」
「で、ではお言葉に甘えて・・・」
「オオカミなんて触るノ初めてヨ・・・」
「へへ、ケモナー目覚めるかも・・・じゅる、やべ、ヨダレが」
シルフはウンディーネさんに唆された軽音、ネーちゃん、東郷3人の餌食になった。
「わっふーい!!京也ぁ!これ楽しいぜ!?」
あら?また新庄がなにやら馬鹿を・・・って、今度はでっかいゾウの鼻に乗って滑り台してる、あれは四精霊のノームだ。いつからいた?
「・・・エルメスさん、ちょっと良いですか?」
私はある事に気がついたから質問した。
「わざわざ私たちをここに呼んだのって、三上君の実験か何かなんじゃないですか?」
まだ三上君は来てない、って事は何かやってるって事だ。それを何も言わずに何処からか見てる。なーんとなく行動パターンが読めてきた。
「・・・流石、鋭くなってきたわね、サクラとは大違いだわ。実験と言えば実験なんだけど、私があなたたちにここを見せたかったのも本当よ。そこは勘違いしないでね?で、この実験の真の目的はこのワールズゲートを使った緊急避難の方法を確立する事なの。こんな事言うのはアレだけど、万が一緊急避難が必要な場合が来た時、この技術なら誰が何処にいても即座に退避させられるでしょ?今日のあなたたちの任務も私たちの任務もコレを応用して行うの。
あなたたちは今のコレと同様にワールズゲートを通ってあなたのお父様のとこへ向かうって算段ね。あ、そうだ。良かったら帰りがてら私たちの空母見てく?ミカミも今そこにいるからさ」




